去る2月11日に韓国の国宝第1号『南大門』が、心ない犯人に放火され炎上してしまいました。あの映像を見ながら三島由紀夫の小説『金閣寺』を思い出してしまったのは、私だけだったでしょうか?
そして二日後の昨日、その『金閣寺』を映像化した市川崑監督がお亡くなりになったとのニュースが報道されました。享年92才と聞けば世間一般にはまさに大往生ではありますが、才能ある方はいくつでお亡くなりになってもその才能の喪失に多くの方がショックを受けるものなのだと感じました。
とか言いながら、私は市川崑監督作品をどれほど観たでしょうか?
残念ながら小説『金閣寺』は読んでいても、映画『炎上』は観ていませんし、その他の文芸作品も『ビルマの竪琴』『細雪』あたりを自宅で鑑賞した程度、金田一耕助シリーズもテレビ放映で楽しんだ程度です。
ほとんど劇場で邦画を観ることの無かった私ですからしかたはありませんし、ですから今日ここで市川崑監督について熱く語る気も資格もありません。
おっと忘れてました。一本だけ私に強烈な印象を与えた市川崑作品がありましたっけ。
それは映画『東京オリンピック』です。
もちろん、劇場でリアルタイムに観た訳じゃありませんよ、あれは大学入学年の学祭だったと思います。我がサークルが所属していた自治会、いわゆる『文化部連合会』というやつですが、それが学祭の非公開企画として行っていた「オールナイトで行う文連の集会」みたいなものがありまして、ここで映画『東京オリンピック』の上映も行ったのでありました。
上映主旨はほとんど忘れましたが、たしか「華やかな祭典も破壊の上に成り立っている」みたいなものだったかと思います。おそらく冒頭のビルを破壊していくシーンに焦点を当てたのでしょう。ともかく、冒頭だけでなくそこかしこにちりばめられたメッセージは元より、引き込まれるような臨場感と単なるドキュメンタリーではないドラマ感に圧倒されたように覚えています。(アレ?鑑賞後の討論はどんな内容だったけなぁ・・・笑)
そうそう、表彰式で『君が代』が流れると一部学生からブーイングが起こる、そんな光景も少しは残っているそんな時代でもありましたね。
あらら、またまた話がそれそう
ともかく、あの映画『東京オリンピック』は、今観ても迫力が充分伝わってくる名作であるだろうと思っています。
♪どこかで誰かが きっと待っていてくれる
雲は焼け 道は乾き
陽はいちまでも 沈まない
こころは むかし死んだ ・・・・・・♪
「あっしには関わりがねぇこって」テレビドラマ『木枯らし紋次郎』も市川崑作品だったですよね?
あれは流行りましたねぇ、今思えばあの殺陣の迫力、あれは凄かったと言えるのでしょうけど、当時はただただ「あっしには関わりがねぇこって」って何につけても言っているだけでした。れいの口に咥えるものも、焼き鳥の竹串(これは多少カッコつくんですけど)、ストロー、普通の爪楊枝となに咥えてもやってましたから・・・・・・・今の「そんなの関係ねぇ」とかなり類似しますよね。
ん?なるほど、「関わりない」とか「関係ない」というやつは、普段の生活の中で使える場面が多いってことかぁ????
なにはともあれ、さほど作品を拝見していない私でさえ影響を受けた市川崑監督、才能を失ったことは悲しいことですが、大好きだったのに吉永小百合にほだされてここしばらく止めていたという煙草も、今はタップリ楽しみながらゆっくり休んでおられると信じ、ご冥福をお祈りしたいと思います。
さて、今日の一枚は、大好きな(笑)キース・ジャレットです。
こんな私にもチョコレートを恵んで下さった女性たちに薔薇を一輪贈ろうかと・・・・
ただ、ジャケットの薔薇を贈るだけで、聴くときには大作の「DATE AND THE FLOWER」はちょっと置いておいていただいて、B面「PRAYER」からお聴きいただいた方がよろしいかとも思います。(私は「DATE AND THE FLOWER」がキースのわりには好きだったりしますけど)
私がキースのソロに飽き飽きしている頃、「代わりにこれなんてどう?」とターンテーブルに乗せていたのがこのアルバムであったように思います。
それでも「やっぱり「KOLN CONCERT」のほうがいいわね」なんて言われ、
「何を言っちょるか、このB面を聴くと「KOLN CONCERT」のあのおセンチ節へ向かって行ったキースの何かが分かるような気がするじゃないの」
なんて分かったような理屈をこねておりましたっけ。
あまり好評でなかったインパルスのキース、その中では最も親しまれた一枚であると思います。(私は四本の薔薇が付いた琥珀色のドリンクの方が好みですけどね...コラコラ)
DATE AND THE FLOWER / KEITH JARRETT
1974年10月9,10日録音
KEITH JARRETT(p,ss,fl,perc) DEWEY REDMAN(ts,perc) CHARLIE HADEN(b) PAUL MOTIAN(ds,perc) GUILHERME FRANCO(perc)
1.DATE AND THE FLOWER
2.PRAYER
3.GREAT BIRD
享年92。残念というよりも、市川監督にはこんなにも長い間映画を撮り続けてくれたことに感謝したい気持ちが強いです。「黒い十人の女」や市川雷蔵の「ぼんち」がとても好きでした。(もっとも、リバイバル上映でしたが)
今回書かれていらっしゃるキース・ジャレットのこのアルバム。日本でのタイトルが「生と死の幻想」でしたね。わたしもこのジャケットを裏返すとモノクロになっているこのアルバム、キースのアルバムのなかではとても好きな作品です。
「死して尚作品は残る」
そんな人生が送れたらどんなに幸せでしょうか。
これは、才能と努力に対する妬みでしかありませんけどね。
いつものごとく訃報を受けて、何本か市川作品のテレビ放映があるようですから、ちょっと観てみようかと思っています。