10月中旬から番号通知=マイナンバー制度スタート―社会保障と税、情報を一括把握 2 / 9
日本に住民票を持つ全ての人に12桁の番号を割り当てる社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度がスタートする。10月5日時点の住民票に基づき、10月中旬以降、番号が記載された通知カードが郵送され、来年1月に運用が始まる。所得や社会保障などの情報を番号で把握し、公平な給付や税負担を実現するとともに、行政サービスの効率化を図る。ただ、日本年金機構の個人情報流出を受け、情報漏れへの懸念が強まっている。
マイナンバー制度では、原則として生涯同じ「個人番号」を使い続ける。1月以降、希望者に「個人番号カード」を交付する。外国人でも住民登録があれば、番号が付与される。同姓同名で生年月日が同じ人も番号で識別できるので、間違いが生じにくい。
通知カードは住民票の住所に郵送されるため、引っ越した場合、転出・転入の手続きをしないと新しい住所に届かない。東日本大震災の被災者や配偶者からの暴力(DV)の被害者など、やむを得ない理由で住民票と異なる場所に住む人は今月25日までに申請すれば、現在の居住地に届く。
マイナンバーの運用は来年1月から。源泉徴収票や行政手続きで番号の使用が始まる。国や自治体が副業も含めた所得情報を番号で把握できるようになるため、脱税や生活保護の不正受給防止に役立つ。
2017年1月には行政機関の間でマイナンバー情報をやりとりする「情報提供ネットワークシステム」が稼働する。国の機関で開始後、同年7月から自治体などが加わる。住民票や所得の情報をネット経由で確認できるため、行政手続きの際に住民票などの添付書類が不要となる。
個人用サイトも17年1月に開設される。国民年金保険料の納付免除申請などの手続きのほか、各種給付や予防接種の通知なども受け取れる。マイナンバー情報をどの機関がいつ使用したのかも確認でき、行政の情報閲覧を自ら監視できるようになる。
神戸市営地下鉄の車両、どうやって地下に?
2015年9月21日14時45分
神戸市営地下鉄の海岸線の電車の車両は、どうやってあの深い地下まで運び込まれたのでしょうか。同線には地上部分がありませんし……。(神戸市垂水区 無職男性、86歳)
地上で製造した地下鉄車両を、地下の線路へどうやって入れるか。搬入用のトンネルがどこかに隠されているのではないかと、子ども時代にわくわくした人は多いのでは?
でも、現実はそんなにロマンチックではありません。東京メトロによると、地上にある車両基地からほとんどの路線に車両を送り込めるそうです。路線が違っても、路線同士をつなぐ連絡線が近接する駅間にあるためです。半蔵門線などは相互に乗り入れている東急線の地上基地から入れるとか。大阪市営地下鉄もほぼ同様だそうです。
神戸市営地下鉄海岸線も、地上に車両基地を持つ同西神・山手線と三宮か新長田駅付近で連絡線がつくられていて、そこから入れるのだろうと思っていました。しかし、市交通局の高橋宏和担当課長は「海岸線は西神・山手線とは全くつながっていません」。え、ではどこから入れるんですか? 「そこからです」
課長が指さす事務所の窓の外には、神戸市兵庫区の御崎公園が広がっていました。一面芝生の公園で、散歩に来ている人たちがちらほら。「この公園の地下には巨大な地下車両基地があって、車両は公園に隣接している建物内から地下基地につり下げて入れているんです」
課長とともに向かった地下車両基地はワンダーランドでした。地上にある搬入棟は、体育館のような建物で、深夜にトレーラーに積んで運ばれてきた車両1両がまるまる入ります。天井にクレーンがあり、これで車両をつり下げて、床に細長く開いている穴から、地下約12メートルにある線路に1両ずつ下ろします。先に台車を、その上に車両を下ろして固定します。
線路上で4両1編成に連結して、奥に続く車両基地へ。基地の大きさは長さ400メートル、幅100メートル。無数の蛍光灯に照らし出された巨大なコンクリート構造物で、留置線や検車場、洗車場など18本の線路が整然と並んでいました。「アクション映画のロケなどにも利用していただいています」と高橋課長。
基地内には、定期点検ができる整備工場もありました。車両の下に検査員が潜って点検したり、車輪をきれいに削る工作機械があったり、クーラーやモーターを圧縮空気で掃除したり。これだけの施設があれば地上に戻す必要もないのではと聞くと、「大規模な改修工事は地上の工場でなければ難しいですね」。
ただ、搬入口から車両を入れたのは、2001年の開業当時を除けば、12年末から13年年始にかけて1編成を改修工事に出した時だけとか。高橋課長は「ふだんはレールや大型機材の出し入れにも使っています。大切な地上との接点です」と話してくれました
海の前、巨大な壁 防潮堤の建設進む 東日本大震災5年目
2015年9月21日05時00分
太平洋を望む東北の海岸線で、防潮堤の建設が進んでいる。岩手、宮城、福島の3県で総延長約400キロ、総工費は1兆円ほど。津波への備えとはいえ、徐々に姿を現す巨大なコンクリートの壁に、住民からは戸惑いの声も上がる。(写真・文 福留庸友)
■縦60センチ、横1.5メートルの景色
宮城県気仙沼市の気仙沼港。その南側で建設中の防潮堤には、一定間隔で「窓」が付いている。縦60センチ、横1.5メートル。完成時、全体の高さは6.4メートルなので、ずいぶん小さく見える。
当初の計画にはなかったが、地域の人から「海が見えなくなる」と指摘され、あけることにした。今後、厚さ3.5センチのアクリル板を埋め込むので、水は通さない。
近くの工場に通う男性(59)は「海を見るための窓なんですか。津波が来た時に水が流れて、圧力を逃がすための穴だと思っていた」と驚いていた。
■囲まれる漁港
岩手県陸前高田市気仙町の長部(おさべ)漁港は、高さ約10メートル、全長約660メートルの壁に囲われつつある。元の防潮堤は4メートルだったが、約14億円の費用をかけて高さを2倍半にする。
防潮堤の陸側は住宅の建築に制限がかかる災害危険区域に指定されたため、民家はない。水産加工会社などが立つだけだ。
海から数百メートルほどの場所に住み、震災で自宅を失った漁師の戸刺勝雄さん(75)は釈然としない。「だれも住んでいないのに、こんなのを新しく造る必要はない。震災で壊れた防潮堤を修理すれば、別なことにお金を使えるのに」
■商店街の先に
岩手県山田町の山田漁港では、陸側の国道45号との間に、高さ7.5メートル、全長1610メートルの防潮堤が造られている。近くには、地盤のかさ上げ工事のため、一時的に引っ越してきた仮設商店街がある。店舗が向かい合う通路に立つと、正面に灰色の壁が見える。
店を構える男性は「できてみたら、以前の景色が影も形もなくなった」となげいた。