TOMO's Art Office Philosophy

作曲家・平山智の哲学 / Tomo Hirayama, a composer's philosophy

生け贄、バッハ、マタイ受難曲

2023年04月08日 | TOMO's Art Office
生け贄はスケープゴートです。古代、あらゆる文明で生け贄の儀式が行われていました。その宗教的意味はまちまちですが、実用面での意義は一つ。神官のスケープゴートです。例えば神官が戦勝祈願に失敗したら、「ヤギの数が足りなかった」とか、「娘が処女ではなかった」とか難癖つけて責任逃れをするわけです。

不思議なことにこの風習は現代まで続いています。引責辞任とか、退職勧奨とか呼び方は変わっていますけど、要は権力者の保身の道具です。

僕は生け贄になるのも、神官になるのもゴメンで、可能ならこの不毛な風習をこの世から消し去りたい。でも、2000年以上続く人間の浅はかな思考を変えるのは難儀ですね。鋼の心を持つ同志が周りにいることが唯一の救いです。有り難し!

さて、本日はバッハ・コレギウム・ジャパンの「マタイ受難曲」を聴きに東京オペラシティへ。

「史上最大の生け贄の物語」を題材にした同曲は、音楽史上、最高傑作の一つであることは疑いようがない。
ルーマニアの哲学者シオランがバッハを「神の製造機」と評したのも無理なからぬことです。

鈴木雅明さんの解釈は以前より彫りが深くなり、ドラマ性を増していた。
あと、ソプラノの松井亜希さんは素晴らしいな。
日本のソリストは不自然に芝居がかった人が多いのだけど、彼女はちゃんと歌の中にドラマがあった。

僕も現代の讃美歌を書けるようにならないといけないな。

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