面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ゾンビデオ」

2013年02月13日 | 映画
映像制作会社で働くアイコ(矢島舞美)は、会社の倉庫に山積みのビデオから、不思議な作品を見つけた。
1960年代に作られたらしいその映像に付けられていたタイトルは「ゾンビ学入門」。
レポーターの真佐クル世(菅野麻由)が、ゾンビに遭遇したときの対処方法を紹介するというHOW TO ビデオだった。
それを観たホラーマニアの同僚・橋本(宮崎吐夢)は大喜び!
豊富な知識で解説もしてくれるが、アイコにはただキモチ悪いだけ。

そんな折も折。
謎の女ヤスデ(鳥居みゆき)が妹のカナブン(中島早貴)と共にゾンビ軍団を率いて現れた。
ヤスデ達は各地にゾンビを送り込み、日本中がパニックに陥る。
そしてゾンビ軍団は、アイコたちの元へとやって来て“要求”を突きつけた…


2011年に完成していたが、霊媒師から「公開を2年遅らせろ」との忠告を受けて公開を延期していたものの、ファンからの熱望に耐えきれずに1年前倒しになったという、“イワク付”の作品!
(…これもいわく付なんだろうか!?)
ハロプロのアイドルグループ「℃-ute」の矢島舞美主演も話題のホラー・コメディ。

かつて日本にゾンビが増殖して問題になった際、対策の一環として政府によって作られた「ゾンビ学入門」。
ゾンビの見分け方に始まり、様々なゾンビ退治の方法を具体的に解説するものだが、ゾンビの“実物”を使って実際にその息の根を止めるところを実践的に描いている。
そんなゾンビをないがしろにしたビデオに対して、ヤスデは“ゾンビの人権擁護”を訴える。
ゾンビに噛まれながらも人間としての理性と知能を保つことができた稀な存在であるヤスデには、人間の“なれの果て”であるゾンビを、まるで人間ではないように扱う“通常の人間”どもの傲慢さが我慢ならないのだ!
そんな「ゾンビの人権」を訴える物語が、いまだかつてあっただろうか!?いや、無い!
しかし、ゾンビはそもそも死体なのだから人権のあろうはずがない。
それが一般的なゾンビに対する認識であるが、そんな考えに一石を投じるプロパガンダは実に新鮮♪
(…て「ゾンビの人権」など、どうでもイイのは確かかもしれないが)

また、この「ゾンビデオ」が一般的な“ゾンビモノ”とは一線を画しているポイントは、西村映造が手がける特殊造形とスプラッター・シーンにある。
「死霊のはらわた」の残酷シーンを彷彿とさせる臓物のおどろおどろしさ。
「キャリー」を思い起こさせる、アイコの衣服を真っ赤に染めあげるほどに吹きあがる血しぶき。
更には、「ゾンビ学入門」の“後編”に隠された秘密が生み出す悪夢のような異形のクリーチャー。
一種独特のアーティスティックな映像は、特殊造形を監修した西村喜廣の正に真骨頂。


かくの如き斬新なゾンビ映画である「ゾンビデオ」だが、ゾンビについて学ぶには格好の教材となっている。
劇中の「ゾンビ学入門」は、ゾンビについての定義から特徴、退治の仕方まで、ゾンビの基礎を丁寧に教えてくれる。
そしてケイコの職場の同僚である橋本は、ゾンビを学ぶためには押さえておくべき往年のゾンビ映画の紹介だけでなく、「ゾンビ映画の体を為すものの実はゾンビ映画とは言えない作品」にまで言及し、ゾンビ映画のラインナップを整理してくれるのである。


「脳みっそバーン!」(間寛平風)な鳥居みゆきの“半ゾンビ”があまりにもハマり過ぎな、スプラッター・ホラー・コメディに仕上がった、ゾンビ映画の新機軸!


ゾンビデオ
2011年/日本  監督:村上賢司
出演:矢島舞美、宮崎吐夢、鳥居みゆき、中島早貴、大堀こういち、菅野麻由