少数派シリーズ/政治情勢
伊藤智永氏◇政治資金パーティー・安倍派バブルがはじけ長期政権が腐敗する鉄則は生きていた
■安倍派5人衆は森元首相お陰、派閥事務総長ポストも森氏の意向抜きには決まらなかった
毎日新聞を活用しました。伊藤智永・毎日新聞専門編集委員のコラム/今や岸田文雄政権がどうなるかより、自民党はどうなるのかに人々の関心はある。「悪夢のような民主党政権」と繰り返した安倍晋三元首相の言葉が、ブーメランとなって自民党に返ってきた。旧統一教会問題や政治資金パーティー問題が安倍氏の死後、釜のフタが開いたように噴き出したのは偶然と思えない。「安倍さんが生きていれば」と嘆くファンもいるだろうが、その安倍氏本人がフタだったなら、話は逆だ。安倍時代は派手なスローガンと外交、総裁選を含む毎年の選挙で人々を飽きさせない「イベント政治」だった。祝祭気分を楽しんだ人も多かったから、辞める時は支持率が驚くほど上昇し、「安倍さん、ありがとう」の感謝ムードで写真集も売れた。でも、その陰で反社会的宗教団体に肩入れし、子分が「安倍人気」で集めたカネを違法に流用していたと知れば、裏切られた気になる人もいるはずだ。功罪は別と切り分けるわけにはいかない。パーティー裏金疑惑は、安倍派(清和政策研究会、旧清和会)が焦点となっている。森喜朗、小泉純一郎、福田康夫、安倍各元首相を輩出し、麻生太郎政権と民主党政権をはさんで、約20年間に計16年余も権力を握った「清和会支配」が、ようやく終わる。
ところで、4人の清和会首相のうち本物の会長だったのは森氏だけである。小泉氏は森政権の1年間、留守役だったが会長ではない。3人は派閥の長を経ず首相になった。町村信孝、中川秀直、細田博之各氏も会長・代表世話人だったが、実権は森氏にあった。退任後の安倍会長在任は8カ月。森氏との関係が穏やかでなかった内情は、政界の常識に属する。安倍氏亡き後、すでに議員でもない森氏は、妙に生き生きと派閥運営に口をはさんできた。12月14日一斉に辞任・辞表提出した安倍派5人衆(松野博一、西村康稔、萩生田光一、高木毅、世耕弘成各氏)は全員、頻繁な「森氏詣で」を欠かさず、森氏も岸田人事への影響力を吹聴してきた。政官界の必読放談だった地元・石川県、北国新聞の連載「総理(元職への敬称らしい)が語る」が、11月26日に突然終わった。ここでの発言通りなら、5人衆が要職を占めていたのは全て森氏のお陰らしい。派閥事務総長ポストも、森氏の意向抜きには決まらなかっただろう。裏金は何のため、どこへ使われたのか。
別の回のコラム/安倍派の元ベテラン秘書らに尋ねた。異口同音に「安倍晋三政権が長すぎた。あの半分ぐらいでよかった」と慨嘆し、「アベチルドレン」(衆院なら当選4回、参院は当選2回以下の議員たち)への危機感をこぼす。安倍人気に便乗すれば当選できたから、安倍さんをヨイショすることにばかり一生懸命で、自分の支持者を作っていない。結局、資金稼ぎも安倍頼みになる」。議員個人の名前で売れるパー券は限られるが、「東京の一流ホテルで開かれるナマ安倍総理のパーティーですよ」と言えば売れる。それでノルマ以上の収益は自分のもの。別の元秘書が怒る。「政治家をボロい職業と勘違いしている。彼らの保守万歳は安倍さんに取り入りたかっただけ。フワフワして芸能人みたい。派閥パーティーも桜を見る会(定員なし)と一緒だ。それどころか幹部議員たちまでアベチル化したよ」。人数もカネも中身も水ぶくれした安倍派バブルがはじけようとしている。長期政権が腐敗する鉄則は生きていた。
■投稿者の文章|安倍元首相が亡くなり罪悪が次々と明るみに出て少しは民主主義が戻りそうだ
飽くまで結果だが安倍元首相が亡くなり、そのせいで次々と安倍政権の悪事が暴かれ少しは民主主義が戻りそうだ。古今東西、強大な権力者が暗殺されるか失脚した際に、政治や社会が変わる。安倍氏がそのまま数十年後まで寿命を全うしていれば「神格化」され、日本は世界から見放されるぐらいの悪政国になっていただろう。現に安倍氏存命中のこの20年に、日本の民主度数・平和度数・教育度数、その他も世界のランクからどんどん下がっていった。今般の政治資金パーティー問題も、安倍氏が存命なら東京地検特捜部がここまで本気で突っ込んでいたか疑問である。よく言われる平家物語の「驕る平家は久しからず」=地位や財力を鼻にかけ、おごり高ぶる者は、その身を長く保つことができないということのたとえのように、安倍派あるいは自民党の終焉の始まりである。ところで安倍なる男を生み出したのは、森喜朗元首相である。またキックバック方式が編み出されたのが、森氏在任中と言われる。21世紀の”政治の闇”は、森なる男だ。森氏の首相在任中の酷さ「神の国発言」「愛媛丸事故対応」(誌面の関係で割愛するが)はもちろん、その後も日本の政界を牛耳ったことにより日本を駄目にした。東京五輪汚職の根源は森で、未だ追い切れていない。もしかしたら特捜部の「最終ターゲット」は、安倍派でも自民党でもなく、森の悪事の追及かもしれない。安倍派撲滅、自民党撲滅、森氏撲滅、どの段階まで攻められるか分からずとも、これが将来の日本のためになることは確かで歓迎する。
伊藤智永氏◇政治資金パーティー・安倍派バブルがはじけ長期政権が腐敗する鉄則は生きていた
■安倍派5人衆は森元首相お陰、派閥事務総長ポストも森氏の意向抜きには決まらなかった
毎日新聞を活用しました。伊藤智永・毎日新聞専門編集委員のコラム/今や岸田文雄政権がどうなるかより、自民党はどうなるのかに人々の関心はある。「悪夢のような民主党政権」と繰り返した安倍晋三元首相の言葉が、ブーメランとなって自民党に返ってきた。旧統一教会問題や政治資金パーティー問題が安倍氏の死後、釜のフタが開いたように噴き出したのは偶然と思えない。「安倍さんが生きていれば」と嘆くファンもいるだろうが、その安倍氏本人がフタだったなら、話は逆だ。安倍時代は派手なスローガンと外交、総裁選を含む毎年の選挙で人々を飽きさせない「イベント政治」だった。祝祭気分を楽しんだ人も多かったから、辞める時は支持率が驚くほど上昇し、「安倍さん、ありがとう」の感謝ムードで写真集も売れた。でも、その陰で反社会的宗教団体に肩入れし、子分が「安倍人気」で集めたカネを違法に流用していたと知れば、裏切られた気になる人もいるはずだ。功罪は別と切り分けるわけにはいかない。パーティー裏金疑惑は、安倍派(清和政策研究会、旧清和会)が焦点となっている。森喜朗、小泉純一郎、福田康夫、安倍各元首相を輩出し、麻生太郎政権と民主党政権をはさんで、約20年間に計16年余も権力を握った「清和会支配」が、ようやく終わる。
ところで、4人の清和会首相のうち本物の会長だったのは森氏だけである。小泉氏は森政権の1年間、留守役だったが会長ではない。3人は派閥の長を経ず首相になった。町村信孝、中川秀直、細田博之各氏も会長・代表世話人だったが、実権は森氏にあった。退任後の安倍会長在任は8カ月。森氏との関係が穏やかでなかった内情は、政界の常識に属する。安倍氏亡き後、すでに議員でもない森氏は、妙に生き生きと派閥運営に口をはさんできた。12月14日一斉に辞任・辞表提出した安倍派5人衆(松野博一、西村康稔、萩生田光一、高木毅、世耕弘成各氏)は全員、頻繁な「森氏詣で」を欠かさず、森氏も岸田人事への影響力を吹聴してきた。政官界の必読放談だった地元・石川県、北国新聞の連載「総理(元職への敬称らしい)が語る」が、11月26日に突然終わった。ここでの発言通りなら、5人衆が要職を占めていたのは全て森氏のお陰らしい。派閥事務総長ポストも、森氏の意向抜きには決まらなかっただろう。裏金は何のため、どこへ使われたのか。
別の回のコラム/安倍派の元ベテラン秘書らに尋ねた。異口同音に「安倍晋三政権が長すぎた。あの半分ぐらいでよかった」と慨嘆し、「アベチルドレン」(衆院なら当選4回、参院は当選2回以下の議員たち)への危機感をこぼす。安倍人気に便乗すれば当選できたから、安倍さんをヨイショすることにばかり一生懸命で、自分の支持者を作っていない。結局、資金稼ぎも安倍頼みになる」。議員個人の名前で売れるパー券は限られるが、「東京の一流ホテルで開かれるナマ安倍総理のパーティーですよ」と言えば売れる。それでノルマ以上の収益は自分のもの。別の元秘書が怒る。「政治家をボロい職業と勘違いしている。彼らの保守万歳は安倍さんに取り入りたかっただけ。フワフワして芸能人みたい。派閥パーティーも桜を見る会(定員なし)と一緒だ。それどころか幹部議員たちまでアベチル化したよ」。人数もカネも中身も水ぶくれした安倍派バブルがはじけようとしている。長期政権が腐敗する鉄則は生きていた。
■投稿者の文章|安倍元首相が亡くなり罪悪が次々と明るみに出て少しは民主主義が戻りそうだ
飽くまで結果だが安倍元首相が亡くなり、そのせいで次々と安倍政権の悪事が暴かれ少しは民主主義が戻りそうだ。古今東西、強大な権力者が暗殺されるか失脚した際に、政治や社会が変わる。安倍氏がそのまま数十年後まで寿命を全うしていれば「神格化」され、日本は世界から見放されるぐらいの悪政国になっていただろう。現に安倍氏存命中のこの20年に、日本の民主度数・平和度数・教育度数、その他も世界のランクからどんどん下がっていった。今般の政治資金パーティー問題も、安倍氏が存命なら東京地検特捜部がここまで本気で突っ込んでいたか疑問である。よく言われる平家物語の「驕る平家は久しからず」=地位や財力を鼻にかけ、おごり高ぶる者は、その身を長く保つことができないということのたとえのように、安倍派あるいは自民党の終焉の始まりである。ところで安倍なる男を生み出したのは、森喜朗元首相である。またキックバック方式が編み出されたのが、森氏在任中と言われる。21世紀の”政治の闇”は、森なる男だ。森氏の首相在任中の酷さ「神の国発言」「愛媛丸事故対応」(誌面の関係で割愛するが)はもちろん、その後も日本の政界を牛耳ったことにより日本を駄目にした。東京五輪汚職の根源は森で、未だ追い切れていない。もしかしたら特捜部の「最終ターゲット」は、安倍派でも自民党でもなく、森の悪事の追及かもしれない。安倍派撲滅、自民党撲滅、森氏撲滅、どの段階まで攻められるか分からずとも、これが将来の日本のためになることは確かで歓迎する。