疑似科学入門 (岩波新書 新赤版 1131)池内 了岩波書店このアイテムの詳細を見る |
この本は、科学哲学の欠乏している地球科学にとって極めて重要である。
先の連合大会で、地球温暖化を巡って大きな議論があった。
政治家やマスコミ人をよんで、セッションが連日展開されたのである。
その中でも、実は「科学とはなにか」、「疑似科学とはなにか」、ということがその底流に流れていたからである。
池内氏の論をまつまでもなく、科学を少しでもかじった者には第1種疑似科学、オカルトや迷信は分かりやすい。
そして、マイナスイオンなどの科学用語をちりばめた第二の疑似科学は時間がたつと化けの皮が剥がれる。
しかし、第三の疑似科学、すなわち複雑系の科学がからみ、科学自身に困難を伴っている未来予測が絡んでいる場合は、巧妙である。
先の地球温暖化と地球環境問題をめぐる課題はその最たる対象だ。
だからこそ、一層の科学哲学が求められている。
このテーマは科学が、政治の意思決定にはじめて本格的に持ち込まれた例でもあるのだ。
「複雑系に関わる第三種疑似科学は、体制や世間の趨勢に反発したくなる人が陥りやすい傾向がある。みんながいうことに簡単に迎合せず、疑って文句をつけてみるという意味ではけなげな精神の持ち主といえる。ーー。自分の物差しだけで世の中の寸法を測ろうとして、かえって自分が疑似科学化していることに気がつかないのである」(p176)
。
そして知る人ぞ知る池内氏のこれまでの生き様も良く自覚していて、
「私もそうでないか気をつけねばならない」(p.177)
とのいましめは、彼の明晰さをきわだだせている。
連合大会のときに、大きな反響のあったシンポジウム参加者にこの本を読んでの感想を聞いてみたいと思う。
私には大変納得のいく、そして時を得た著作であると思う。