楽学天真のWrap Up


一語一句・一期一会
知的遺産のピラミッド作り

「非常識」と「常識」

2006-04-17 06:41:53 | 人間
 今、私は仕事で徳島県にいる(15日)。この徳島県は阿波踊りで有名である。
「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊りゃな損そん」
 軽妙なタッチとリズムは、夏になるとこの地に広がり、各地の町から「連」が繰り出し踊り狂う。全国から狂いたい人が集まる。なんとも楽しく、私はこの踊りが大好きである。ここに人と人を結ぶ「非常識」と「常識」がある。

 ホテルで手にしたパンフにもう一つ徳島県でかつて展開された「非常識」を思い出した。
大晦日になるとベートーベンの第9「歓喜の歌」の大合唱が放送され、日本全国各地の合唱団が繰り出されるが、そのはじまりはこの徳島県の坂東村であったことはあまり知られていない。

 第1次世界大戦で日本は、当時の「日英同盟」により、連合国側であり、勝ち組であった。負け組のドイツ兵の捕虜収容所が、実はこの徳島県坂東村にあった。88カ所の第一番札所「霊山寺」のすぐ近くである。今はわずかに「ドイツ橋」と名のついたレンガの橋が残るのみである。 ひっそりと公園の中にたたずんでいる。
 この収容所のドイツ兵に音楽に秀でた人がいた。そして、遠い祖国への思いを尊重する収容所の所長がいた。その結果実現したのが第9の合唱であった。以来、この歌は日本中へ流布した。
 戦争における殺し合いという、究極最悪の人間関係から一転、深い相互信頼関係を結ぶという奇跡が「非常識」の「常識」化によって実現したのである。この感動は、映画となった。「バルトの楽園」である。ただ、「収容所」=「楽園」とは、かの国のようで、そら恐ろしい気もするが。

 科学も「常識の科学」と「非常識の科学」がある。あるいは「通常の科学」と「革命の科学」に分けられる。アメリカ・プリンストン大学の科学史研究者、トーマス・クーンによって展開された科学論である。これまでの法則の枠内での展開や、大きな枠組み(パラダイムという)は変へず、その緻密化を目的とする科学を「通常の科学」という。それに対して、常識として定着した法則や大枠そのものを変え、科学の大転換をもたらすものを「革命の科学」という。この「革命の科学」こそ醍醐味である。科学とは「自然の真理を発見すること」であるから、本来それは「非常識」を求めるものなのである。

 徳島県における2つの「非常識」と「常識」の関係から学ぶことは多い。

「非常識」を楽しもう。

 そういえば、青色発光ダイオード発明で大きなニュースとなったのも徳島であり、またかつて流布したワープロソフト「一太郎」開発もこの徳島であった。(写真は鳴門公園でみつけた阿波踊り/歩道路面)

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