仙台グリーフケア研究会・JDGSプロジェクト主催による5回連続の「悲嘆講座」に参加しました。
会場の仙台市シルバーセンターを会場に行われた講座は9月から始まり、職場から急いで駆けつけたと思える人たちが毎回、熱心に聞き入る講座となりました。
演台には、初日の講師である高橋聡美さんがスタンバイしています。高橋さんはツイッターで積極的に情報発信している方で、NHK「クローズアップ現代」でも震災遺児への支援を訴えるなど、震災後の子どもたちの心のケアをされてきました。「悲嘆(グリーフ)の基礎知識〜支援の前に押さえておきたいこと〜」というタイトルでした。
私は入り口まで行ったのですが、急用があり受講することができませんでした(残念)。でも、ふんばろうの他のメンバーがしっかり受講していました。以下、印象に残った主な講座の概要について簡単に紹介させていただきます。
10月は「遺族のグループサポートの方法とそのコツ」と題する、龍谷短大の黒川雅代子さんのお話を伺いました。黒川先生は、阪神淡路大震災のころから、遺族会を運営し活動してこられた方です。「17年間やって『うまくいったな』と思えることは一回もない」というお話を伺いましたが、どのように配慮を尽くしてもゴールがない大変な活動のように感じました。
大空を群れになってVの字に飛ぶ渡り鳥の写真を示しながら聞いた話がとても印象に残りました。この形は空気抵抗が少ない効率的な飛び方ではあるのですが「いつも先頭を飛び続けるのはしんどい。時々交代をしながら行うことが大切だと思います」という言葉に、遺族会を引っ張ってこられたご苦労を感じました。また組織で活動している人に対するメッセージのように響きました。
11月は「遺族が医療機関を利用する時〜心療内科医の経験から〜」と題する神戸赤十字病院の村上典子さんのお話でしたが、悲嘆反応のプロセス、ご遺族の心情を理解するうえで中身の濃い内容でした。
中でも強く感じたのは、言葉の持つ力についてです。怒りであったり自分を責めたり、悲しんだり受け入れたり…遺された人たちは自分なりの「喪の作業」を行う中で、最後に「ある種の納得」に至るのだそうです。自分が語ることで「心におちる」と。気持ちを言葉に表現していくことが、どれほど重要かと思いました。そうなるまでには長い時間がかかるのだろうと思いますが…。
12月は「支援者の共感性疲労への対処〜長期の支援に役立つスキル〜」として甲南女子大の瀬藤乃理子さんのお話です。始まってすぐ「あれ?」と思いました。9月から毎回司会進行されていた人が瀬藤さんご本人だったのです。
兵庫の瀬藤さんは東日本大震災のあと、岩沼市に半年間滞在し被災者ケアをされてきた方です。心なしか、いつもの司会の時よりも声が震え、まるで涙声のように聞こえます。自己紹介の中で、中学時代の悲しい体験、グリーフサポートを志すようになったきっかけを話され、ご自身の心の琴線に触れたからかも知れません。被災した方が被災者支援を行うと、自分も揺さぶられてしまう。支援者と被支援者は一定の距離を意識的に保つ必要があるそうです。そして支援者のセルフケアは欠かせません。
ワークショップの中で教わった丹田呼吸をここで紹介します。丹田に意識を置き、鼻から息を吸い、口から吐く。気のめぐりがよくなりお腹があたたかくなるそうです。不安でたまらない時、試してみてください(ボランティアにも実践してもらいたいメソッドです)。
自らバーンアウト体験を話す瀬藤さんのセルフケアは、とても説得力がありました。マインドフルネスは「今、ここ」の自分に集中し感情を止めてコントロールする方法です。考え事をしないということが大切なのだと気づきました。大好きなことに没頭したり、気分転換したりできること、もう皆さんなさっていますよね。
私は、震災の起こる数日前に父を亡くし、葬儀をすませた後の実家で震災に遭いました。早く宮城に帰って何かしなければ、と当時は気持ちばかりが焦り無力感を感じていましたが、縁あってふんばろう東日本支援プロジェクトの活動に参加させていただくようになりました。とてもありがたく思っています。まだ回数は少ないですが、現地の人たちとの交流はかけがえのない体験です。
ただ、ここまで夢中で過ごし自分の「悲嘆」と充分向き合うことができたかどうかわかりません。ですから今回の講座にはボランティアとしての学びと、自身のケアの助けにしたいという思いで参加しました。いつか学んだことが役立つように、と思います。(駒場利江子)
***
悲嘆(グリーフ)とは
大切な誰かを失うことは、苦痛に満ちた出来事であり、人生最大の試練とも言われています。失って初めて、人は死別や喪失がこれほどつらく、悲しいものだと実感することが多いものです。
重大な喪失のあとには、悲しみ以外にも、怒りや罪責感、落ち込みなど、あらゆる種類の思いもよらない感情に苦しめられます。また不眠や極度の疲労感など、身体にもさまざまな症状が出現します。これらの症状は悲嘆反応と呼ばれますが、時には永遠に続くのではないかと思うほど強く、その人の人生や生活そのものを圧倒することがあります。
悲嘆反応は非常に個人差があるものですが、一方で、多くの人に共通して見られるものもあります。あらかじめご遺族自身がそれを知っておくことで、悲しみに対処する際に役立つことが多いと言われています。
また支援者の人にとっても、大切な人を失った悲しみを理解しておくことで、ご遺族の置かれている状況やニーズ、抱えている問題を早く察知し、より適切に対応できるようになると言われています。(JDGSプロジェクトHPより引用)
会場の仙台市シルバーセンターを会場に行われた講座は9月から始まり、職場から急いで駆けつけたと思える人たちが毎回、熱心に聞き入る講座となりました。
演台には、初日の講師である高橋聡美さんがスタンバイしています。高橋さんはツイッターで積極的に情報発信している方で、NHK「クローズアップ現代」でも震災遺児への支援を訴えるなど、震災後の子どもたちの心のケアをされてきました。「悲嘆(グリーフ)の基礎知識〜支援の前に押さえておきたいこと〜」というタイトルでした。
私は入り口まで行ったのですが、急用があり受講することができませんでした(残念)。でも、ふんばろうの他のメンバーがしっかり受講していました。以下、印象に残った主な講座の概要について簡単に紹介させていただきます。
10月は「遺族のグループサポートの方法とそのコツ」と題する、龍谷短大の黒川雅代子さんのお話を伺いました。黒川先生は、阪神淡路大震災のころから、遺族会を運営し活動してこられた方です。「17年間やって『うまくいったな』と思えることは一回もない」というお話を伺いましたが、どのように配慮を尽くしてもゴールがない大変な活動のように感じました。
大空を群れになってVの字に飛ぶ渡り鳥の写真を示しながら聞いた話がとても印象に残りました。この形は空気抵抗が少ない効率的な飛び方ではあるのですが「いつも先頭を飛び続けるのはしんどい。時々交代をしながら行うことが大切だと思います」という言葉に、遺族会を引っ張ってこられたご苦労を感じました。また組織で活動している人に対するメッセージのように響きました。
11月は「遺族が医療機関を利用する時〜心療内科医の経験から〜」と題する神戸赤十字病院の村上典子さんのお話でしたが、悲嘆反応のプロセス、ご遺族の心情を理解するうえで中身の濃い内容でした。
中でも強く感じたのは、言葉の持つ力についてです。怒りであったり自分を責めたり、悲しんだり受け入れたり…遺された人たちは自分なりの「喪の作業」を行う中で、最後に「ある種の納得」に至るのだそうです。自分が語ることで「心におちる」と。気持ちを言葉に表現していくことが、どれほど重要かと思いました。そうなるまでには長い時間がかかるのだろうと思いますが…。
12月は「支援者の共感性疲労への対処〜長期の支援に役立つスキル〜」として甲南女子大の瀬藤乃理子さんのお話です。始まってすぐ「あれ?」と思いました。9月から毎回司会進行されていた人が瀬藤さんご本人だったのです。
兵庫の瀬藤さんは東日本大震災のあと、岩沼市に半年間滞在し被災者ケアをされてきた方です。心なしか、いつもの司会の時よりも声が震え、まるで涙声のように聞こえます。自己紹介の中で、中学時代の悲しい体験、グリーフサポートを志すようになったきっかけを話され、ご自身の心の琴線に触れたからかも知れません。被災した方が被災者支援を行うと、自分も揺さぶられてしまう。支援者と被支援者は一定の距離を意識的に保つ必要があるそうです。そして支援者のセルフケアは欠かせません。
ワークショップの中で教わった丹田呼吸をここで紹介します。丹田に意識を置き、鼻から息を吸い、口から吐く。気のめぐりがよくなりお腹があたたかくなるそうです。不安でたまらない時、試してみてください(ボランティアにも実践してもらいたいメソッドです)。
自らバーンアウト体験を話す瀬藤さんのセルフケアは、とても説得力がありました。マインドフルネスは「今、ここ」の自分に集中し感情を止めてコントロールする方法です。考え事をしないということが大切なのだと気づきました。大好きなことに没頭したり、気分転換したりできること、もう皆さんなさっていますよね。
私は、震災の起こる数日前に父を亡くし、葬儀をすませた後の実家で震災に遭いました。早く宮城に帰って何かしなければ、と当時は気持ちばかりが焦り無力感を感じていましたが、縁あってふんばろう東日本支援プロジェクトの活動に参加させていただくようになりました。とてもありがたく思っています。まだ回数は少ないですが、現地の人たちとの交流はかけがえのない体験です。
ただ、ここまで夢中で過ごし自分の「悲嘆」と充分向き合うことができたかどうかわかりません。ですから今回の講座にはボランティアとしての学びと、自身のケアの助けにしたいという思いで参加しました。いつか学んだことが役立つように、と思います。(駒場利江子)
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悲嘆(グリーフ)とは
大切な誰かを失うことは、苦痛に満ちた出来事であり、人生最大の試練とも言われています。失って初めて、人は死別や喪失がこれほどつらく、悲しいものだと実感することが多いものです。
重大な喪失のあとには、悲しみ以外にも、怒りや罪責感、落ち込みなど、あらゆる種類の思いもよらない感情に苦しめられます。また不眠や極度の疲労感など、身体にもさまざまな症状が出現します。これらの症状は悲嘆反応と呼ばれますが、時には永遠に続くのではないかと思うほど強く、その人の人生や生活そのものを圧倒することがあります。
悲嘆反応は非常に個人差があるものですが、一方で、多くの人に共通して見られるものもあります。あらかじめご遺族自身がそれを知っておくことで、悲しみに対処する際に役立つことが多いと言われています。
また支援者の人にとっても、大切な人を失った悲しみを理解しておくことで、ご遺族の置かれている状況やニーズ、抱えている問題を早く察知し、より適切に対応できるようになると言われています。(JDGSプロジェクトHPより引用)