

340万人が一生結婚できない?いま「未婚おじさん」が増えているワケ
12/17(火) 11:01配信
現代ビジネス
340万人が一生結婚できない?いま「未婚おじさん」が増えているワケ
写真:現代ビジネス
----------
いまや社会問題となっている日本人の「未婚化」。20年後には、なんと人口の約半分が独身者になるという。著書『結婚滅亡』で知られる「独身生活者研究」の第一人者、荒川和久氏は、とりわけ「男余り」が深刻化していると指摘する。なぜ、男が結婚できないのか? 「未婚おじさん」急増の謎を、豊富なデータをもとに明らかにする。
----------
【写真】年収500万円以上の30代独身男性は「普通の男」じゃないんです
340万人が一生結婚できない?いま「未婚おじさん」が増えているワケ
写真:現代ビジネス
なぜ男が余っているのか?
未婚化の人口構造上の問題の1つ。それが、「男余り現象」です。残念ながら日本には、どうがんばっても結婚できない男が340万人もいます。
未婚男性と未婚女性の人口差を見ると、全年齢合計で340万人も未婚男性の方が多いのです。
20~50代に限定しても300万人、20~30代でも145万人です(2015年国勢調査)。
つまり、日本全国の未婚女性がすべて結婚したとしても、340万人の未婚男性には相手がいないということです。もっとも、未婚女性全員が結婚するわけではありませんから、実際にはもっと多くの男性が余るという計算になります。
これが、「男余り現象」というものです。
各年代別の男余り数は上図の通りで、15歳から74歳まで、すべて未婚男性人口の方が多いことがわかります。
75歳以上で男女逆転しますが、それは悲しいかな、未婚男性が生涯未婚のまま寿命が尽きてしまったからです。
どうして未婚男性の方が多くなってしまうのでしょうか?
これは、出生時男女比によります。明治時代からの統計を見ても、ほぼ出生時男女比は1.05で、男児の方が多く生まれます。1年間5%ずつ男が多く生まれ、それが40~50年継続すれば、それくらいの差分となってあらわれます。
しかし、かつての明治以前の時代は、男児の乳児死亡率も高く、結果として男女比はほぼ同数に落ち着いていたといえます。医療の発達によって乳児死亡率が下がれば、当然「男余り」という状態に陥るわけです。
「未婚おじいさん」の時代へ
国勢調査がスタートした大正9(1920)年からの「男余り」の長期推移を年代別に見てみましょう。男余りの数が減少しているのが、第二次世界大戦周辺のみであるということも悲しい事実です。
そして、この長期推移で注目すべきは、1990年代以降の推移です。300万人を超える「男余り現象」は1990年代からはじまり、20~30代の男余り数が激減し、代わって40~50代の男余りが激増しており、2015年には40~50代の男余り数が20~30代を逆転しています。
同じ男余りといっても、かつては「若い未婚男余り」だったのに対して、今や「未婚おじさん余り」になったということです。
90年代以降というのは、ちょうど生涯未婚率が急上昇した時期と一致します。
少子化が進み、今後ますます若い男の絶対数が減ります。反対に、グラフを見る限り、60歳以上の男余りも増加基調にあります。
そのうち日本は「未婚のおじいさん余り」現象になってしまうでしょう。
しかし、未婚男女比では圧倒的に「男余り」ですが、離別死別者だけで見ると、逆に「女余り」です。全年齢合計では離別者は138万人、死別者は627万人も女性の方が多い女余りです。離別死別合計すると、女余り数は760万人を超えます。
ただし、そのうち85%以上が60歳以上の死別高齢女性です。若い男性と60歳以上の高齢女性とのマッチングは無理がありますが、それでも20~50代での離別死別女余り数は、約113万人もいます。
20~50代の未婚男性の余り数は300万人ですから、ここがマッチングするだけでも男余りは半減します。しかし、それはあくまで計算上の話であって、結婚は数合わせのようにはいきません。
離別女性がこれだけ増えるのは単に離婚が多いからだけではなく、離別したバツ有男性の再婚率が高く、しかも初婚女性と再婚するパターンが多いからです。ただでさえ少ない未婚女性を離婚男性がどんどん刈り取ってしまうわけです。
恋愛力の高い3割の恋愛強者男性が結婚と離婚を繰り返す「時間差一夫多妻制」の裏で、未婚男性は生涯結婚できなくなるのです。
海外でも男が余っている
日本がそんなに男余り社会なのであれば、国際結婚など海外へ行けばいいというアイデアもあるでしょう。ところが、この「男余り現象」は日本だけの問題ではありません。
国連の人口統計年鑑によれば、アメリカでも592万人の男余りですし(2012年)、人口14億人の中国は、桁違いの3350万人が男余りです(2010年)。総人口世界4位のインドネシアも673万人の男余りです(2010年)。
そして、なんとインドにいたっては、5000万人の男余りになっています(2001年)。この5カ国に限らず、新興国や内紛のおきている国以外はほとんどで「男余り現象」が起きています。
国連のデータは、国によって調査年次がバラバラのため、共通年次での世界全体の男余り人口は把握できませんが、少なくとも中国・インド・アメリカ・インドネシア・日本の5カ国だけで、1億人もの未婚男には「結婚したくても結婚する相手がいない」状態です。
ちなみに、現在の中国の年齢別未婚率の状況は、ちょうど1970年あたりの日本の状況と酷似しています。中国においては20年後の2040年以降、日本同様40~50代の未婚者急増の状態に突入するものと予想されます。
とにかく、世界中いたるところで男が余っています。結婚したい男にとっては受難の時代です。
しかし、こう書くと、未婚女性は全員結婚できそうなものですが、現実はそううまくはいきません。インドのように、今でもお見合いによる結婚が主流の国は別にして、個人が最適化を求めれば求めるほど、全体のマッチング総数は激減してしまうものです。また、結婚を希望しない女性も増え続けていますから、実質結婚できない男は、もっともっと多いはずです。
荒川 和久







「私、実は無類のイケメン好きで…」相手の“容姿”に妥協できなかった、婚活女子の行く末
12/12(木) 5:20配信
東京カレンダー
マッチングアプリに合コン、コリドー街といった歓楽街でのナンパなど…。
令和の時代は、日常生活で知り合うことのない人々との出会いで溢れている。
そこで東カレ読者から「20代男女の恋愛事情」を募集したところ、生々しい体験談が続々と集まった。
その艶やかな日常を、ほんの少し覗いてみよう。
「私、実は無類のイケメン好きで…」相手の“容姿”に妥協できなかった、婚活女子の行く末
(写真:東京カレンダー)
Vol.7 片道4時間かけて婚活した女
名前:ユウミ(仮名)
年齢:27歳
職業:OL
20代で結婚を決める人が少なくなっている。
都が発表した統計によると、2017年時点で女性の平均初婚年齢は30.4歳。20代での結婚に焦らなくなった女性が増える一方で、一刻も早く結婚したいと婚活に励む人もいる。
理由はそれぞれあるだろうが、今回登場する女性が婚活を頑張っていた理由は「結婚して、1日も早く上京したいから」。
20代で結婚を目指すほかの女子とは、異なった理由で婚活に励んでいた彼女。一体、彼女の婚活はどんな結末を迎えたのだろうか?
ユウミさん:大学卒業後、入社した部署は1年目から北海道転勤だったんです。…なのに私の住む地域には、歩いていて振り返ってしまうようなイイ男がいなくって。
この街では婚活できない!と思った私は、飛行機が雪の影響を受けない夏の期間だけ、毎週末都内に遊びに行ってました。
それで友人と遊ぶ傍ら、金曜日には必ずお食事会をセッティングしてもらって。
東カレ編集部:婚活へのガッツがすごいですね。そこまできたら、東京に引っ越した方が良さそうですが…。
ユウミさん:やりたくて選んだ仕事だったので、何かきっかけがなければ東京に戻ってくる決意が固められなかったんです。
お給料も年齢の割にはもらっていたので、年収が下がるような転職もしたくありませんでした。
東カレ編集部:北海道で「結婚してもいいかも…」と思えるような出会いは、全くなかったんですか?
ユウミさん:そうですね…、東大を卒業後、北海道赴任している大手ディベロッパーの方を友人から紹介されたことがありました。
それから何度かデートをしてみて。見た目も悪くなく、高身長だったのですが何よりもお話がつまらない…!
3度ほどデートを重ねましたが、フェードアウトさせていただきました。
東カレ編集部:あんまりピンと来る人がいなかったんですね。
ユウミさん:はい。それで、もう東京に通うしかないなって。
東カレ編集部:それで夏のあいだは、毎週末東京に来ていたんですね。
ユウミさん:はい。仕事の都合上、金曜日は16時くらいに新千歳空港を発てるので。
例えば20時から新橋開催のお食事会だったら、時間もなんとか間に合っていました。
東カレ編集部:すごい強行スケジュール…(笑)実際に参加したお食事会は、どんな感じでしたか?
ユウミさん:結婚するなら絶対に同じ大学の人がいいと思っていたので、大学時代の友人が企画するお食事会に参加していました。
参加していた男性の職種は、商社や広告代理店、テレビ局など様々でしたね。
そうやって男性と知り合えたら、次に東京へ遊びに行くときは“最低1人の男性とデートの予定を入れる”ことを目標にしてました。
東カレ編集部:たった1回の上京でも、貴重なチャンスですもんね。
ユウミさん:そうなんですよ!だから1回デートをしてみて「付き合う可能性はないな…」と思った男性は、すっぱり一度でデートを辞めてました。
何人もの方と同時進行はしなかったです。…そうすれば混乱もしませんしね。
東カレ編集部:「この人とは付き合わないだろうな…」っていうのは、どこで見極めていたんですか?
ユウミさん:話がつまらない人ですね!話のテンポが心地いい人だったり、ふざけるノリが合う人が良かったんです。
東カレ編集部:なるほど。東京ではどんなデートを?
ユウミさん:恵比寿の『うしごろ』でご飯を食べてからイルミネーションを見たり、一緒にジムに行ったり、麻布十番で夜ご飯を食べたり。
あとは『アマン東京』でブラックアフタヌーンティーをしたり…と、デートの内容は相手によって様々です。
中には北海道まで来てくれる男性もいましたよ!そんな時はススキノや狸小路を案内していました。
東カレ編集部:逆に北海道デートすることもあったんですか!
ユウミさん:そうなんですよ!そのときは一緒に花火を見たりもしました…わざわざ来てくれて、とてもありがたいなぁと思いましたね。
東カレ編集部:ユウミさんのエピソードを聞いていると、恋愛上手だなと思うのですが。モテるためのテクニックとかってありますか?
ユウミさん:特にテクニックはありません!(笑)
ただ「ここ興味あるんだよね!」とか「〇〇行きたい!」など意思は明確にしていました。だから男性も「じゃあ今度そこ行こうよ」と誘いやすかったのかもしれません。
東カレ編集部:実際、東京での婚活をすごく頑張っていたと思うんですが…周囲の反応はどうだったんでしょうか?
さすがに北海道在住の人が、毎週末都内にいたら驚かれそうですよね?
ユウミさん:どちらかというと「東京が好きすぎて、毎週遊びに来ている人」というのが周囲のイメージだったと思います。
お食事会は開催しつつも、土日は友人たちと伊豆大島に旅行したり、キャンプをしたりもしていたので。…私自身も出会いだけが目的だったワケではないんです。
東カレ編集部:周りの友人にも「できれば東京で出会った人と結婚したい」と話していたんですか?
ユウミさん:それは話していましたね。「東京に帰りたい」と何度も言っていました(笑)
私は実家が都内にあるので、毎週末こっちに来ていることは家族にもバレていたんですが。
両親は「よく帰ってくるわね~」程度の反応でした!子どもが帰ってくるのは嬉しいみたいだったので、特に何も言われませんでしたね。
東カレ編集部:本当に東京に戻って来たくて、婚活頑張っていたんですね…。
ユウミさん:はい、どうしても都内に戻りたくって。デートするのもレストラン行くのも、何でもそろっている東京が好きなんです。
東カレ編集部:婚活の成果はありました?
ユウミさん:努力の甲斐あって、去年の8月末に知り合った男性と出会って2週間で付き合い、半年の遠距離期間を経て結婚しました!
東カレ編集部:すごい…努力がちゃんと実を結んだんですね。おめでとうございます!
ユウミさん:今の夫との出会いは、大学の友人の紹介でした。最初は友人同士8人くらいで飲んだのがきっかけかな?
結婚を機に東京に戻ってくることができて、今ではその出会いに感謝しています!
東カレ編集部:希望通り、東京に戻ってこられたんですね!
最初から遠距離恋愛という障害がありながらも、2週間でお付き合いまで漕ぎつけられたのはなぜですか?
ユウミさん:彼の最初の一言が「今度東京に帰って来るときに、僕とデートしてください」だったんです。非常にストレートで心にぐっと来たのを今でも鮮明に覚えています。
付き合っていないときから、好意がまっすぐ伝わって来たんですよね。私も出会った時点で顔も性格も好みだなと思っていたので、自然と時間はかからなかったです。
東カレ編集部:ステキですね。遠距離恋愛はどう乗り越えたんですか?
ユウミさん:毎日、夜にテレビ電話をして遠距離恋愛の寂しさやツラさを乗り越えていましたね。
東カレ編集部:出会って半年ちょっと…となると、いわゆるスピード婚ですよね。付き合い始めてすぐに結婚を決めたことに対して、不安はありませんでした?
ユウミさん:特になかったですね。付き合っていた当時から隣にいても不満や不安がなく、自然と一緒に歳を取っていくならこの人だと想像がつきました。
2人でいるとずっと冗談を言い合ってふざけあったり、ドライブしながらカラオケ大会をしたりといつも面白かったんです。彼となら一生笑って暮らせそうだなと思いました。
これまでは「出会った瞬間にこの人だと思った」という類の話は都市伝説だと思っていたのですが(笑)実際に体験してみて、結婚を決めるときは意外とそんなものなのかなと思いが変わりました。
東カレ編集部:いわゆる「ビビッときた」という感じでしょうか?いま現在、すごく幸せそうで羨ましいです。
ユウミさん:そうですね。いまでもふざけ合いは健在で(笑)家の中で追いかけっこをしながら、笑い転げたりしています。
あとは私が作ったご飯を、必ず美味しいと言って食べてくれるのも嬉しいですね。
◆
ユウミさん:私、実は無類のイケメン好きで…(笑)大学生になって初めて付き合った彼氏が、ドストライクだったんです。
ただ性格に問題があり、付き合いが長くなると暴力をふるうようになって…。
そこで痛い目にあったので「男は顔じゃない!」ということを学び、次は同じ大学の学生で、身長や背は自分のタイプではないけれどフィーリングが合った男の子と付き合いました。
東カレ編集部:彼とはどうなったんですか?
ユウミさん:その彼氏との付き合いは4年間にもおよび、とても穏やかで大事にしてもらったのですが、最終的に私の方が彼を異性として感じられなくなってしまい…お別れすることになりました。
そこで最終的に「顔がタイプでなければ愛情は冷めてしまうんだな…」ということを悟って。
彼と別れてからしばらく、顔もタイプで性格も合う完璧な男の子を探し続け、友人からは「あなたの理想は高すぎる。もっと現実見ないと」と言われ続けました。
だけど「バッターボックスに立たない限り、ボールは回ってこない」と自分に言い聞かせ、妥協しない彼氏選びを続けました。…結果に繋がって、本当によかったです!
◆
北海道から毎週上京。片道4時間かけて婚活したユウミさんは、見事幸せを掴んだ。
周囲から「理想が高すぎる。もっと現実を見ないと」と助言されていたという彼女。しかし“バッターボックスに立たない限り、ボールは回ってこない”と自らに言い聞かせ、妥協を許さなかった。
「早く結婚したい」口に出すだけなら簡単にできるが、彼女ほど婚活に真正面から向き合える人は少ないだろう。
婚活に全力を捧げることがどれだけ大変なのか…彼女の話を聞いて痛感させられた。
▶Next:12月19日 木曜更新予定
海外進出したい女
東京カレンダー株式会社


天秤女~恋は同時進行で~:「婚活は、同時進行が基本でしょ?」強欲な26歳美女の大胆すぎる計画
小説
お気に入りに追加
Sp share btn fbシェアする
Sp share btn twitterツイートする
最高の相手と結婚したい。誰もがそう思うだろう。
ときめき、安定、相性の良さ…。だけど、あれもこれも欲張って相手を探していると、人生は瞬く間に過ぎていく。
東京に流れる時間は、待ってはくれないのだ。
与田彩菜も、運命の相手を見つけるため、婚活に励む女のうちのひとりだ。彼女には、こんな持論があった。
「婚活は、同時進行が基本でしょ?」
—良くないこととはわかっているけれど、選択肢は多ければ多いほうがいい。…こっそり誰にもバレないように。
そんな主張をする、強欲な女。彼女は、思い通りに幸せを掴めるのか…?
大人になってから「実は血液型が違っていた」という話は、たまに聞く。
与田彩菜は、実際にそういう先輩を知っている。
幼少時にB型だと教えられ、ずっとB型らしくふるまっていたのに、初めての婦人検診の結果、本当はA型だと判明し、人生を見つめ直した先輩だ。
ーだけど、A型らしいとかB型らしいという考えが好きじゃないわ。血液型占いも星座占いも、当てにならないし。
彩菜はそんな風に斜に構えていたが、あるとき、彼女の考えを覆すような意外な出来事が起こったのである。
◆
「え、私って…天秤座だったの!?」
本屋の雑誌コーナーで、彩菜は思わず声を上げた。
26年生きてきて、星占いをチェックしたことはもちろんある。だが今年の仕事運も、今月の恋愛運も、今日のラッキーアイテムも、当たったためしがない。
というわけで彩菜は、星占いを全く信じていなかった。
だが、デートの待ち合わせまで時間に余裕ができて入った本屋で、偶然見かけた雑誌。何気なく手に取り、パラパラとページをめくっていたところ、星占いの特集が目に飛び込んできたのだ。
11月1日生まれの彩奈は、本来さそり座だ。だがその占いによると、11月1日生まれは、天秤座だとハッキリ書かれている。
ーえ??なんで?そんなはずないし…。
血液型ならともかく、大人になってから「星座が違っていた」という話は初めて聞いたし、ありえないだろう。
怪訝に思いながら特集の見出しをよくよく見ると、「13星座占い」と書かれていた。
13星座占いとは、さそり座と射手座の間に“へびつかい座”が存在しているという説で、11月1日生まれはさそり座でなく、天秤座になる。正確にはそこでは「新天秤座」と呼ばれていた。
さらに占いは、ウソのように彩菜の人間性や人生の出来事を言い当てている。
『2月に恋が終わり、9月に恋が始まる』
ーウソでしょ…。大正解…。前彼と別れたのが今年の2月。今彼と付き合い始めたのが9月。
まさにドンピシャだ。
しかも彩菜の心に寄り添ったようなアドバイスまで書かれているので、気づけば、本屋で涙を流していた。遅れてやってきた彼氏もギョッとしていた。
ーダメよ。私は占いに翻弄されるような人間じゃないのよ。
周りを見渡せば、あらゆる女子が占いに頼っているが、その結果幸せを掴んだ人を一人も知らない。自分はそんなバカな女じゃない。そう思っているけれど…。
「私は天秤座だった」
その事実は、ふんぎりのつかなかった彩菜の背中を押してくれる。
ずっと心の中だけで温めてきた"ある計画"を「実行に移すがよい」と神様が言ってくれている気がした。
ー天秤座の女だからこそ、あの計画をやってもいいのかも…。
今日は、5歳年上の先輩・工藤葵と、1カ月ぶりにランチの約束をしている。
彼女は、大人になって血液型がB型でなくA型だったとわかり、人生を見つめ直したという張本人だ。
葵に会ったら、これから天秤座として生きていくことにした、と報告するつもりだ。彼女の驚く顔が目に浮かぶ。
ところが、待ち合わせの『クリスクロス』に遅れて到着した葵は、彩菜が話しかけることを躊躇してしまうほどに、暗く落ちこんでいた。
「私、離婚したんだよね」
「えっ…」
現在31歳の葵は、1年前に結婚したばかりだ。21歳から付き合っていた大学の同級生と、交際9年目のときに結婚した。
だが1周年の結婚記念日を迎える前に離婚した、という知らせは、彩菜にとって寝耳に水だった。
原因はどちらかの浮気ではなく、性格の不一致だという。
「9年間も付き合って、そのうち3年は同棲していたのに、結婚したらたった1年で別れるなんて…。自分でもこんなことあるのかって思ってる…」
いつもは快活な葵の声も、今日は信じられないほど小さくて、彩菜はどんな言葉をかけていいかわからない。
「10年間も一緒にいたのに、見極めが足りなかったのかな…」
見極め。そう、見極めが大事なのだ、と彩菜は思った。
ー葵さんは、一途すぎたのよ。もっと器用に、うまくやればよかったのに。
他の男に目移りしたことぐらい私だってあるよ、と口では言いつつも、実際は彼女に浮気経験がないことを彩菜は知っている。
でもそれが不運だった。
10年間、同じ男といたから、他の男を知ることができなかった。見極めるにも選択肢が乏しかったのだ。
「彩菜ちゃんは、私みたいになっちゃダメよ」
葵はそう言って、精一杯笑ってみせる。
―はい。葵さんみたいには絶対なりません。
心の中だけで彩菜は答え、表向きは曖昧な笑顔で「そんなこと言わないでくださいよ」と返した。
「本当に、見極めが足りなかった…」
ランチ中、葵は何度もつぶやいていた。
その言葉もまた、ふんぎりのつかなかった彩菜の背中を押した。ずっと心の中だけで温めてきた計画を、やはり決行するときがきたのだ。
「彩菜ちゃんは、結婚相手は慎重に選ぶのよ。これは、失敗した私だからこそ言えるアドバイス…って、聞いてる?」
ついぼんやりと考え事をしていた彩菜は、葵の言葉にハッと我に返る。咄嗟に、本音が口をついて出た。
「大丈夫ですよ。私は絶対にうまくやってみせますから」
「え?どういうこと?」
少し苛立ちを帯びた顔で葵に尋ねられ、この際だから正直に話してしまおうと決めた。
「あの、今から言うことは、葵さんだからこそ話すんですけど…」
"あなただからこそ…"という、嫌われることなく味方を作りたい時に使う常套句。それを前置きに使い、彩菜は、温めてきた計画を初めて他人に話すことにした。
「正直に言うと、私これまで、恋愛で苦労したことがほとんどないんです」
彩菜に初めて彼氏ができたのは、高校2年生のとき。それからは面白いほどモテまくり、大学卒業までに最初の彼氏を含めて8人の男と付き合った。周りを見ても、その数は多いだろう。
「だよね。彩菜ちゃん、超美人だし、モテるもんね」
相槌を打つ葵の方を見ると、いつのまにか笑顔が戻っている。その言葉には嫌味も込められているのだろうが、彩菜は気にしない。
大学を卒業して社会人になるときに、20代のうちには結婚しておきたいと漠然と考えていた。この美貌と若さが有効なうちに、その武器を最大限に生かして、最高のパートナーを選ぶべきだと思ったからだ。
彩菜は、卒業以来さらに5人の男と付き合ったが、一度も恋人が途切れたことはない。1年以上付き合った男もいれば、3カ月もたずに別れた男もいて、交際期間の長短はさまざまだった。ごく短期間ながら“被った”相手もいる。
「だけど、結婚相手にはいまだに巡り合えていません」
つまり26歳になるまで、13人もの男と付き合ってきたわけだが、いずれも「結婚したい」と思えるような運命の相手ではなかったのだ。
「20代のうちに、つまり29歳までに結婚するとして、あと3年の間にベストパートナーを見つけないといけないんです。でも、付き合い始めてから、見極める時間も必要ですよね」
「私は10年いても見極められなかったけど、たしかに、それでも最低1年…ううん、2年くらいは交際期間が必要かも…」
「葵さんの言うように、最低2年付き合わないとその相手がアリかナシか判断できないなら、20代のうちに結婚するにはあと3年だから…私は1人しか付き合えないことになりますね」
強引な計算だけどたしかにそうね、と葵は笑う。
彩菜は淡々と説明を続けた。
「だから私、同時に複数の男と付き合うことに決めたんです」
「え?今なんて言った?…二股ってこと!?」
「いえ、二人とは限りません。なんなら、三人でも」
口をぽかんと開けている葵に、彩菜はにっこりと頷いた。
次に付き合う相手とは、絶対に結婚したいと思っているのだ。
だが今すぐにひとりには絞れない。
これまで付き合ってきた男たちは、全員が最終的には、彩菜から不合格の烙印を押してきた。13人もの男と付き合っても、生涯のパートナーは見つからなかった。
単なる交際と違って、結婚相手を見極めるというのはやはり簡単ではないということだろう。
時間は一秒たりとも無駄にできない。ならば同時に複数と付き合うしかないではないか。
「でも…」
葵が急に声のボリュームを落として、耳打ちするように言った。
「同時に複数って、4人とか5人と付き合ってもいいってこと?…その、なんていうか、体がもたないんじゃない?」
「私、器用な方なので、うまくやってみせますよ。でもとりあえずは、3人くらいが目標かな」
彩菜がさらりと答えると、次の瞬間、葵は大笑いする。
「私、やっぱ彩菜ちゃん、好きだわ~。相変わらず変わってるわよね。離婚して落ち込んでたけど、彩菜ちゃんと会って元気が出た~」
葵の言っていることは、本音ではないだろう。それぐらい彩菜は気づいている。
もしかするとムカつかれているかもしれない。いや、ムカついているだろう。離婚直後の相手に話すようなことではないのはわかっている。
この後輩女はバカだな。ムカつくな。そう思いながら、また前向きに動き出してもらえばいい。
ー私は私で、やるべきことをやるから。
「ということは今、彩菜ちゃんは彼氏が3人いるわけ?」
「いえ、今はゼロです」
「えっ、じゃ、これから作るの?」
葵先輩はまた大笑いした。
ーこの場はこう言っておけばいい。
実際、彩菜はすでにひとり彼氏がいる。待ち合わせ時間の直前に突然「1時間遅れそう」と言ってくる男だ。
おかげで本屋に入り、13星座占いに出会うことになったのだが…。
その彼とは、付き合ってまだ3カ月。もちろん運命の相手かどうかなど判断できない。
しかし2年後は28歳だ。その時に「こいつじゃない!」となった場合、フリダシに戻りたくはない。そのためには、あと二人ほど同時進行の検討材料が必要なのだ。
「彩菜ちゃん、昔からそんなこと考えてたの?」
「考えたんですけど、実行に移すつもりじゃなかったんです。でも最近、あることが起きて心境の変化があって、背中を押された気になったんです」
「あることって?」
彩菜は13星座占いと新天秤座のことを話した。
「さそり座だと思ってたときは星座ってなんだかピンとこなかったのに、天秤座だって言われたらしっくりきたんです。大げさかもしれないけど、生まれ変わったような感覚というか、本来の自分を取り戻したような気分です」
彩菜は力強く宣言する。
「だから生まれ変わった気持ちで、今まで実行に移せなかったことも思い切ってやってみることにします」
「彩菜ちゃんって、とんでもない子ね。こんなこと言い出す子、初めてだわ」
クスクス笑いながら葵がつぶやく。彩菜は心の中で毒づいた。
ー婚活は同時進行が基本。賢い女だったら、みんなやってることよ。人には言わないだけ。
一方で、誠実に一人の男を愛し、結果さんざんな目にあってきた女性も多く見てきた。…現に、目の前にいる葵もそのうちのひとりではないか。
「でも…あんまり悪いことしてると、バチが当たるんじゃないかなあ」
葵は急に真顔になり、咎めるような視線で見つめてくる。
ー葵さんったら、そんな風に正直に生きた結果が、コレでしょ。なんて言われようと、私は私の方法で幸せを掴んでみせる。
男に選ばれる人生なんて、まっぴらごめん。そんなことは、自分のような女がすべきことではないのだ。
"男を天秤にかけてでも、最高の相手を選び抜く。"
それが、天秤座の女として再スタートを切った彩菜の決意だった。これから、数々の苦難が彼女を待ち受けているとも知らずにー。
