ふんばろう宮城プロジェクト

東日本大震災から発足した「ふんばろう東日本支援プロジェクト」公認団体として2013年4月から活動する復興支援プロジェクト

本質見極め 危機管理を

2021-08-14 20:20:14 | 西條剛央
東日本大震災の津波により、児童74人が犠牲になった石巻市 大川小学校の事故をマネジメントの視点で研究された「クライシスマネジメントの本質」の書評が、8月14日付け河北新報に掲載されました。



https://www.yamakawa.co.jp/product/15186

「チームの力」は”希望”を作る力でもある

2015-06-05 08:36:27 | 西條剛央
 ふんばろう宮城プロジェクトの前身、ふんばろう東日本支援プロジェクトの元代表で現在、ふんばろう支援基金の理事長を務める西條剛央さんの新著「チームの力」(ちくま新書)のご案内です。

 ボランティア組織やビジネスの場面でも「リーダーの役割」はとても重要です。理論的なヒントがたくさん詰まっている内容なので、多くの方に読んでいただきたい1冊です。
 本書を読まれた方の書評がさまざまなメディアで取り上げられていますが、西條さんと支援プロジェクトを最初に立ち上げた甲田烈さんの書評がもっとも的を得ていると感じたので(ちょっと長めですが・・・)引用します。

 とても面白い本で、一気に読めてしまった。読後感を一言でいうと、「息吹がある」感じである。面白いといっても、本には二種類あると思う。一つは、あたかも休日の昼下がりの読書のように、「ああ、いい話をきいた」というだけで、細かい話なんか忘れて、いくつかの警句だけを頭に残して、そのうちに忘れ去られるようなものと、そうではなくて、読み手を行動に触発すると同時に、自分の頭でかんがえさせる類いのものだ。
 そしてこの本は、後者にあたる。
 なぜか。そこには、「人間」がいるからだ。この本は、人の息吹が通うチーム論、そういうふうに言い換えてもよい。チームとは人が作るものなのだから、あたりまえではないかと思われるかもしれないが、このあたりまえを実践の場から徹底的にかんがえぬき、なおかつその成果をシンプルに表現しているのが本書なのである。
 本書は、著者が代表をつとめたふんばろう東日本支援プロジェクトという日本最大級のボランティア組織の具体的活動例と照らし合わせながら、著者が培ってきた構造構成主義という哲学上の原理をアップデートし、「あなたの目的に応じた”チーム”の作り方」(p.22)を論じたものである。それは同時に、”希望”を作る力であるとも示唆される。ところで構造構成主義とは、「物事の本質からなる原理を把握する学問であり、価値の原理、方法の原理、人間の原理といった原理群からなる体系である」という。そしてここでいう「原理」とは、「いつでもどこでも論理的に考える限り、例外なく洞察できる普遍洞察性を備えた理路を指す」(p.20)という。著者の前著を読んでいなければ、とても凝縮された難解なフレーズにきこえるところだ。しかし第2章で価値の原理、第3章で方法の原理、第4章で人間の原理、と豊富な具体例とともに説明されることで、輪郭は浮き上がってくる。
 たとえば第3章では、「方法の原理」が「現場に役立つ哲学」(p.104)という文脈で説明される。それは方法の有効性は、状況と目的に応じて決まる、というものだ。だからどんな状況にも対応する絶対的に正しい方法はない、ということになる。被災地においては、避難所の統廃合や道路の開通など、時々刻々と状況が変化していた。また数多い避難所を回りきることはできない。だから、まずは現地で聞き取った必要な物資の情報をHPに掲載してtwitterにリンクし拡散'その仕組みを一枚のチラシにまとめてHPからダウンロードできるようにして、現地に行く人にチラシも配ってもらう、というように、状況に即応した方法を機能させることができたと著者は述べる。またこの章では、現在の組織の問題としての前例主義をもたらす埋没コストについても、関係者の関心(たとえばそれまでに積み重ねてきた信頼や実績、投入した資金)の持ち方という観点から、わかりやすく説明されていて、説得的である。「状況によって正しい方法は変わる」(p,118)のだ。
 また、第2章ではチーム作りに役立つ原理として「すべての価値は目的や関心、欲望といったものに応じて(相関して)立ち現れる」(p.61)が解き明かされている。興味深いのは、ここで著者のリーダーシップ論が展開されていることだ。リーダーシップは組織心理学においても謎の多い領域だという。著者によれば、従来のリーダーシッブ論は科学的研究の罠にはまり、それだけではなく、さまざまな知見やノウハウを使いこなすためのメタ方法論もなかったという。「どういう状況で何をしたいのかを抜きに、どういうリーダーがよいリーダーか、あるいはどういうリーダーシップがよいかを論じることには意味がない」(p.68)のである。人間は欲望や関心に応じて行動するから、他者のふるまいをみていても、その人が本心ではなにをしたいのか=関心を鋭敏に読み取ってしまう。だから、ここでは小手先は通用しないということも述べられている。
 科学的に平均化されたリーダーシッブ論ではなく、こうした一人ひとりの個人に着目する立脚点は、第4章の「人間の原理」の説明でダイレクトに示されている。「すべての人間は関心を充たして生きたいと欲してしまう」(p.151)。ゆえに、機能するチームにおいては、当人のパフォーマンスである「能力」のみではなく、チーム構成員の「関心」も考慮した適材適所の仕組みとしかけが、ここでも多数の例をもとに紹介されている。また本章では、そもそも著者が構造構成主義を開発する動機となった人間科学という学際的領域における諸流派の信念対立といった問題が、ボランティア同士の信念対立といったケースを中心に説明され、その克服の方途も示されている。たとえば、現地と窓口のあるグループは、ニーズが聞けるために、現地に物資を多く届けたいという関心が生まれ、寄付を多くの方から募る窓口では、支援者の声が多く届くために、支援者の声により多く答えたいという関心が生まれる。このときに、どちらが正しいと言い争っても意味がない。良い/悪いという価値判断をベースにするのではなく、その価値がつくられるにいたった関心や契機(きっかけ、経験)のまでかんがえることで、「認め合う」ことや「棲み分ける」可能性が開かれてくることを著者は強調している。
 お開きとして、評者の関心から、二つのことを述べておきたい。
まず第一に、現在、閉塞している組織の有効な代替案としても、将来の日本のありかたをかんがえる上でも、本書がより多くの人に読まれてほしいと思う。それゆえに、いささか細かすぎる内容の紹介もおこなったことを明記しておきたい。
 そして第二に、これはより評者の関心に惹きつけてのことであるが、この組織・チーム論は独自の継承・発展の可能性を持つと思う。本書を読み終えて、実は奇妙な懐かしさにとらわれた。それは、たしかに提示されている立脚点は斬新でユニークでもあるが、この日本列島でしなやかな組織が構想されたときに、たえず非明示的にではあれいかされてきた原理だったのではないかということだ。たとえば、網野史学などの成果が明らかにするように、諸国を遍歴した宗教的職能者や芸能民、遡れば縄文期の交易の痕跡にいたるまで、わが国には「しなやかな」組織の系譜というものもあったと思われる。構造構成主義の原理群を補助的な「視点」として、日本の古くて新しい組織のありかたについて、歴史的事例にも即しつつかんがえてみることもできるのではないだろうか。
 この本は、そうした意味でも発想と実践の宝庫であろう。



チームの力――構造構成主義による“新”組織論
著者 西條剛央(ちくま書房)780円+Tax

「人を助けるすんごい仕組み」が発売されます!

2012-02-15 12:49:45 | 西條剛央
ふんばろう東日本支援プロジェクトの代表を務める西條剛央(早稲田大学院講師)が、「人を助けるすんごい仕組み」(ダイヤモンド社)を発行します。いよいよ明後日から書店に並ぶことになりました。
 
以下に担当編集者・寺田さんが書いた“熱い”メッセージともくじを転載させていただきます。
<担当編集者からのメッセージ>
 「西條さんの完全な原稿を書ききっていただいたところで、ガツンと読ませてください。五月雨式ではなく、一気に!その面でも、1月4日に、完全原稿(このまま修正なしでゲラにできるレベルの原稿です!)をいただけますでしょうか。これをすぎると、2月16日配本(2月10日見本)は絶望的になりますので、どうかこのリミットだけは厳守、本当に厳守!お願いします!
 1月4日にいただきしだい、すぐに原稿整理に入ります!ページ数は、200p前後でよいと思います。あまり厚過ぎると、広がりがでません。このページくらいで、ぜひとも思います!お願いした通り、体験談や日記だけでは売れませんので、ぜひともこれを今後の東京直下型、富士山大爆発などの日本を揺るがす有事にも適用可能なモデル、世界の有事に使えるモデルという、再現性の技術面、ノウハウ面の担保をノンフィクションのなかで、行政などとの「葛藤」もいかして、描ききってください。
胆力をつかって死ぬ気で書いてください!よろしくお願いします!!!!
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 これは、私が著者の西條剛央さんへ向けて年末12月27日に送ったメールです。ここで初めて公開します。
 この時点では原稿の4割も完成していませんでした。私も必死でメールを打った記憶があります。のちのち著者から「寺田さんが死ぬ気で書いてください、とあったので死ぬ気で書きました。白髪って増えるんじゃなくて、『なる』んですね!」と言われました(笑)。

 その言葉どおり、著者が「死ぬ気」で書いた本です!
 そのため、予定を大幅にオーバーして320pになりましたが、それだけのクオリティに仕上がった自信があります。震災本であって震災本でない。本書の意義は、今後の有事の際に使える提言と仕組みをしっかり提示することを主眼に置いて編集しました。
 私も本書で98作目を迎えますが、著者はまさにあの「ガンダム」で言う、ニュータイプ、かもしれません(笑)。本業は「構造構成主義」を専門とする早大大学院(MBA)で心理学、哲学を教える学者さんですが〜。
本書のゲラを読まれた業界でも有名な書店員さんからは、「寺田さんのこれまでの担当本で最も心を揺さぶる内容でした。何かしたくても動けない人に、動くきっかけを与える力があるかもしれないという大きな期待を感じました。熱くなりました!ありがとうございます!手紙を書いて伝えたくなるほどです!」、「仕事の合間に、ふと、目に留まって読み始めたのだが、止まらなくなる。また、涙も止まらなくなる。まだ途中だけれども、多くの人に届けなければならない本なのだと、直感的に思った。この本を通して、多くの人が、あの日の自分を振り返るべきだと思った」、
「あくまでもビジネス書に軸足を置きながら、安易なノウハウに走らず、ビジネスも社会生活のひとつなんだよ、という寺田さんの強いメッセージを感じました。と同時に、西條さんの感傷的にならずに前を向く力が強く伝わり、読後に余韻が強く残りました。今後の復興に具体的につながる意味でも、また社会のいろいろな場面で活用できる組織論としても長く売っていきたい書籍だと感じました」、「震災回顧ではなく、ある未来指向の一冊として、多くの方に関心をもっていただきたい、と思っています。夜中に一気読みしてしまったのですが、西條さんや『さかなのみうら』さんなど、周囲の方々のエネルギーのなせる業だったかな、と思っています。考えさせるけど、スピードのある本ですよね!」と評されました。

 私が著者からの生原稿を最後まで読んだとき、鳥肌がたち、しばし呆然としました。このような作品を努力してがんばってもできるものではない。きっとこれは神様からのGIFTではないかと。
 それは、私自身、親戚の多くが宮城や岩手にいること。そして著者自身が仙台出身でこの震災でおじ様を亡くされていること……もろもろ引き寄せの法則があったのかもしれませんが、私の98作目はかつてない感覚を受けています。98作目で初めての感覚ですから確率としては1%に近い本だといえます。
 ぜひとも、ご一読いただきまして、いまこそ本当に読まれるべきだ、ぜひあの人にも読んでほしい、と思われましたら、ぜひ行動に移していただくよう切にお願いいたします。

 本書の著者印税全額とダイヤモンド社売上の一部を、著者が代表を務める「ふんばろう東日本支援プロジェクト」をはじめとする復興支援活動に寄付させていただきます。私も全額チャリティ本は生涯初でこれからどのくらいあるかわかりませんが、ふるさと東北で苦しんでいる方々のために、本書を一人でも多くの方に読んでいただくことで、微力ながらお手伝いしていきたいと思っています。
 一人ひとりの小さな行動が大きな架け橋となり、絆に変わります。
どうぞよろしくお願いいたします。

<もくじ>人を助けるすんごい仕組み
——ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか

【第1章】絶望と希望のあいだ——南三陸町レポート.
【第2章】「ふんばろう東日本」の拡大とインフラとしてのツイッター、ユーストリーム、フェイスブック
【第3章】「重機免許取得プロジェクト」——陸前高田市消防団と志津川高校避難所
【第4章】半壊地域の苦境と「家電プロジェクト」の立ち上げ
【第5章】「ほぼ日」と糸井重里——「西條剛央の、すんごいアイディア。」外伝
【第6章】多数のプロジェクトをどのように運営していったのか?
【第7章】「一戦必勝」を実現する組織づくりの秘訣
【第8章】ポスト3・11に向けた人を助ける仕組みと提言
【おわりに】僕の声が君に届けば              

人を助けるすんごい仕組み——ボランティア経験のない僕が、日本最大級の支援組織をどうつくったのか-西條剛央

「奇跡…」支援の輪が広がって/冬物家電プロジェクト

2011-12-17 07:01:32 | 西條剛央
 ふんばろう東日本支援プロジェクト・西條剛央代表からのメッセージを以下に引用します。

「まったく支援を受けられないみなし仮設の哀しみと、冬物家電プロジェクトに訪れた“奇跡”」

 なんと、昨日突如トヨタレンタリース栃木の代表取締役社長、新井さんより冬物家電プロジェクトに1千万円のご寄付をいただきました!

 今回みなし仮設などから予算を大きく超える申し込みがあり、一昨日、冬物家電PJメンバーとの概算の結果、1千万円あればなんとかなるかもしれないというので、「じゃあ1千万なんとかします」とか言っていたら、翌日いきなり決まりました。
 *
 昨夜、夜間主MBA(ちなみに皆さん働きながら通っており夜間主では国内トップ)の授業の冒頭に、冬物家電配布プロジェクトの状況を伝えて、「もし皆さんの会社で寄付の予定などがあれば声をかけてください」と話したところ、授業後、受講生の新井さんが「会社から1千万寄付させてください」と。実は新井さんはトヨタレンタリース栃木の社長さんで、寄付先を探していたとのこと。
 *
 申し込みされた方々の手紙を読んでいると、みなし仮設や在宅避難者にはあまりにも支援が行ってないため、すべての方にお届けしたいと思って動いていたのですが、冬物家電の支援金はとうに底をつき、家電プロジェクトの予算も底をつき、動かせるお金がほとんどなくなってきて、このままだと家電を買うに買えないという状況だったので、本当に助かりました。

 以下、現地から届いたお手紙の一部です。
 皆さん大切な人を失い、家を流されたにもかかわらず、支援も受けられず、大変な状況で暮らしています。「同じように流され、寒さも同じなのに、なぜ支援を受けられないのか」といった手紙の数々を読んでいると涙が出てきます。
 こうした手紙を読むと、とても「残念ながら選外になりました」とは言えませんので、全国の皆様のご支援により可能になった5000家庭分を超えても、できる限り全宅に希望のものをお届けしようと決めました。お一人のときに読んでみてください。

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