ご当地ナンバー、イラスト解禁へ 「走る広告塔」期待
2015年9月8日17時07分
ご当地名物にちなんだイラストをあしらった車のナンバープレートが、2017年にも導入される。国土交通省は、有識者らでつくる検討会で制度の詳細について議論を始めた。地域にとっては「走る広告塔」で手軽に地元をPRでき、自治体は期待を寄せている。
「東北楽天イーグルスや地元出身漫画家の人気作品のイラストを入れて、プレミアム感を出す」「イラストを全国から公募し、地元をアピールする」
8月27日に国交省が開いた制度設計の第1回検討会議で、仙台市や金沢市からこんな意見が寄せられた。06年以降に観光地名などを活用した「ご当地ナンバー」を導入した3県6市が出席した。
125cc以下のミニバイクでは、観光名所などをあしらった「ナンバープレート」を課税標識として市町が発行しているが、自動車が認められるのは初めてだ。
6月にイラスト入りを認める改正道路運送車両法が成立し、国交省は20年東京五輪のモチーフをあしらったナンバーを全国で導入する。地域にちなんだ「ご当地イラスト」入りナンバープレートは17年に導入する方針だ。ナンバー交付時に車の所有者が支払う手数料に寄付金を上乗せし、地域振興に使うことも検討されている。
国内の自動車保有台数は増加傾向にあり、現在は8千万台を超えた。国交省は、身近な足に広告塔として一役買ってもらおうと、06年以降、観光地などの地名を使った「ご当地ナンバー」制度を導入。これまで「富士山」「伊豆」「会津」など29の地名が採用された。
ご当地ナンバーを導入した120地域に昨年9月、国交省がイラスト入りナンバープレート導入の希望を聞いたところ、9割にあたる111地域が「導入を検討したい」と回答。仙台市の担当者は「仙台ナンバーの車が走る様々な場所で、魅力を発信できる面白いアイデア」と期待する。
課題は、複数の自治体にまたがって使われているナンバーについて、多くの利用者が納得するイラストをどう選ぶかだ。「土浦」「水戸」「つくば」のナンバーがある茨城県の担当者は「一つのナンバーが多くの市町村で使われているので、一つのイラストに絞るのは難しく、複数のデザインから選べたほうが良い」と提案する。
地域ブランドのコンサルティングを行うブランド総合研究所(東京都港区)の田中章雄社長は「住民みんなが納得するようなデザインにすると、各地でサクラや山、海など同じようなモチーフが使われることになり、独自色を打ち出しにくい」と指摘。「住民が愛着を持てるものを選ぶのか、全国で目立つようなPR効果が高いものを選ぶのか、しっかりとした戦略を描くことが重要だ」と話す。(中田絢子)
■自由の女神・ナイアガラの滝も
海外では、すでにイラスト入りのナンバープレートが活用されている。
国交省によると、米国では、ニューヨーク州政府が自由の女神やナイアガラの滝、フロリダ州政府が米航空宇宙局(NASA)のスペースシャトルのイラストを入れたナンバープレートを発行。手数料に寄付金を上乗せするものもあり、州立公園の維持管理や宇宙開発への理解促進事業などに充てられている。