人間関係の亀裂というのは、ほんの些細なことが原因なのに、一度ボタンを掛け違えると、たとえ修復しようにも掛け違えたボタンまでたどり着くことすら出来なくなってしまう。
不思議なものですねぇ、どちらかに完全な非があれば素直に謝れば済むことも、こういったときには、おおむね非らしい非は互いに無いものです。
「何故こんなふうになってしまったんだろう?」
ただただそう思うばかりで、そのくせ修復は不可能であることを自分が誰よりも分かっている、そんなものであります。
「なんだい突然」ですよね。(笑)
じつは今日の昼、突然離婚の相談を持ちかけられましてね。
彼の年齢は38歳、奥様は39歳、ごく普通の二人は、ごく普通に恋をして、ごく普通に結婚、ただ一つ違っていたのは・・・・
おっと、べつに奥様が魔女だから離婚したいという話ではないんですよ。
彼ら夫婦は、私に式の仲人になって欲しい(断りましたけど)とまで言ってくれた二人で、恋人時代からのご夫婦ともに親しくお付き合いをさせていただいた仲です。
それが、どうにも話を聞いても、離婚する理由というか、原因がハッキリしないのでありまして、ただ、闇雲に
「バブさん、俺、離婚を考えてるんだけど、どう思う?」
と訊かれてもねぇ
「なんだ、浮気でもバレたか?????まさか○△ちゃんが浮気するわけないし・・・」
ついつい、こういったハッキリした理由を訊きたくなる無神経さは、私などに相談した彼の愚かさなのでありますが、
彼が話し出したのは、二人の成り染め
「おいおい、そのへんはおまえより良く知ってるよ俺は」
それからも、結婚後のごく一般的な夫婦の話を聞かされるだけで
「だから、何が原因なのよ、っていうか、おまえが離婚したいの?それとも離婚して欲しいって言われたの?」
「それが、なんとなく、二人でそのほうがいいかって」
「???????」
つまり、本人も何が直接的な原因なのかは理解していないようで「ただ、このまま夫婦生活を続けていくことが無理なように思う。」それだけなのであります。
「おいおい、もう結婚して十数年経つんだろ、今更、性格の不一致もねぇだろうよ。まして、子供だっているんだよ。」
私も、一般論を言うしか手はないのでありますが・・・・・・
ここで、最初の話に戻るわけです。
夫婦のどちらかに完全な落ち度があれば、素直に謝って許しを請う事も可能でしょうが、それがハッキリせず、漠然と離婚を考えてしまう、こうなると私などに相談されてもどうしようもないのですよ。
「俺に相談されても、そうだなぁじゃあ離婚しちゃえば、なんて言うわけないだろ。かといって、おまえら二人の間に入ってなんやかや言ってもしかたがないんだろうし・・・・・もうある程度おまえの中じゃ結論が出てんじゃないのぉ・・・・・だけどね、離婚なんて書類上のもんで、いつどんなときでも二人が合意すれば出来んだから・・・・・たとえば、一度離れて生活してみるとか、ねっ、そうすればお互いの必要性をあらためて感じられるかもしれないし・・・・・だけど、子供のことはしっかり考えて行動しないとぉ・・・・ともかく、俺的には反対だよ。」
二人が今後どういった結論を出すのかは分かりません。でも、これも一般論ですが、歳を取って最後に残るのは、子供でも親類でも無くて、血のつながりの全くない嫁さんだったりするわけで、離婚というのはそれを「いらないよ」って否定することなんだからね。今はどう思っても、それってとんでもなく寂しい、貧しい心になってしまうような気はするんだよなぁ・・・・・・・
まっ、私にそんなこと言われたくないかもしれないけど。
どう考えても相談する人を間違ってるよ。
さて、今日の一枚は、(正確には2枚ですけど...笑)チェット・ベーカーとジェリー・マリガンの再会(?)セッションです。
この二人も喧嘩別れして以来、ベーカーは「マリガンによって世に出た」と言われるたびにイライラし、マリガンにしても「今でもベーカーには会うんですか?またいっしょにやるようなことは?」なんて訊かれるとヘソを曲げるといった状態が続いていました。
そんな二人がどうしてこの時に共演をはたしたのか?
それは、互いに仕事を選んでいるほどの余裕が無かったからに違いありません。(マリガンはまだしもベイカーは特にそうだったでしょう。)
嫌とは言えない状況の二人を(いやいや、二人どころかズート・シムズまで)カーネギー・ホールに集めたのはブロデューサー、ドン・フリードマンでした。
さて、これを機に二人の仲は改善されたのか?
とんでもございません。何故ならこのコンサートを事実上牛耳ったのはマリガンであり、ベーカーが「おもちゃ」とまでコケおろしたエレピまで入れて・・・・・
それじゃあ、演奏自体はどうだったのか?
それはあなたの耳でお確かめいただきたいのですが、ファンが望んだベイカーの歌声も聞けますし、実際にステージで喧嘩を始めたわけでもありませんから、それなりであるのは想像の範囲です。
ひとつ、確かなことは、以前共演していたときには、ある程度、音楽性に共感し合うものがあったのでしょうけど、この時期にはどうだったのだろうか?という疑問は最後まで残る演奏であるのも確かだと思います。
一度できた亀裂を埋めることは、マリガンとベイカーにも難しいことだったのだと思いますよ。
ちなみに、ジャケットの真ん中でテナーを吹いているのは、間違いなくズート・シムズのはずなんですが、このアルバムの中では彼の音を聞くことは出来ません。
本日のカテゴリーは、リーダーをマリガンともベイカーともしたくなかったので「その他」とさせていただきました。
CARNEGIE HALL CONCERT Vol.1
1974年11月24日録音
GERRY MULLIGAN(bs) CHET BAKER(tp) JOHN SCOFIELD(g) DANE SAMUELS(vib) BOB JAMES(ep) RON CARTER(b) HARVEY MASON(ds)
1.LINE FOR LYONS
2.SONG FOR AN UNFINISHED WOMAN
3.MY FUNNY VALENTINE
4.SONG FOR STRAYHORN
CARNEGIE HALL CONCERT Vol.2
1974年11月24日録音
GERRY MULLIGAN(bs) CHET BAKER(tp) ED BYME(tb) JOHN SCOFIELD(g) DANE SAMUELS(vib) BOB JAMES(ep) RON CARTER(b) HARVEY MASON(ds)
1.IT'S SANDAY AT THE BEACH
2.BERNIE'S TUNE
3.K-4 PACIFIC
4.THERE WILL NEVER BE ANOTHER YOU