欠陥マンション 3800万円だった最上階の資産価値が50万円に
11/29(金) 7:00配信
マネーポストWEB
欠陥マンション 3800万円だった最上階の資産価値が50万円に
販売元と施工会社は現在も係争中(大津京ステーションプレイス)
マンション購入は人生の一大選択だが、買い手が予想もしなかったトラブルに見舞われるケースがある。2009年に完成した滋賀県大津市の「大津京ステーションプレイス」(14階建て、全108戸)もその一つだ。新築当初からこのマンションの高層階に住んでいる男性が語る。
「とにかく雨が降ると大変な騒ぎです。火災報知器が誤作動して深夜早朝かまわずサイレンが鳴り響き、おちおち寝てもいられない。漏電の恐れがあるからと、エレベーターも停止してしまうため、階段の昇り降りが大変で……。敷地内の立体駐車場も浸水したため使えず、近所の平置き駐車場を借りています」
京都駅から最寄り駅までJR新快速で約10分、琵琶湖にほど近い同マンションの付近には、大規模商業施設や大きな公園もあり、通勤・通学だけでなく子育てにも適した人気マンションとなるはずだった。
だが、新築マンションでの生活に胸を膨らませて入居した早々、通常では考えられない“欠陥”が次々と明らかになっていった。同マンションの施主で売主の不動産会社「大覚」の山下覚史社長が訴える。
「このマンションは当社が事業主となり、南海電鉄グループの南海辰村建設に施工を依頼して分譲しました。しかし、完成してみると設計とは全く違う、問題だらけの工事になっていた。屋上の防水処理が不完全なため、最上階の部屋は雨漏りを起こし、湿気のせいで室内はカビやキノコまで生える始末。とても人が住める状況ではありませんでした」
マンションの構造そのものにも問題は及んでいた。
「専門家に調査を依頼したところ、基礎部分のコンクリートが一体化していないことが判明。地震に耐えるための杭も地盤の支持層まで届いていないものがあった。大変不安定な状態で、大地震が来たら倒壊の危険もあるというのです」(山下社長)
大覚側は、調査で発覚した1000か所以上に及ぶ瑕疵の是正を求めたが、施工した南海辰村建設は「瑕疵はない」と主張し、両者の争いは2010年に法廷へ持ち込まれた。別の住民はこう話す。
「売主は希望者に契約解除の提案をしましたが、私たちはマンションに残ることを決めました。売買代金が戻っても、登記費用や不動産取得税など数百万の諸経費が無駄になるからです」
その上でこう続ける。
「問題発覚後、命にかかわるようなトラブルもありました。14階に設置された重さ50kgの防風壁4枚が落下したこともあります。裁判が長引いて先行きが見えない中、あるご夫妻は転居を巡って対立し、離婚に追い込まれました」
新築分譲時、3800万円だった最上階の部屋の資産価値は、いまや50万円にまで暴落したという。前出の男性住民が語る。
「裁判が続いている以上、買い替えにも踏み切れない。これだけ資産価値が落ちた家に、この先まだ20年以上もローンを返し続けねばならない。“いったい、どうしてくれるんや”という怒りと不安しかありません」
2013年の一審では大覚側が敗訴したものの、今年4月の二審では逆転判決となり、南海辰村建設に解体費用など約15億円の損害賠償が命じられた(南海辰村建設は上告)。仮に建て替えるにしても、多くの問題が立ちはだかる。
「資材や人件費の高騰もあり、実際に解体再築するとなれば最低でも30億円はかかる」(前出・山下社長)
また、南海辰村建設は「弊社は当該マンションに瑕疵はないと考えている。最高裁上告中であり、司法の判断に委ねる」(総務部)と回答。どのような決着となるかはまだわからない。同マンションを実地検査した日本建築検査研究所の岩山健一氏が指摘する。
「程度の差はあれど、こうした物件は全国にゴマンとある。建築業界には元請けがあり、下請けが何次も入り、職人を使うといういくつも重ねられた上下関係があるからです」
※週刊ポスト2019年12月6日号
武蔵小杉の「トイレ禁止タワマン」に新たな火種
11/29(金) 17:15配信
プレジデントオンライン
武蔵小杉の「トイレ禁止タワマン」に新たな火種
トイレ禁止のタワマン。
2019年10月12日、日本列島に上陸し関東・甲信越・東北地方に甚大な被害をもたらした台風19号。そのなかで、マンション内のトイレが使えないという事件が、神奈川県川崎市、武蔵小杉駅前に立つタワーマンションで起こった。
【写真】トイレ禁止のタワマン。
■高級タワマンなのに、トイレも使えない
ある不動産業者は「武蔵小杉のタワーマンションを客に売ってしまった。一生呪われるのかな」と罪悪感で胸を痛めている。
約10年前の武蔵小杉駅前は京浜工業地帯の一角として、大きな工場や社宅ばかりの街だった。しかし、バブル崩壊や不景気にともない、郊外へ工場を移転する企業が増え、ぽっかりと何もない土地ができあがった。
現在、武蔵小杉駅には南武線、横須賀線、湘南新宿ライン、東横線、目黒線の5路線が乗り入れている。多摩川沿いの立地で、水と緑が豊富でありながら、都心へのアクセスも良好なこのエリアをデベロッパーが放っておくわけもなく、またたく間にタワーマンションが立ち並んだ。SUUMOが発表している「関東住みたい街ランキング」では最高4位になるなど、人気は高まる一方であったが、今回の台風19号による、風評被害は免れそうにない。
武蔵小杉駅前にある「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」の地下に雨水が浸水し、配電盤が故障。停電と断水が続き、トイレが使えないという事態が発生。その模様はテレビでも広く報道された。さらにネット上では、同マンションの住人同士が掲示板で言い争う模様(真偽は不明)が投稿され、ネット民たちのルサンチマンにより、拡散されてしまった。
武蔵小杉の「トイレ禁止タワマン」に新たな火種
復旧作業中の地下2階(左)。各階に設置された簡易式トイレ(右)。(ともに情報提供者撮影)
19年10月中旬、同タワーマンションに向かうと、エントランス前にはカメラを構えた取材陣が複数。外出する住人を追いかけながら質問を浴びせていたが、迷惑そうな顔で無視をする人がほとんどだった。プレジデント誌取材班も知人をつてに同マンション住人へ取材を申し込むも、「マスコミ対応には災害対策本部を通すように通達がありました」と断られてしまった。管理側も不要な情報を漏らさぬよう、気を使っているようだ。
■渦中のタワマンへ、内見に行ってきた
同マンション内ではいったい何が起きているのだろうか。プレジデント誌取材班は、この渦中に同マンションの内見をしたという男性に当時の話を伺った。
「家賃23万3000円、管理費1万5000円の賃貸契約希望で内見に行きました。今回の災害で家賃が下がるのではないかと思い、すぐに連絡をしたのですが、2番手での応募でした。台風でタワーマンションの脆弱さが見えた先月でも、賃貸の人気状況は普段と変わらないそうです」
男性が内見へ行った当日は、水質調査が済んでいなかったことから、飲み水としての水道水の利用は禁止されていたものの、水も電気も復旧し、エレベーターも最上階まで動いていた。しかし一時は、水も電気も使えず、排泄にいたっては各フロアに設置された簡易式トイレを使用するという状況が続き、住人のフラストレーションも溜まっていた。
「こんな状況で家賃を払う義務はあるのか」と苦情を出す賃貸居住者も。だが、あくまで居住者とオーナー個人間の問題であるということでデベロッパーの三井不動産は干渉せず。また、オーナーの多くは中国人投資家だという。そんなこともあり、十分な対応がなされず、トラブルに発展するケースが多数あったようだ。
内見をした男性によると、地下2階にある駐車場でも大きな問題が起きていたという。以下、男性が内見時に担当者から受けた説明だ。
「現在、平面駐車場の車は動かせる状況にありますが、住人同士の公平性を保つため、立体駐車場、平面駐車場ともに使用禁止にしています。また、住人には“数カ月先”まで駐車場は使えないという説明をしていますが、ここだけの話、1年近く先になるのではという話も管理側では出ているんです」
同マンション、ホームページによると駐車場代は月額1万8000円。こちらもあくまで居住者とオーナー個人間の問題とのことで、使用禁止という状況でありながら料金を支払っている住人もいるという。
「しかし、常識的に考えて、支払う必要はありませんので、三井不動産から返金というかたちになるのではと考えられます。購入して住まわれている方に関しては、駐車場代の支払いは原則発生しています」(担当者)
さらに今回は、地下2階は浸水している。ホームページには、『雨天でもぬれることはありません』と明記されているものの、「お気の毒ではありますが、車が故障している可能性もゼロではありません。しかし、駐車場は使用禁止なのでその故障についても確認ができていないというのが現状です」と担当者は話した。
■失敗する役は、中国人に任せよう
電気もトイレも車も使えないうえに金だけ取られる。居住者のストレスは計り知れない。だが、もっとも頭を抱えているのは部屋のオーナーだと地元不動産業者の男性が内情を明かした。
「タワーマンションの管理費というのは、ここ10年の間に10万円を超えると言われています。タワーマンションの場合、大規模修繕にかかる費用が莫大で、1万そこらの管理費ではまったくまかなえていないんです。賃借人の場合、賃貸借契約で家賃・管理費が定められているので契約期間中は変わることはありませんが、所有者に関しては跳ね上がります」
地元不動産業者の男性いわく、「いま、不動産業界の人間で武蔵小杉のタワーマンションを購入する人間はいません」とのことだ。武蔵小杉のタワーマンションの値段は一気に上がりすぎた。賃貸借契約希望者はいまだに殺到しているものの、大勢のオーナーが部屋を売りに出している。売りが過多となっている以上、需要と供給の関係で価格が上がる可能性は少ない。そのため、投資目的ではなく居住目的で買う人が現れない限りは、まず売れない状況なのだ。地元不動産業者の男性が続ける。
「オーナーが部屋を手放したいといっても、買い手が付くまでは競売にでもかけられない限り所有するしかありません。今回の災害でさらに高く売れる可能性は低くなりました。デベロッパーは売って終わりですからね。本来物件を買わせる立場の私が言うことではないですが、そういった事情を知りながら、明るい言葉を並べて客に売りつけようとする業者もいます。知人の不動産業者は『武蔵小杉のタワーマンションを客に売ってしまった。一生呪われるのかな』と言っているくらいです」
地元不動産業者の男性は武蔵小杉のタワーマンションを購入したいという無知な客が現れても、恨まれるのが怖いので止めている。失敗する役はもう中国人だけに任せておこうというのが男性の認識だ。同マンションのデベロッパーである三井不動産に、今回の取材で得た情報の事実確認をしたところ、「本マンションは弊社グループの三井不動産レジデンシャル株式会社にて分譲済みであり、全戸お客様の資産となっております。従いまして、いただいたご質問は引き渡し済みの顧客の資産およびプライバシーに関する話であり、弊社からは回答いたしかねますので、よろしくご理解のほど、お願い申し上げます」とだけ回答があった。
武蔵小杉駅前を歩いてみると、不動産業者が近辺のタワーマンションのチラシを配りながら、通行人に購入を勧めていた。三井不動産のホームページには、『駅まで歩く時間も幸せに感じる、緑豊かな再開発エリアに暮らす。』と謳い文句が掲げられている。しかし、デベロッパーも不動産業者も売ってしまえば、あとはどうなろうと知ったことではないのだ。内見をした男性も「無駄に高い金を払ってまで水浸しにはなりたくない」と契約は見送った。