面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「ゆれる」

2006年11月11日 | 映画
写真家の猛(オダギリジョー)は、母の一周忌のために帰郷した。
頑固な父(伊武雅刀)とは折り合いが悪いが、温和な兄・稔(香川照之)は何かと猛を気遣ってくれる。
法事を終えた猛は、父親と兄が営むガソリンスタンドへ兄と共に立ち寄り、そこで働いている幼馴染の智恵子(真木ようこ)を食事がてら送っていくと言い、彼女の部屋に上がりこむ。
翌日、稔の提案で、智恵子を交えて3人で渓谷へと川遊びに出かけた。
智恵子が見せる「一緒に東京へ行きたい」という態度をはぐらかして、一人で渓谷に架かる橋を渡り、山の自然にカメラを向ける猛。
ふと彼が吊橋を見上げると、橋の上で何かもめているような稔と智恵子がいた。
そして次の瞬間、橋の上には、谷底へ落ちた智恵子に混乱する稔の姿だけがあった。
事故として処理されたがある日、言いがかりをつけてきた客に逆上した稔は警察の事情聴取を受け、智恵子を突き落としたと口走ってしまう。
留置所に入れられた稔を救うべく、弁護士の叔父(蟹江敬三)に弁護を依頼し、事故であることの証言者として法廷に立つための準備を進めていた猛だったが、稔との面会で知られざる彼の暗部に触れ、激しく動揺し、誰もが思いも寄らない行動に出た…。

猛の「ゆれる」感情とともに、猛が回想する橋の上での稔と智恵子の様子が、スクリーンに映し出される度に異なる演出が秀逸。
果たして、純粋な事故による転落か、はたまた稔が故意に智恵子を橋から落としたのか。
観客の心も猛の感情にひっぱられて「ゆれる」。
本音と建前の交錯、明と暗のはざまで「ゆれる」猛と稔の感情の動きを、オダギリジョー、香川照之が微妙な表情の変化や行動で現す演技が素晴らしい。

練りに練られたオリジナル脚本、綿密に計算された演出と映像。
丹念に作りこまれた、映画の醍醐味に触れることができる逸品。

人間の絆、肉親の情が、儚く見えてもその実切っても切れない強いものであることを改めて考えさせられる。
一緒に観に行った相手と、いくらでも語り合える余韻を残すラストシーン。
ぜひ誰かと観に行ってもらいたい。
(それで一人で行った自分てどうよ!?)

実は劇場で観てからだいぶ日が経っているのだが、溢れる感情がまとめきれずにいてUPできなかった。
それほどの衝撃を受け、観終って時間が経つほどにこみ上げてくるものがある作品。
邦画・洋画を問わず、今年の鑑賞作品中で1、2位を争う映画だ。

ゆれる
2006年/日本  監督:西川美和
出演:オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文、真木よう子


最新の画像もっと見る

コメントを投稿