18世紀末スペイン。
宮廷画家でありながら、権力批判や社会風刺に富んだ作品も精力的に制作し続けるゴヤ(ステラン・スカルスガルド)。
カトリック教会を風刺した版画は教会内でも問題となるが、これは現在のカトリック教会に対する民衆が真に抱くイメージであり、教会の威厳を高めなければならないと主張するロレンソ神父(ハビエル・バルデム)によって、有名無実化していた「異端審問」の復活・強化の道具とされた。
ロレンソがゴヤを援護したのは、自身の肖像画を彼に発注していたからでもあったのだが、彼のアトリエで一枚の美しい娘の絵に惹かれる。
それは、ゴヤの友人である裕福な商人トマス・ビルバトゥア(ホセ・ルイス・ゴメス)の娘イネス(ナタリー・ポートマン)の肖像だった。
強化された「異端審問」により異教徒の疑いで捕えられたイネスを救ってほしいとゴヤに頼まれたロレンソは、拷問を受け牢に繋がれたイネスに面会したが、助けを懇願する彼女に対する憐れみとともに欲望のまま抱きしめる。
その後も釈放されないイネスを返してほしいと訴えるトマスから晩餐に招かれたロレンソだったが、尋問を受けて異教徒であることを告白した彼女は、裁判にかけられることになると伝えた。
怒ったトマスは、イネスが受けたのと同じ“拷問”によって、「自分は猿である」という告白を書面にとってロレンソに署名させ、イネスを戻せば書面は焼却するとして異端審問所長の説得を指示する。
トマスからの修道院に対する莫大な寄付金を持って説得を試みたロレンソだったが、審問所長は寄付金だけを受け取り、告白を無視することは審問の権威を損なうとして、イネスの釈放は許可しなかった。
この結果に、トマスはロレンソが署名した書面を国王に提出したが、処罰を恐れたロレンソは国外へと逃亡。
結局イネスは帰らぬまま15年の歳月が過ぎ、フランス皇帝となってヨーロッパに覇権を築きつつあったナポレオンが、スペインへと侵攻してきた…
「カッコーの巣の上で」「アマデウス」の巨匠ミロス・フォアマンが、共産主義政権下の故郷チェコスロバキアで学生だった頃、多くの人々に無実の罪を着せたスペインの異端審問に関する映画をつくりたいと思いついたアイディアが、50年の時を経て、ついに実現したものだとか。
さすが、人間の欲望を描かせたら天下一品の名匠。
権力を持つ人間のドロドロとした醜さが生々しく描かれていて、反吐が出そうなほどに重くのしかかってくる。
王制とカトリック教会による圧政、フランス革命、ナポレオンの台頭と、めまぐるしく権力が変転していった時代を、国王から貧民まで、あらゆる人間の姿を描き出す天才画家ゴヤの目を通して観客も体感する。
どこまでも権力に執着する人間の愚かしさと、どんな状況下であっても強く生き続ける人間の強さがスクリーンに映し出され、観客の胸に迫ってくる。
ロレンソ神父とイネスが“ようやく一緒に”歩いていくラストシーンは、切なすぎる…
観る者の心を打つナタリー・ポートマンの迫真の演技が素晴らしい。
後からじわじわこみ上げてくる、人間ドラマの秀作。
「宮廷画家ゴヤは見た」
2006年/アメリカ 監督:ミロス・フォアマン
出演:ハビエル・バルデム、ナタリー・ポートマン、ステラン・スカルスガルド、ランディ・クエイド、ホセ・ルイス・ゴメス、ミシェル・ロンズデール、マベル・リベラ
宮廷画家でありながら、権力批判や社会風刺に富んだ作品も精力的に制作し続けるゴヤ(ステラン・スカルスガルド)。
カトリック教会を風刺した版画は教会内でも問題となるが、これは現在のカトリック教会に対する民衆が真に抱くイメージであり、教会の威厳を高めなければならないと主張するロレンソ神父(ハビエル・バルデム)によって、有名無実化していた「異端審問」の復活・強化の道具とされた。
ロレンソがゴヤを援護したのは、自身の肖像画を彼に発注していたからでもあったのだが、彼のアトリエで一枚の美しい娘の絵に惹かれる。
それは、ゴヤの友人である裕福な商人トマス・ビルバトゥア(ホセ・ルイス・ゴメス)の娘イネス(ナタリー・ポートマン)の肖像だった。
強化された「異端審問」により異教徒の疑いで捕えられたイネスを救ってほしいとゴヤに頼まれたロレンソは、拷問を受け牢に繋がれたイネスに面会したが、助けを懇願する彼女に対する憐れみとともに欲望のまま抱きしめる。
その後も釈放されないイネスを返してほしいと訴えるトマスから晩餐に招かれたロレンソだったが、尋問を受けて異教徒であることを告白した彼女は、裁判にかけられることになると伝えた。
怒ったトマスは、イネスが受けたのと同じ“拷問”によって、「自分は猿である」という告白を書面にとってロレンソに署名させ、イネスを戻せば書面は焼却するとして異端審問所長の説得を指示する。
トマスからの修道院に対する莫大な寄付金を持って説得を試みたロレンソだったが、審問所長は寄付金だけを受け取り、告白を無視することは審問の権威を損なうとして、イネスの釈放は許可しなかった。
この結果に、トマスはロレンソが署名した書面を国王に提出したが、処罰を恐れたロレンソは国外へと逃亡。
結局イネスは帰らぬまま15年の歳月が過ぎ、フランス皇帝となってヨーロッパに覇権を築きつつあったナポレオンが、スペインへと侵攻してきた…
「カッコーの巣の上で」「アマデウス」の巨匠ミロス・フォアマンが、共産主義政権下の故郷チェコスロバキアで学生だった頃、多くの人々に無実の罪を着せたスペインの異端審問に関する映画をつくりたいと思いついたアイディアが、50年の時を経て、ついに実現したものだとか。
さすが、人間の欲望を描かせたら天下一品の名匠。
権力を持つ人間のドロドロとした醜さが生々しく描かれていて、反吐が出そうなほどに重くのしかかってくる。
王制とカトリック教会による圧政、フランス革命、ナポレオンの台頭と、めまぐるしく権力が変転していった時代を、国王から貧民まで、あらゆる人間の姿を描き出す天才画家ゴヤの目を通して観客も体感する。
どこまでも権力に執着する人間の愚かしさと、どんな状況下であっても強く生き続ける人間の強さがスクリーンに映し出され、観客の胸に迫ってくる。
ロレンソ神父とイネスが“ようやく一緒に”歩いていくラストシーンは、切なすぎる…
観る者の心を打つナタリー・ポートマンの迫真の演技が素晴らしい。
後からじわじわこみ上げてくる、人間ドラマの秀作。
「宮廷画家ゴヤは見た」
2006年/アメリカ 監督:ミロス・フォアマン
出演:ハビエル・バルデム、ナタリー・ポートマン、ステラン・スカルスガルド、ランディ・クエイド、ホセ・ルイス・ゴメス、ミシェル・ロンズデール、マベル・リベラ