確かに、発売前のコンテンツが評価対象になるのは理窟の上からは妙だ。
しかし評価がなければ最初に買う人は勇気が必要になる。
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怪獣映画の金字塔!!, 2009/6/15
By Hitomi "Hit me!" (京都) - レビューをすべて見る
1995年、一本の名作が産声を上げた。
その名は「昭和ガメラ Blu-ray BOX I」!
古き良き怪獣映画の雰囲気をまとって現れたそれは、特撮ファンを狂喜させる一本となった。
圧倒的に「リアル」だったのである。
現代日本に「怪獣」が現れたら、人々は、街は、政府はどうするのか?
その答えの一つの回答が示されたのである。
主人公の女性動物研究者は戸惑いながらも政府に協力し、「怪獣」の捕獲に乗り出す。
街の人々はただ逃げ惑うしかできなかった。
捕獲を試みた政府も、2種類の怪獣の同時出現には無力だった。
片方の怪獣「ギャオス」は人間を喰らい、巨大に成長する。
ポッキリと折れた東京タワーに営巣するそのビジュアルは、日常が無残に踏みにじられた象徴として今も心に鮮やかである。
もう片方の怪獣「ガメラ」は地球の守護者としての立場を与えられている。
勾玉を介しての少女との心の交流は「昔」を懐かしむファンへのサービスだろうか。
自衛隊は当初両方を害獣とみなし攻撃する。
そう、ガメラも人類から見れば「巨大怪獣」なのだ。
この「リアル」さ!
ゴジラが人類への歩み寄りを余儀なくされていた当時の怪獣映画に、間違いなく本作は一石を、巨大な一石を投じたのである。
この頃のガメラはオリジナルデザインに準じて丸っこく、可愛ささえ残していた。
でもご注意。この世界は我々の住む世界とは違う。
亀が絶滅していたのである。従って、ガメラを見て、「あ、でっかい亀だ!」というシーンは存在しない。このエピソードに象徴される細やかな気配りと綿密な設定。
非日常が「リアル」をまとった瞬間である。
翌年、ファンはまたしても度肝を抜かれる事になる。
新たな「怪獣」が登場したのである。
しかも冒頭であろう事かガメラは敗北する!
仙台で姿を現した巨大レギオンには消し炭にされてしまうのである!
背水の陣を敷く自衛隊の元に駆けつけたのは、何と奇跡の復活を果たしたガメラ!
何時見ても胸が熱くなる場面である。
自衛隊隊長がガメラを援護する決断を下す場面や、乾坤一擲の必殺技で見事レギオンを倒したガメラを見送る自衛隊隊員たちが敬礼する場面などは、怪獣映画における人間と怪獣の共闘を示唆したシーンとして興味深い。(第3作で、その期待は淡くも崩れ去ることとなるのだが・・・)
ガメラのデザインも進化する。飛行シーンでは腕を翼に変形させ、海亀の様な姿になるのである。第1作目が当たらなければお蔵入りしていたアイデアだったそうで、これを見られたことが後の成功を決定付けていることになると思う。
群体レギオンや巨大レギオンのデザインも素晴らしい。
スタッフは「如何にして人間のシルエットを見せない新しい怪獣像を提示するか」に腐心したという。
見事な成功例として記憶されるべきである。
群体や巨大レギオンというアイデアも秀逸である。
宇宙から飛来した、と聞けば使い古したアイデアにも聞こえるが、この群体というアイデアは思わず膝を打ってしまう。
個としての生物と、群体としての生物の位置づけは今考えても凄いと思う。
ホンを書いた伊藤和典さんは全く凄い仕事をされたな、とも思う。
勿論実際に撮った金子監督や樋口監督が凄いのは当然として、である。
第3作、ファンは全く期待を裏切られる。
勿論良い意味で!
今回の主役と呼べる少女は「ガメラに両親を殺された少女」である。
のっけからガメラはギャオスとの戦いで渋谷を壊滅させる。
正に阿鼻叫喚である。そこに浮かび上がるガメラのシルエットの禍々しい事!
顔は鋭角になり、かつての丸っこさは影を潜め、甲羅は刺々しい。
立ち位置は「人類の守護者」ではなく「地球の守護者」である。
かつてレギオンと戦った影響で、地球の生態系のバランスが崩れてしまい、世界中にギャオスが溢れ出てしまっていて、ガメラは孤軍奮闘である。
そこに上記の少女のような敵視である。
少女の憎しみは新たな怪獣を生む。それがイリスである。
昔の「安心して見ていられる怪獣映画」はもう存在しない。
物語は、徹底的にギャオスを殲滅しようとするガメラと、ギャオスの上位種とも呼べるイリスとの戦いに収斂される訳である。
京都を舞台に激突する2体の怪獣!
火の海になる京都!
ただ逃げ惑うしかできない人間達!(大迫力さんも忘れずに!)
ドテッ腹をブチ抜かれる京都駅!
右腕を吹き飛ばされて、なおも戦い、少女を奪い返すガメラ!
怪獣たちの戦いはクライマックスを迎える!!
人間達の様々な思いをその甲羅に受けて、ガメラは何千匹ものギャオスとの最後の決着に向かう!!
これで熱くならない特撮ファンはいません!
ごく普通の映画としても、怪獣云々抜きにしても素晴らしい!
序破急3部作として、完璧な、空前絶後の怪獣映画をブルーレイで見ることが出来る日が来ようとは!
ファンとしては、これは絶対に欠かすことの出来ない商品です。
1本当たりの単価もそれほどでもありませんし、検討されては如何でしょう?