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藻谷浩介氏◇「憲法9条改正」は自滅の道・日本の憲法を世界に広めることが本当の自衛行動/少数派

2022年04月01日 | 自民党改憲案
Ns170minoritytp 少数派シリーズ/全批判!自民党改憲案
藻谷浩介氏◇「憲法9条改正」は自滅の道・日本の憲法を世界に広めることが本当の自衛行動

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■「憲法9条改正で国を守ろう」と唱える人がいるがそもそも憲法は政府権力を規制するもの
投稿は毎日新聞を活用しております/ウクライナで大量殺人と生活の破壊が続いている。「戦争なので仕方ない」と思う人は、今の日本にどのくらいいるのだろう。「1人殺せば悪党で、100万人だと英雄だ」と叫んだのはチャプリンだったが、これは今でも正しいのか。確かに20世紀半ばまで、人類の歴史は戦争の歴史だった。しかし21世紀の今、物質文明が国境を超え、複雑な分業の上に成り立つようになって、戦争に実利はなくなった。食料やエネルギーは、買うか自製する方が早くて安全だ。住民のいる場所を侵略しても、統治に手を焼くだけである。それでもまだ、宗教やイデオロギー、権勢欲、身勝手な筋論や被害妄想に駆られて、戦争を起こす者はいる。ロシアのプーチン大統領はその最新の例であり、米国によるイラク侵攻などもそうだっただろう。

今の時代において戦争は、もはや大規模なテロ行為以外の何物でもない。唯一正当化できるのは、ウクライナがいま行っているような、先制攻撃に対する正当防衛としての戦いだけだ。とはいえ、身をていし、戦力で圧倒的に勝るロシアの侵攻を食い止めているウクライナも、残念ながら膨大な数の市民の人命被害は防げていない。「人命を守るために降参すべきだ」とは筆者は言わない。だが「正当防衛の権利を行使するからといって、個人の安全が増すわけではない」というのは、絶対的な現実である。過去に侵略者に踏みにじられた無数の国々の圧倒的多数も、防衛意識にあふれていたけれども敗れたのだ。こういう現実をまったく見ていないのか、「憲法9条改正で国を守ろう」と唱える人がいる。そもそも憲法は、自国の政府権力を規制するものであり、どう改正しても外国をけん制はしない。改正せずとも日本には、攻撃を受けた際に正当防衛する権利があり、自衛のための武装もある。それらに加えて「武力行使は辞さないぞ」と憲法に明記することに、言葉遊び以上のいかなる意味があるのか。

■改憲すれば周辺国が「日本の侵略の危険が増した」と軍備増強に走りさらにリスクが増すだけ
「『戦争の準備はある』と唱えれば国を守れる」というのは、「平和を唱えれば平和になる」というのと同じく、平和ボケの日本人の言霊(ことだま)信仰だろう。それどころか周辺国が「改憲によって日本の侵略の危険が増した」などと言い訳して軍備増強に走れば、さらにリスクが増すだけだ。必殺技を繰り出す前に、いちいち技の名前を叫ぶのは、漫画の世界の話であって現実には無用である。黙って粛々と備えればいいのだ。「正当防衛にとどまらず、自衛のための先制攻撃を認める」というのも、危ないからこそ憲法で禁じているのである。かつてのヒトラーも大日本帝国も「自衛」の名で先制攻撃に走り、そして滅びた。イラクで死んだ米兵や、ウクライナで死ぬロシア兵を見てもわかる通り、自国が先制攻撃することは、これまた無駄に国民を危険にさらす行為である。それこそが日本人が、長い歴史の中で一度きりの外国による占領から、血を吐く思いで学んだ教訓だ。

「ウクライナも核武装をしていれば大丈夫だった」という人があるかもしれない。だがその先にあるのは結局、多くの国々が核武装する世界だ。偶発的な核戦争や、テロリストによる核兵器奪取のリスクが高まり、世界はより危なくなる。だからこそ南アフリカは、核を廃棄して周辺国の対抗意欲を封じた。その逆がイスラエルで、「中東では自国だけが核を持つ」という無理な状況を続けようとするほど、将来の危険が増すのではないか。ウクライナの人たちをどう救い、プーチン氏にどう落とし前をつけさせるのか道筋は見えない。しかし、金より命である。彼の後に続く者を出さないためにも、目先の損は辞さずに経済制裁を徹底すべきだ。加えて、「攻撃されれば死を賭して反撃するが、先制攻撃はしない」と宣言する国を一つでも増やすことが、リスクの緩和のためには肝要である。かつてスイスが、ナチスの包囲を乗り切った道もこれだった。何のことはない、「戦争を国際紛争解決の手段としては使わない(正当防衛は除く)」という、日本の平和憲法を世界に広める努力こそ、言葉遊びではない本当の自衛行動である。「9条改正」は、日本の現実的な安全を損なう自滅の道ではないか。

プロフィール  藻谷浩介(もたに・こうすけ) 日本総合研究所主席研究員  東京大学法学部 コロンビア大学経営大学院
代表著書「デフレの正体」

投稿タイトルは、新聞の原題・原文に基づいて投稿者が行ったものです。

投稿者からのひと言/ロシアのウクライナ侵攻に乗じ、こともあろうか安倍元首相や自民党右翼勢力が「9条改憲」「日米核兵器共有」「敵基地先制攻撃」など煽る言論行動に走っている。藻谷氏の主張を鑑みれば、これほど危険なことはない。彼等は太平洋戦争・日本軍の侵略戦争によって、日本国民やアジア諸国がどれだけ苦しんだか全く理解していない。日本は軍人・一般市民で300数十万人、アジアの2000万人が犠牲になったにも関わらず、先の戦争を「美化」する。一方、ウクライナ侵攻による現状は、両軍の大変な死者に留まらず世界中で物資不足・経済沈下の恐れが出ている。それさえも無視して、改憲・核共有に走ることは狂っている。こうした動きは、日本国民によって止めなければならぬ。藻谷氏の仰る通り、9条改憲は日本の自滅の道だ。

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