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知的遺産のピラミッド作り

粗暴:カールマルクスの生涯

2007-08-07 07:07:19 | 歴史
カール・マルクスの生涯
フランシス ウィーン,Francis Wheen,田口 俊樹
朝日新聞社

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この本は随分前に、時々出る古本市で手にした。なつかしい学生紛争の時代の亡霊ではないが厚い本で手あかもつかずまっさらなので買って相当長い間ほってあった。この種の歴史的人物には大変興味がある。20世紀、この人に影響された世界を見るとそれは、この著者が言うようにキリストや仏陀やモハメッドに匹敵、いやそれ以上かもしれない。そしてその理想が生み出した悲劇も人類史上未曾有であった。

私はこのマルクスの時代に大変興味がある。それは日本ではまさに幕末から明治初期。欧州ではプロイセンvsフランス戦争、そしてパリコンミューン。アメリカは南北戦争。日本はこの欧州のプロイセンドイツから学んで新しい国作りをすすめた。しかし、その影でこのマルクスに率いられた「赤い悪魔」が徘徊していた。そして、マルクスの死後、世界はロシア革命を引き金に大激動に突入した。「労働者の理想の国」を求める20世紀の幻想が世界を2分した。そして日本でも戦後、大ブレークした。

理想を求めることはある種の幻想であり、それを強調し、急ぐと壮大な悲劇へとつながるということが、多分億人スケールの人の不自然死の後の教訓であった。
理想とは無限遠のかなたにあるものであるものであることもっと理解すべきなのである。自然科学におけるゼロの定義、極限の定義と同じなのである。すなわち実現するとも言えるし、実現しないともいえる。ただただ無限に近づくだけなのであると。

それにしても、マルクスとは相当に粗暴であったのだね。日常的に発表していた文(ライン新聞をはじめ)は、ほとんど他人を罵倒するものであり、今流で言えば、一部の漫画や週刊誌や下品な論陣を展開する月刊誌並みの品の悪さだ。罵倒されなかったのは彼に全面的資金援助をしていた(ええとこのボンボン)エンゲルスぐらいだ。この著者は基本ベースはマルクス主義を評価する側ではあるが、より冷静である。

名前を挙げて明示的に人を罵倒する文章の公開のし合いは、日本でも戦後相当に長い間つづき、それは人を引きつける力はとてつもないものがあるように見えるが、結局後味の悪い余韻しか残さない。人は疲れる。意見の違いは当たり前であるが、それを品につつんで議論をするという風格を身につけたいものだね。
今日も暑そう。
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