呼吸器を取り付けるとき、意識のある患者であっても、医療従事者である医師と看護婦は、それぞれの立場で、患者の家族に取り付けの可否を問うてくる。
呼吸器を取り付けるか否かは選択できますと。
その言葉は、あたかも、呼吸器の取り付けが、反社会的行為であるかのような眼差しを含む。
まして、脳死ともなれば。
脳死判定を拒否することが、反社会的行為とされる日が来るのかもしれない。
移植医療「生と死に寄り添う議論を」 柳田邦男さん(朝日新聞) - goo ニュース
もうすでに、呼吸器の知り付けを拒否した家族の話が美談として語られるときだからこそ、邦男さんのこの発言は重い。
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別れを乗り越えて, 2008/11/20
By yukaricoffee - レビューをすべて見る
父は書いた。息子が抱いていた「一人の人間が死ぬとその人がこの世に生き苦しんだことすら、人々から忘れ去られ、歴史から抹消されてしまう絶対的な孤独―究極の恐怖心」をとりのぞくために。
東大卒、NHKの記者という経歴を持ついわゆるエリートの著者が、神経症を患った息子の自殺を経験し、今まで得てきた科学的知識は何も役立たないことを思い知らされた。
悲しみを乗り越えて、理性的に綴っていく姿は、作家という業という言葉だけでは片付けられない。
親族はじめ、周囲の反撥も相当のものであったと思われる。
「誰の役にも立てず、誰からも必要とされない存在」となっていることを非常に悩んでおり骨髄バンクに登録していた息子の気持ちを察して、父は脳死になった息子の骨髄移植できないかと考える。実際には脳死患者からの骨髄移植は不可能であったが、担当医師の提案により、腎臓移植をすることとなる。その姿に影響された医師も出てきたことに著者は胸を熱くする。
しかし、それまで偏見を持たれ、タブー視されてきた心の病をもつものが、人より純粋で傷つきやすいだけなのだということで、注目されるようになってきたということにも十分この本を書かれた意義があるだろう。
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二人称の死を, 2008/3/31
By らまりん (viva南国♪) - レビューをすべて見る
今の医療業界のマンパワーでは難しいことかもしれませんが、患者の死が三人称の死ではなく、二人称の死であるべきだという理想を抱かせてもらいました。
死への物語作りというのは様々な人の協力の下にしかできないと思うので、医療業界の人材不足が解消されることを期待します。
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ここに私が居る、ここにあなたが居る, 2007/10/16
By はなハルヲ (兵庫県) - レビューをすべて見る
自殺者の数は年間3万人。その3万人の一人ひとりの人生は
それは壮絶で悲しみに満ちたものだろうと思う。
その一人の姿をいやと言うほど見ることが出来る。
救おうとして助けられなかった者の慟哭も。
氏はこの本を書くとき、編集の静止も聞かず、どんどんとページを増やし
書き連ねてしまったと言う。書かずにはいられなかったのだろう。
何が原因か、誰が悪か、そんなことどうでもいい。
今まさに死のうとしている人が居る。どうすればその絶望から救うことが
できるのか。
自殺など遠い話しのことと思っている人ほど読んで欲しい。
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あまりにも重い, 2007/2/21
By kidd (japan) - レビューをすべて見る
典型的なアダルトチルドレンをもった親子の悲劇とは一蹴できない。親の過保護という視点で本書を批評する視点を著者自らが乗り越えようとしたプロセスがそのまま描かれているといった印象をうけた。本書でも著者自身もそのようにいっているが、著者の苦悩が色濃く描かれている。特に、科学的な考えを信望している著者が、一人の人間として、死に向き合おうとする姿は他人ごととは思えなかった。自らの体験を一般論へと昇華させようとするのは、一体どんな気持ちなのだろうと思った。
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反面教師的な役割をこの本に期待したい, 2005/12/16
By 辻道夫 - レビューをすべて見る
この本は典型的な「AC(アダルトチルドレン)を息子に持った父親」が書いた本である。
著者は潜在意識的には息子さんが生きようが死のうが、またどれだけ苦しもうがどうでも良く、全く関心が無いのだが、顕在意識的にはいわゆる社会常識が強く働き、本人自身無自覚に「息子の成長を見守り、相談には快くのり、理解ある父親」を演じてしまっている。
息子さんはその強烈なダブルバインドに本人自身無自覚的に苦しめられ、ついには自ら命を絶ってしまう。
息子さんが亡くなってしまった後にこの様なことを言っても仕方ないのだが、助けるにおいて著者が出来る唯一の方法としては、「自分から(心理的・地理的に)出来る限り遠ざけること」のみだったように思う。
無自覚なACの親がどのようにして子供を自殺に追い込んでいくかという、反面教師的な役割をこの本に期待したい。
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犠牲, 2005/6/16
By カスタマー
素晴らしかった。
詠むべき本といった感じ。
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知識人ではなく父として, 2005/5/26
By きらら星 - レビューをすべて見る
神経症を患い続けた末、自殺を図り脳死状態に陥った息子についての11日間のドキュメンタリー。かなり古い本書がいまだ増刊されている理由は東大出の新聞記者である作者、柳田邦男氏が息子の死にぶつかり知識人としてではなく父としての感情を正直に吐露したところにあるように思う。息子の死の前での臓器提供等に関する判断は膨大な医学的知識に基づくのではなく結局父としての愛情が先立ったことを告白している。立花氏の「脳死」は最先端の科学をつめこんだ優れた本であるが時間の流れと医学の進歩と共にいつか古びてしまうだろうのではないだろうか。本書は読んでいると柳田氏が真摯で生真面目過ぎて胸が苦しくなる。けれど本書はこれからも脳死に立ち向かう家族たちの心の支えになるような気がする。
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生と死の重み, 2005/3/19
By はるharu (岡山県) - レビューをすべて見る
著者の最愛の次男が自死によって脳死状態に陥り、亡くなるまでの11日間をそのベッドサイドで過ごし、生と死について考え抜いたその過程を記した感動の手記。
次男の洋二郎さんは生前心の病を患っており、彼が生きる意味を求めて生前につづった日記も収録されていて、読む者の心を深く揺さぶる。
この本を読みながら、生前の洋二郎さんの苦しみと、最愛の息子を突然失った著者の深い悲しみを想って、それに自分自身の体験もオーバーラップして、途中何度も胸がつまって、読み進むのが難しかった。
父親として、息子がこの世に生きた証を活字に刻印してやらねばという著者の願いがひしひしと伝わってくる。
洋二郎さんは死後、誰からも忘れられてしまうことに絶対的恐怖を抱いていたとあるが、この本を通じて、永遠に誰かの心の中に生き続けることになった。
著者自身が「死にゆく患者の家族」の立場から終末医療のありかたや脳死問題について述べられた箇所は、読んで考えさせられることが多い。
納得のいく死を迎えるためには、残された「生」をいかに生きるかということが大切なのだと思った。
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胸を打つ筆者の思い, 2004/12/5
By noritoku76 - レビューをすべて見る
もうだいぶ前に書かれた本だが、考えさせられる部分が多かった。著者の息子が、長い精神の病との戦いの後、自殺を試み、脳死段階を経て死んでいった悲劇について書かれた本だ。特に、その息子が書いていた日記や小説が痛ましい。それらはひどくナイーヴで内省的だ。しかしその表現は、誰もが体の深い底の部分に抱え込んでいる暗い闇の部分に触れており、簡単に目を反らす事が出来ない。殆どの人は自殺せず毎日を生きているけれど、その陰の部分に真剣に向かい合ってしまう人もいるのだ。脳死判定を受けた場面で、筆者の抱く思いは深い。脳死判断については、センチメンタルを廃し、科学的な論拠を築くべきだと言う立花隆の著作に同意しつ、息子が脳死となったその時私に大切なのはそのセンチメンタルな部分だと彼は述べる。その感情が溢れ出した部分にぼくはただ感動した。
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この様な問題を改めて考えさせてくれる本として星5つ, 2003/10/11
By カスタマー
著者と息子の関係は、岸田秀氏の著作『ものぐさ精神分析』の中の
「私の原点」にある岸田氏とその母親の関係と根本的には同じもの
である。
したがって、この作品は冒頭に以下の文章が必要に思う。
「私は洋二郎のことなど欠片も心配などしていなかった。
ただ困っていたにすぎなかった。
そこに感情は無かった。
そして、私自身そのことにさえ気付いていなかった。」
また、それを感じ取れるか否かでこの作品は読者にとって180度違っ
た意味を持つものになる。
呼吸器を取り付けるか否かは選択できますと。
その言葉は、あたかも、呼吸器の取り付けが、反社会的行為であるかのような眼差しを含む。
まして、脳死ともなれば。
脳死判定を拒否することが、反社会的行為とされる日が来るのかもしれない。
移植医療「生と死に寄り添う議論を」 柳田邦男さん(朝日新聞) - goo ニュース
もうすでに、呼吸器の知り付けを拒否した家族の話が美談として語られるときだからこそ、邦男さんのこの発言は重い。
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別れを乗り越えて, 2008/11/20
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父は書いた。息子が抱いていた「一人の人間が死ぬとその人がこの世に生き苦しんだことすら、人々から忘れ去られ、歴史から抹消されてしまう絶対的な孤独―究極の恐怖心」をとりのぞくために。
東大卒、NHKの記者という経歴を持ついわゆるエリートの著者が、神経症を患った息子の自殺を経験し、今まで得てきた科学的知識は何も役立たないことを思い知らされた。
悲しみを乗り越えて、理性的に綴っていく姿は、作家という業という言葉だけでは片付けられない。
親族はじめ、周囲の反撥も相当のものであったと思われる。
「誰の役にも立てず、誰からも必要とされない存在」となっていることを非常に悩んでおり骨髄バンクに登録していた息子の気持ちを察して、父は脳死になった息子の骨髄移植できないかと考える。実際には脳死患者からの骨髄移植は不可能であったが、担当医師の提案により、腎臓移植をすることとなる。その姿に影響された医師も出てきたことに著者は胸を熱くする。
しかし、それまで偏見を持たれ、タブー視されてきた心の病をもつものが、人より純粋で傷つきやすいだけなのだということで、注目されるようになってきたということにも十分この本を書かれた意義があるだろう。
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二人称の死を, 2008/3/31
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今の医療業界のマンパワーでは難しいことかもしれませんが、患者の死が三人称の死ではなく、二人称の死であるべきだという理想を抱かせてもらいました。
死への物語作りというのは様々な人の協力の下にしかできないと思うので、医療業界の人材不足が解消されることを期待します。
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ここに私が居る、ここにあなたが居る, 2007/10/16
By はなハルヲ (兵庫県) - レビューをすべて見る
自殺者の数は年間3万人。その3万人の一人ひとりの人生は
それは壮絶で悲しみに満ちたものだろうと思う。
その一人の姿をいやと言うほど見ることが出来る。
救おうとして助けられなかった者の慟哭も。
氏はこの本を書くとき、編集の静止も聞かず、どんどんとページを増やし
書き連ねてしまったと言う。書かずにはいられなかったのだろう。
何が原因か、誰が悪か、そんなことどうでもいい。
今まさに死のうとしている人が居る。どうすればその絶望から救うことが
できるのか。
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あまりにも重い, 2007/2/21
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典型的なアダルトチルドレンをもった親子の悲劇とは一蹴できない。親の過保護という視点で本書を批評する視点を著者自らが乗り越えようとしたプロセスがそのまま描かれているといった印象をうけた。本書でも著者自身もそのようにいっているが、著者の苦悩が色濃く描かれている。特に、科学的な考えを信望している著者が、一人の人間として、死に向き合おうとする姿は他人ごととは思えなかった。自らの体験を一般論へと昇華させようとするのは、一体どんな気持ちなのだろうと思った。
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反面教師的な役割をこの本に期待したい, 2005/12/16
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この本は典型的な「AC(アダルトチルドレン)を息子に持った父親」が書いた本である。
著者は潜在意識的には息子さんが生きようが死のうが、またどれだけ苦しもうがどうでも良く、全く関心が無いのだが、顕在意識的にはいわゆる社会常識が強く働き、本人自身無自覚に「息子の成長を見守り、相談には快くのり、理解ある父親」を演じてしまっている。
息子さんはその強烈なダブルバインドに本人自身無自覚的に苦しめられ、ついには自ら命を絶ってしまう。
息子さんが亡くなってしまった後にこの様なことを言っても仕方ないのだが、助けるにおいて著者が出来る唯一の方法としては、「自分から(心理的・地理的に)出来る限り遠ざけること」のみだったように思う。
無自覚なACの親がどのようにして子供を自殺に追い込んでいくかという、反面教師的な役割をこの本に期待したい。
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生と死の重み, 2005/3/19
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著者の最愛の次男が自死によって脳死状態に陥り、亡くなるまでの11日間をそのベッドサイドで過ごし、生と死について考え抜いたその過程を記した感動の手記。
次男の洋二郎さんは生前心の病を患っており、彼が生きる意味を求めて生前につづった日記も収録されていて、読む者の心を深く揺さぶる。
この本を読みながら、生前の洋二郎さんの苦しみと、最愛の息子を突然失った著者の深い悲しみを想って、それに自分自身の体験もオーバーラップして、途中何度も胸がつまって、読み進むのが難しかった。
父親として、息子がこの世に生きた証を活字に刻印してやらねばという著者の願いがひしひしと伝わってくる。
洋二郎さんは死後、誰からも忘れられてしまうことに絶対的恐怖を抱いていたとあるが、この本を通じて、永遠に誰かの心の中に生き続けることになった。
著者自身が「死にゆく患者の家族」の立場から終末医療のありかたや脳死問題について述べられた箇所は、読んで考えさせられることが多い。
納得のいく死を迎えるためには、残された「生」をいかに生きるかということが大切なのだと思った。
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胸を打つ筆者の思い, 2004/12/5
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もうだいぶ前に書かれた本だが、考えさせられる部分が多かった。著者の息子が、長い精神の病との戦いの後、自殺を試み、脳死段階を経て死んでいった悲劇について書かれた本だ。特に、その息子が書いていた日記や小説が痛ましい。それらはひどくナイーヴで内省的だ。しかしその表現は、誰もが体の深い底の部分に抱え込んでいる暗い闇の部分に触れており、簡単に目を反らす事が出来ない。殆どの人は自殺せず毎日を生きているけれど、その陰の部分に真剣に向かい合ってしまう人もいるのだ。脳死判定を受けた場面で、筆者の抱く思いは深い。脳死判断については、センチメンタルを廃し、科学的な論拠を築くべきだと言う立花隆の著作に同意しつ、息子が脳死となったその時私に大切なのはそのセンチメンタルな部分だと彼は述べる。その感情が溢れ出した部分にぼくはただ感動した。
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この様な問題を改めて考えさせてくれる本として星5つ, 2003/10/11
By カスタマー
著者と息子の関係は、岸田秀氏の著作『ものぐさ精神分析』の中の
「私の原点」にある岸田氏とその母親の関係と根本的には同じもの
である。
したがって、この作品は冒頭に以下の文章が必要に思う。
「私は洋二郎のことなど欠片も心配などしていなかった。
ただ困っていたにすぎなかった。
そこに感情は無かった。
そして、私自身そのことにさえ気付いていなかった。」
また、それを感じ取れるか否かでこの作品は読者にとって180度違っ
た意味を持つものになる。
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