誰も知らない南の島

いつか南の島にいきたい

脳死判定を拒否する権利について

2009年07月03日 | 谷本歩実柔道一本勝負
呼吸器を取り付けるとき、意識のある患者であっても、医療従事者である医師と看護婦は、それぞれの立場で、患者の家族に取り付けの可否を問うてくる。
呼吸器を取り付けるか否かは選択できますと。
その言葉は、あたかも、呼吸器の取り付けが、反社会的行為であるかのような眼差しを含む。
まして、脳死ともなれば。

脳死判定を拒否することが、反社会的行為とされる日が来るのかもしれない。

移植医療「生と死に寄り添う議論を」 柳田邦男さん(朝日新聞) - goo ニュース

もうすでに、呼吸器の知り付けを拒否した家族の話が美談として語られるときだからこそ、邦男さんのこの発言は重い。



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別れを乗り越えて, 2008/11/20
By yukaricoffee - レビューをすべて見る
父は書いた。息子が抱いていた「一人の人間が死ぬとその人がこの世に生き苦しんだことすら、人々から忘れ去られ、歴史から抹消されてしまう絶対的な孤独―究極の恐怖心」をとりのぞくために。

東大卒、NHKの記者という経歴を持ついわゆるエリートの著者が、神経症を患った息子の自殺を経験し、今まで得てきた科学的知識は何も役立たないことを思い知らされた。
悲しみを乗り越えて、理性的に綴っていく姿は、作家という業という言葉だけでは片付けられない。
親族はじめ、周囲の反撥も相当のものであったと思われる。

「誰の役にも立てず、誰からも必要とされない存在」となっていることを非常に悩んでおり骨髄バンクに登録していた息子の気持ちを察して、父は脳死になった息子の骨髄移植できないかと考える。実際には脳死患者からの骨髄移植は不可能であったが、担当医師の提案により、腎臓移植をすることとなる。その姿に影響された医師も出てきたことに著者は胸を熱くする。

しかし、それまで偏見を持たれ、タブー視されてきた心の病をもつものが、人より純粋で傷つきやすいだけなのだということで、注目されるようになってきたということにも十分この本を書かれた意義があるだろう。
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二人称の死を, 2008/3/31
By らまりん (viva南国♪) - レビューをすべて見る
今の医療業界のマンパワーでは難しいことかもしれませんが、患者の死が三人称の死ではなく、二人称の死であるべきだという理想を抱かせてもらいました。
死への物語作りというのは様々な人の協力の下にしかできないと思うので、医療業界の人材不足が解消されることを期待します。
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ここに私が居る、ここにあなたが居る, 2007/10/16
By はなハルヲ (兵庫県) - レビューをすべて見る
自殺者の数は年間3万人。その3万人の一人ひとりの人生は
それは壮絶で悲しみに満ちたものだろうと思う。
その一人の姿をいやと言うほど見ることが出来る。
救おうとして助けられなかった者の慟哭も。
氏はこの本を書くとき、編集の静止も聞かず、どんどんとページを増やし
書き連ねてしまったと言う。書かずにはいられなかったのだろう。
何が原因か、誰が悪か、そんなことどうでもいい。
今まさに死のうとしている人が居る。どうすればその絶望から救うことが
できるのか。
自殺など遠い話しのことと思っている人ほど読んで欲しい。
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あまりにも重い, 2007/2/21
By kidd (japan) - レビューをすべて見る
典型的なアダルトチルドレンをもった親子の悲劇とは一蹴できない。親の過保護という視点で本書を批評する視点を著者自らが乗り越えようとしたプロセスがそのまま描かれているといった印象をうけた。本書でも著者自身もそのようにいっているが、著者の苦悩が色濃く描かれている。特に、科学的な考えを信望している著者が、一人の人間として、死に向き合おうとする姿は他人ごととは思えなかった。自らの体験を一般論へと昇華させようとするのは、一体どんな気持ちなのだろうと思った。
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反面教師的な役割をこの本に期待したい, 2005/12/16
By 辻道夫 - レビューをすべて見る
この本は典型的な「AC(アダルトチルドレン)を息子に持った父親」が書いた本である。

著者は潜在意識的には息子さんが生きようが死のうが、またどれだけ苦しもうがどうでも良く、全く関心が無いのだが、顕在意識的にはいわゆる社会常識が強く働き、本人自身無自覚に「息子の成長を見守り、相談には快くのり、理解ある父親」を演じてしまっている。

息子さんはその強烈なダブルバインドに本人自身無自覚的に苦しめられ、ついには自ら命を絶ってしまう。

息子さんが亡くなってしまった後にこの様なことを言っても仕方ないのだが、助けるにおいて著者が出来る唯一の方法としては、「自分から(心理的・地理的に)出来る限り遠ざけること」のみだったように思う。

無自覚なACの親がどのようにして子供を自殺に追い込んでいくかという、反面教師的な役割をこの本に期待したい。
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犠牲, 2005/6/16
By カスタマー
素晴らしかった。
詠むべき本といった感じ。
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知識人ではなく父として, 2005/5/26
By きらら星 - レビューをすべて見る
神経症を患い続けた末、自殺を図り脳死状態に陥った息子についての11日間のドキュメンタリー。かなり古い本書がいまだ増刊されている理由は東大出の新聞記者である作者、柳田邦男氏が息子の死にぶつかり知識人としてではなく父としての感情を正直に吐露したところにあるように思う。息子の死の前での臓器提供等に関する判断は膨大な医学的知識に基づくのではなく結局父としての愛情が先立ったことを告白している。立花氏の「脳死」は最先端の科学をつめこんだ優れた本であるが時間の流れと医学の進歩と共にいつか古びてしまうだろうのではないだろうか。本書は読んでいると柳田氏が真摯で生真面目過ぎて胸が苦しくなる。けれど本書はこれからも脳死に立ち向かう家族たちの心の支えになるような気がする。
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生と死の重み, 2005/3/19
By はるharu (岡山県) - レビューをすべて見る
著者の最愛の次男が自死によって脳死状態に陥り、亡くなるまでの11日間をそのベッドサイドで過ごし、生と死について考え抜いたその過程を記した感動の手記。
次男の洋二郎さんは生前心の病を患っており、彼が生きる意味を求めて生前につづった日記も収録されていて、読む者の心を深く揺さぶる。

この本を読みながら、生前の洋二郎さんの苦しみと、最愛の息子を突然失った著者の深い悲しみを想って、それに自分自身の体験もオーバーラップして、途中何度も胸がつまって、読み進むのが難しかった。

父親として、息子がこの世に生きた証を活字に刻印してやらねばという著者の願いがひしひしと伝わってくる。
洋二郎さんは死後、誰からも忘れられてしまうことに絶対的恐怖を抱いていたとあるが、この本を通じて、永遠に誰かの心の中に生き続けることになった。

著者自身が「死にゆく患者の家族」の立場から終末医療のありかたや脳死問題について述べられた箇所は、読んで考えさせられることが多い。
納得のいく死を迎えるためには、残された「生」をいかに生きるかということが大切なのだと思った。

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胸を打つ筆者の思い, 2004/12/5
By noritoku76 - レビューをすべて見る
もうだいぶ前に書かれた本だが、考えさせられる部分が多かった。著者の息子が、長い精神の病との戦いの後、自殺を試み、脳死段階を経て死んでいった悲劇について書かれた本だ。特に、その息子が書いていた日記や小説が痛ましい。それらはひどくナイーヴで内省的だ。しかしその表現は、誰もが体の深い底の部分に抱え込んでいる暗い闇の部分に触れており、簡単に目を反らす事が出来ない。殆どの人は自殺せず毎日を生きているけれど、その陰の部分に真剣に向かい合ってしまう人もいるのだ。脳死判定を受けた場面で、筆者の抱く思いは深い。脳死判断については、センチメンタルを廃し、科学的な論拠を築くべきだと言う立花隆の著作に同意しつ、息子が脳死となったその時私に大切なのはそのセンチメンタルな部分だと彼は述べる。その感情が溢れ出した部分にぼくはただ感動した。
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この様な問題を改めて考えさせてくれる本として星5つ, 2003/10/11
By カスタマー
著者と息子の関係は、岸田秀氏の著作『ものぐさ精神分析』の中の
「私の原点」にある岸田氏とその母親の関係と根本的には同じもの
である。
したがって、この作品は冒頭に以下の文章が必要に思う。

「私は洋二郎のことなど欠片も心配などしていなかった。
 ただ困っていたにすぎなかった。
 そこに感情は無かった。

 そして、私自身そのことにさえ気付いていなかった。」

また、それを感じ取れるか否かでこの作品は読者にとって180度違っ
た意味を持つものになる。

犠牲(サクリファイス)―わが息子・脳死の11日 (文春文庫)
柳田 邦男
文藝春秋

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大平正芳は興亜院で占領政策の破綻を見た/「戦後保守」とは何か

2009年07月03日 | ふたりの真希
興亜院
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
興亜院(こうあいん)は昭和13年(1938年)12月16日に設立された日本の国家機関の一つ。中国大陸での戦線が拡大し占領地域が増えたため、占領地に対する政務・開発事業を統一指揮するために設けられた

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戦後保守の軌跡, 2009/2/21
By 野原ひろし (埼玉県春日部市) - レビューをすべて見る
 読んでいる最中は、面白かったです。そして、読み終
えて残るのは、くっきりとした戦後保守の軌跡です。た
だし、それ以上でもそれ以下でもありません。しかし、
この時期を考える上で、それを無視できないこともまた
確かなことでしょう。
 特記しておきたいことが、ふたつあります。ひとつは、
大平の興亜院での経験です。占領地での経済政策の
破綻を見たことから治者の心得を学んだこと、そしてそ
れが保守本流のひとつの源流になっていること。もうひ
とつが田園都市構想の先駆性です。それは、高度成
長の歪みの補正とポストモダンという両課題を取り込ん
だ意欲的なものでした。記憶していてよいことだと思い
ました。

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大平正芳-偉大なる政治哲学を持った宰相, 2009/1/12
By さきこマイラブ (北海道) - レビューをすべて見る

 大平正芳―私が戦後の総理大臣の中でもっとも尊敬してやまない人物である。
 本書は,彼の生涯とその政治思想について,多くの文献をもとに体系立て分かりやすく紹介している。
 貧農の家に生まれ,苦学力行して大学を卒業して大蔵省に入省,政治家に転身した後は,官房長官として池田政権を支え,外相として日中国交正常化に尽力し,蔵相として財政再建に苦労した後,三角大福の最終ランナーとして総理・総裁に登りつめ,田園都市構想などで新しい日本が歩むべきを模索しようとしたが,総選挙の敗北や40日抗争で気力・体力を消耗し,ついに総理在任のまま帰らぬ人となってしまった。
 大平政治が目指そうとしたものは何であったか,そしてそれがいかに壮大かつ温かみのあるものであったか,ぜひ本書を一読いただきたい。幅広い読書と深い思索に裏打ちされた,大平正芳の政治哲学が理解できるだろう。
 そして副題にある「戦後保守」とは何かも理解できることであろう。
 
 
 
 
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楕円の政治家, 2009/1/6
By picander - レビューをすべて見る

クリスチャン宰相であった大平は、ライシャワーが「引っ込み思案であるように見えることによって目立った人物であり、人の後に追随するように見えることによって、人を指導するような人物」と巧みに評したように、鈍牛の風貌とは裏腹の知的で大きな構想を持った政治家であったことは、今では多くの人に知られている。私たちにとって三角大福時代の各宰相の政策とその評価は、どうしても当時の激しすぎる権力闘争の向うに霞んで見えてしまうのだが、本書は大平の人生を辿り、大平の言葉を紐解きながら、彼の目指した戦後保守のあり方を考察する。岸、池田、田中、福田、三木といった政治指導者たちの政策と成果も端的にまとめられており、文章も簡潔で読みやすく大平を軸とした戦後政治史の好著だろう。『大平は極端を嫌い、矛盾する事象に楕円のバランスをとり、粘り強い対話を重視した。また政府の役割を限定していく、小さな政府の先鞭をつけた政治家とも言える。大平の洞察は現在も有効だが、劇場型、強権型政治にシフトする日本で支持を得ることは難しい。危機においてバランス調整型の政治家か、ある種の極端を持った政治家なのか、いまだに日本人はその答えを見出していない。日本の統治構造』と併読すると理解も深まる。政策よりも権力闘争の物語を読みたい向きは、『自民党戦国史』を読んだ方がいいだろう。
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ないものねだりであることはわかっているけど, 2009/1/3
By TaroTaro - レビューをすべて見る

サブタイトルに“「戦後保守」とは何か”と謳われているとおり、大平正芳という人間そのものを描いた評伝ではなく、彼の政治家としての立ち位置や信条を、彼が生前発表した著作の中から再検証するという内容が中心となっている。著者が政治学を専門とする学者、中央公論(新)社の新書という出版形態から想像されるとおりの固い内容だ。

例えば、昭和年代後半以降の自民党政治の転換点ともいえる、中曽根康弘の「戦後の総決算」や竹下政権時の「消費税」など、大平以降の総理が行なったことの中には、それにはじめて言及したのが彼等ではなく、実は、一般的には忘れ去られた政治家の一人である大平正芳だったということが、この本のポイント、というか売りだ。

そして、その大平こそが戦後保守本流を歩んだ政治家であることから、彼の政治家としての足跡を通じて戦後保守政治を検証してみようというのが本書の目的だ。だから、ノンフィクションライターであればドロドロの人間模様も交えて詳細に描かれるであろう「三角大福」間の政争についても、サラッとしか触れられていない。そういう意味では論点を絞った新書らしい一冊といえる。

しかし、大平正芳という懐かしい名前を見つけ野次馬的興味でこの本を手に取った私のような読者にとっては、やっぱり大平正芳という田夫然とした人物がどうして権力の頂点へ登りつめたのかといった“手段”にも触れた上で、彼の先見性を論じて欲しかったと思う。
大平正芳―「戦後保守」とは何か (中公新書)
福永 文夫
中央公論新社

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外に平和、内に福祉/河井継之助、山本五十六、そして田中角栄

2009年07月03日 | 谷本歩実柔道一本勝負
12 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 現在の日本と照らし合わせると・・・, 2005/10/30
By m326 - レビューをすべて見る
田中角栄の秘書を23年間務めた早坂氏の執筆だけあって、3人の中で田中についての記述がもっともリアリティがあり興味深く読めた。ロッキード事件の汚名を晴らせぬまま他界した元総理の、政治的足跡と人となりがわかりやすく綴られている。とかく負の部分ばかりが強調されがちな田中の政治的功績がどのようなものであったか、そしてなぜ失脚したのか、客観的事実を淡々と積み重ねることで説得力ある内容となっている。現在の日本と、日本を取り巻く状況とを考え合わせながら読むと、田中亡き後、日本は大きな羅針盤を失ってしまったのではないかと思えてくる。「田中の四十年余にわたる政治生活の基本路線は『外に平和、内に福祉』である。諸外国と事を構えず、ひたすら日本の繁栄を追求した。」「・・・田中は、『おのれのみを正しいとして、他を容れざるは、民主政治家に非ず、もし一歩誤れば、戦時下における抑圧議会の再現を見る』と指摘し、国会議員の発言の重さを強調した。」現在の日本に目を向けると、ことごとくこの逆を進んでいるように思える。日本の今後を考える上で、広く読まれるべき書と思う。
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5つ星のうち 5.0 歴史の割れ目に光芒を放つ3人の生き様に想う, 2004/5/19
By 猿吉 (神奈川県横浜市) - レビューをすべて見る
河井継之助が何たるかを知らなかった自分としては、山本五十六、田中角栄の章を読むにつれ長岡という地に生まれた英雄の時系列でのつながりを知り、そこから怨念というより、やりたいことを遂行できずに志半ばで倒れた勇者の生き様に圧倒され深い感銘を受けた。彼らは常に能動的であり、まさに率先垂範を地で行く人生を歩んでいた。しかし、出だしは好調であるものの、世間、民意、時代は彼らの意向とのずれを生じ始め、このずれから生じた矛盾、不満の捌け口、責任転嫁のスケープゴートと化してしまう。恐るべきは、田中角栄自身も気づいたトラの尾を踏んだことによるその後の急降下である。このトラの尾こそが、今や、世界の保安官を自任しながら自己の被害者意識のはけ口を他国の侵略に求めるあの大国であることを本書では軽めに触れている。また、ひとつの話題をひとつの視点でのみ徹底的に叩き潰す自分を含めた日本国民とマスコミが彼の没落に拍車をかけた功罪もあくまで第三者的な視点で捉えている。田中角栄氏の復権こそが、民意で支えられる真の民主主義が日本に生まれる日かと想わずにいられない。本書は間違いなく"未来を引き継ぐ日本人”には必読の書であるといえよう。
怨念の系譜―河井継之助、山本五十六、そして田中角栄 (集英社文庫)
早坂 茂三
集英社

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政治家が書いた本で最も頻繁に引用される本/東京‐ワシントンの密談―戦後史証言・占領と講和

2009年07月03日 | 谷本歩実柔道一本勝負
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 戦後黎明期の日米関係の鮮明な記録, 2008/8/23
By Fernald - レビューをすべて見る
 自伝的な記録を本として発表する政治家は少なくないが、戦後の政治家が書いた本の中で最も頻繁に引用されるのが本書であると言っても過言ではないだろう。当時、大蔵官僚であり、そして後に国会議員となった筆者は池田勇人の側近として渡米し、日米交渉に直接携わった。本書はその交渉を記録したものとして重要であり、特に、池田が米側に対して、アメリカの軍隊が日本に駐留することを日本側からオファーしてもよい、と述べた箇所が最重要で、これが日米安保のルーツだとも言われている。
 筆者は親米ハト派の政治家として知られているが、日米安保体制の問題点をしっかりと自覚している。筆者によれば、安保条約自体には問題は無かったが、行政協定を作成した人間の間に、日本の独立の瞬間からアメリカの占領軍がお客様に変わるのだということを理解しておらず、結果として不平等な面が多い行政協定が生まれてしまった。このように、締結早々に行政協定の問題点が指摘されていながら、今になっても行政協定の改正が行われていないという事実が、他の何よりも雄弁に戦後に日米関係を表現している。
東京‐ワシントンの密談―シリーズ戦後史の証言・占領と講和〈1〉 (中公文庫)
宮沢 喜一
中央公論社

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経済により国民統合を実現させた池田勇人/均衡財政‐附・占領下三年のおもいで

2009年07月03日 | 谷本歩実柔道一本勝負
内容(「BOOK」データベースより)
経済により「国民統合を実現」させたといわれる池田勇人が、「経済の池田」という自信を得る背景となった吉田内閣時の蔵相経験―それに基づいて本書は生まれた。敗戦の苦難をなめたわが国が復興してゆく過程を述べ、財政経済についての経論を語った池田の証言は、日本経済の将来までを展望しその慧眼が随所で光る。ドッジやシャウプとの交渉等を回想して圧巻の「占領下三年のおもいで」を付す。
均衡財政‐附・占領下三年のおもいで―シリーズ戦後史の証言・占領と講和〈2〉 (中公文庫)
池田 勇人
中央公論新社

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