五輪エンブレム中止:「遅きに失した」 識者ら批判の声
いったん決まった世界のスポーツの祭典のシンボルが、白紙に戻ることになった。佐野研二郎氏が制作した2020年東京五輪の公式エンブレムについて、大会組織委員会が使用中止の方針を固めた。識者や市民からは「遅きに失した」「妥当な判断だ」などと、さまざまな声が上がった。
8月に新国立競技場問題で遠藤利明・五輪担当相の要請を受け意見交換したスポーツ評論家の玉木正之さんは、まず一言「良かった」と語った。さらに、撤回を「遅きに失した」と切り捨てた。デザインについても「いいと思わない。戦前の近現代主義のようなもので、なぜあんなのが選ばれたのか」と疑問を投げかけた。新国立競技場が白紙になったことにも言及し、森喜朗・東京五輪・パラリンピック組織委員会会長の責任にも言及した。今後、新しいエンブレムを作成し、選定すると見られるが、玉木さんは「ネットが発達している。みんなで選んだらどうか」と提案した。
日本オリンピック委員会(JOC)名誉委員の広瀬喜久男さんは「新国立競技場に次いで大会イメージを著しく損なってきたので、使用中止は当然だ。競技場問題とよく似て責任の所在があいまいだった。今後はオリジナリティーを重視して慎重に選考すべきだ」と話した。
大阪府枚方市のスーパーに買い物に来ていた男子大学生(19)は「エンブレムを作った佐野氏は他にも問題が多すぎた。待ちに待った日本でのオリンピックだから、問題を抱えた状態での開催には反対だった」と語った。
同市の会社員男性(23)は「使用中止は妥当な判断だ。インターネットで佐野さんの過去の作品の画像を見ていたら、今回のエンブレムは疑わしいと思っていた。今後は選考基準をしっかりして、オリジナルのものを選んでほしい」と話した。
同府箕面市の大学2年、桐田隼輔(しゅんすけ)さん(19)は「デザインが似ていると指摘されたまま使い続けるのは、日本の評判を落とすことになる。誤解されない新しいデザインを考えてほしい」と話した。