今年度の王寺町のふるさと納税の受け入れ額が、目下、前年度の約16倍と好評だ。返礼品に、キャンプ場の貸し切り利用券や座禅体験券、人間ドックといった品のほか、実際に町内で使われているのと同じマンホールのふたも用意。「クラウドファンディング」と呼ばれるインターネット経由での寄付集めにも乗り出している。

 王寺町のふるさと納税は、築350年近くがたつ達磨(だるま)寺方丈(県指定文化財)の修復に使われることになっている。町の貴重な文化財を後世に残し、町をPRする拠点にしたいとの狙いからだ。

 町政策推進課によると、2014年度は20件、約46万円だったふるさと納税が、15年度は昨年末までに340件を超え、約736万円に達した。首都圏や大阪などから多く寄せられているという。ふるさと納税の受け入れ額は全国で増えており、15年度の上半期(4~9月)だけですでに14年度1年間の総額を超えた。14年度の上半期と比べると約3・9倍となるが、単純に比較はできないものの、王寺町はそれを大きく上回る勢いだ。

ログイン前の続き■来てもらえる品を

 町は5千円以上の寄付をした人に、金額に応じ返礼品を選んでもらっている。昨年11月から品目数を12から56へと大幅に増やした。

 実際に町に来てもらえるような品をそろえている。5万円以上寄付した人には、町営の菩提(ぼだい)キャンプ場(町太子2丁目)を貸し切りで日帰り利用できる券を用意。20万円以上の寄付で町内の医療機関で日帰りの人間ドック(限定数量20)が受けられ、県内外の数人に贈呈したという。

 高額の寄付者は、町内で実際に使われているのと同じ、「和(やわらぎ)の鐘」をデザインしたマンホールのふた(直径約60センチ、重さ約40キロ)も選べる。20万円以上は着色なし、30万円以上で着色ありのふた(いずれも限定数量20)がもらえる。町担当者は「最近、マンホールのふたを趣味で集める人もいると聞く。町にしかない特色あるものをと考えた」。

 町マスコットキャラクター雪丸の足跡などがデザインされた、ふるさと納税でしか手に入らないフライパン3点セット(限定数量500セット)は、1万円以上の寄付でもらえる。クレジットカードやコンビニでも支払いが可能だ。

 クラウドファンディングでの寄付は、ふるさと納税を受け入れる一つの手法として、5月から開始。500円以上100円単位で寄付ができ、今年度は今のところ約70件という。

■達磨寺方丈の修復に

 達磨寺住職の日野周圭さん(67)によると、1667年に建てられた方丈は、かつては法要などで使われていた。今では柱が傾き、「大地震が起きれば、倒壊の恐れもある。何らかの処置をしなければいけない」。危機感は募るが、寺には檀家(だんか)がおらず、修復費用を集めにくい状況だという。「広く一般から寄付を集めてくださることは大変ありがたい。県の文化財としてだけでなく、日本の文化財としても残していきたい」と語る。寺での座禅体験も返礼品の一つとなっている(5万円以上、限定数量10)。「こうした機会に座禅を身近な体験として感じてもらえれば。今までになかった形の縁が生まれるのを楽しみにしています」と話す。

 問い合わせは町政策推進課(0745・73・2001)