勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2017-03-07 05:00:00
中国軍、「戦意喪失」深刻な内部腐敗と退役軍人デモに揺れる
老兵は邪魔者扱いされる
中将の賄賂相場は5億円
昔も今も変わらないと言うべきか。中国軍の内部規律は緩みっぱなしである。
日清戦争当時、清国軍の上官は兵士の給料をピンハネや横領するなどして、士気がきわめて低かった。
人民解放軍に看板は付け変わったが、内実は変わらないようだ。
昇進には「賄賂」が必要とされている。こんな軍隊の兵士が、国のために命を賭けて戦うはずがない。
真の愛国心は金で買えないのだ。純粋に国を守る精神は、金では育たず自然発生的なものであろう。
中国では昨年10月、退役軍人約2万人が北京に集まり待遇改善のデモを行った。
この時は、政府との話し合いで解決したかに見えたが、実際は約束しただけで実行されなかったのだろう。
この2月、再度の待遇改善要求で退役軍人約2万人が集結した。当局は、厳しい警戒を続けており、強制解散などの措置に出ている。
老兵は邪魔者扱いされる
『大紀元』(2月27日付)は、次のように伝えた。
この記事で、中国当局が退役軍人は社会安定を脅かす者とし、取り締まりの対象と見なしている。
米国では、退役軍人は国家を守った勇士として尊敬され、厚遇されるのだ。これに比べて、中国の退役軍人は「厄介者扱い」である。
この冷遇によって、必ず中国社会の不安の種となって行くに違いない。中国政府は、大変な心得違いをしている。武器の扱いと団体行動に馴れている彼らだ。このグループを敵対視することは、中国共産党の波乱の芽になろう。
昨年10月、北京に集まった退役軍人のデモでは、手荒な扱いをしなかった。
関連省の省長が緊急に集められて協議するなど、デモ隊側に慎重に対応した。
今回は、デモ参加者を殴る行為まで行っており、「暴徒」扱いだ。
これは、恨みを買う行為であり、今後の先鋭化が懸念されるのだ。
<strong>中国が財政的にゆとりを欠いている結果、約束した待遇改善が不可能になったのだろう。ここまで財政は逼迫している。
中国政府は現在、発生している失業者対策で手一杯である。
ここ数年で、鉄鋼と石炭の労働者180万人を減らす計画だ。
昨年は約72万6000人を削減した。今年は50万人の削減を見込んでいる。
政府の尹蔚民・人事社会保障相が、3月1日記者会見で発表したものである。
もはや、退役軍人の待遇改善余力がなくなっているのだろう。
(1)「中国の20以上の省から上京した退役軍人は2月22日から24日まで、当局に対して待遇改善政策の実施を訴え大規模なデモを行った。
一人の退役軍人は大紀元に対して、3月の全国人民代表大会と全国人民政治協商会議(両会)が開催されるまで、各地の元軍人は今後数回分けて、主要政府機関前でデモを続けていくと話した」。
退役軍人は、今秋の両会(人民代表大会と政治協商会議)までデモを続けるという。
今回は今年最初のデモであるから、断固たる取り締まり姿勢を見せているのだろう。それにしても、警備はやり過ぎである。
共産党軍事革命の先兵に対して、暴徒扱いするとは言語道断である。今後、必ずこのしっぺ返しを受けるだろう。
(2)「米自由アジアオ放送(RFA)によると、現地時間22日に約1万人の退役軍人は、北京市の中国共産党中央紀律委員会(中紀委)ビル前で集まり迷彩服を着用し整列しながら、当局が約束した待遇改善政策を着実に実施するようと陳情した。
23日早朝に北京警察当局に鎮圧された。その後、退役軍人らが交流サイト(SNS)を通じて、全国各地の元軍人に応援を呼び掛け、24日に各地から駆け付けた一部の元軍人は天安門広場で再びデモを行ったが、また鎮圧された」。
中国当局が、約束した待遇改善策を行わないのは約束違反である。
非は当局にあるにもかかわらず、デモ隊を鎮圧するとは政府への信頼を失わせる行為だ。
「ない袖は振れない」という事態に陥っているのだろう。一方では、際限ない軍拡を続けている。
夜間飛行もできないステルス型戦闘機を、空母「遼寧」に艦載機として並べているのだ。
戦闘能力はゼロ同然の代物である。さらに後、2~3隻の空母を建造するという。財政逼迫の折り、なんともチグハグナ話ではないか。
(3)「湖北省襄陽市出身の退役軍人の王さんは大紀元に対して、『今回3日間は2万人以上の退役軍人が陳情に参加した。
彼らは2つのグループに分けて北京に入った。両会が開催するまで、第3グループ、第4グループ、第5グループと次々と北京に入るだろう』と話した。
中国当局は、退役軍人は社会安定を脅かす者とし、取り締まりの対象と見なしているため、各地の警察当局は地元の退役軍人に対して監視などを強化している」。
(4)「RFAの報道によると、22日から24日のデモに参加した退役軍人の大多数はすでに地元に強制送還された。
また一部は北京市にある地方からの陳情者を拘留する施設に送られた。
当局が鎮圧する際、元軍人らを殴打し暴行を加えた。また、当局は北京火車駅で、地方から上京した迷彩服を着る人に対して身分証検査を強化した」。
つくづく思うことは、中国政府が長期的な戦略に基づいて行政をやっていないことである。
退役軍人が大量に出れば、それに対する待遇がどれだけ必要かは、すぐに計算できるはずだ。
仮に計算はしていても、中国景気の下支え目的でインフラ投資に資金を回わさざるを得ない事情でもあろう。
メンツのために経済成長率を下支えするからだ。
退役軍人向けの予算は、橋や鉄道の建設予算に回されているにちがいない。
こんな「火の車財政」でも、大言壮語(ほら吹き)だけは忘れずラッパを吹き続けている。
退役軍人が不満を抑えきれないのは、中国軍トップが相変わらずの賄賂漬けであるからだ。
人間、ここまで強欲になれるだろうかと思うほど、巨額の賄賂を受け取っているから呆れる。
中国人固有の強欲さがもたらした賄賂話である。
中将の賄賂相場は5億円
『大紀元』(2月10日付)は、「中国軍の深刻な腐敗、戦闘力はゼロ」と題する記事を掲載した。
この記事を読むと、中国社会が骨の髄まで腐りきっているという実感に襲われる。
官界のような昇進コースのあるところでは、全てが「金次第」である。
地獄の沙汰も金次第というが、中国は「金が万能」の社会である。どんなに偉そうなことを言っても、彼らのお里は知れているのだ。
(5)「近年、中国軍高官が相次いで腐敗問題で失脚したことで、国内外に軍内部の深刻な贈賄や収賄が知れ渡ることとなった。
中国問題専門家はこのほど、高官は武器密輸などの方法で、贈賄のために横領していると指摘した。
米VOAが2月3日に報道したもの。
VOAは、中国軍高層部の人事異動について、専門家によるディスカッションの内容をまとめた記事で、一部の読者から『(収賄などで無期懲役を言い渡された元軍トップ)郭伯雄氏らが莫大な金額の賄賂を受け取ってきた。
軍内部では官職売り、または官職買いにつき、明確な相場がある。
では贈賄した人たちはその後、どのように資金回収をしているのか』との質問があったという」。
中国は古来、官職売り、または官職買いが一般的に行われてきた社会である。
その慣行が、人民解放軍でも踏襲されたに過ぎない。人民解放軍になって突然、官職の売買が行われたものでないのだ。
これほど、金銭にこだわった理由は何か。人間の価値判断基準が、財産の多寡にあるという特異な社会構造である。
金持ちは偉い、貧者は下劣という一律の価値判断が成立している。
ここでは精神性の高さが問われず、動物的な振る舞いで、獲物の多寡だけを競う一面を持っている。
世界広しといえど、財産の多さをひけらかす民族は、漢族とエスキモーだけと指摘されている。
この裏には、経済倫理が存在しないことも理由である。
司馬遷が、『貨殖列伝』も書いたが、存命中に出版せず、死後に刊行された書物である。
当時の「農本国家」では、商工業が禁圧されていた。その中で、『貨殖列伝』という高潔な商人の生涯を書くことは憚れていた。
今なお、司馬遷はこの著書ゆえに、低評価されることもある。
結局、中国には経済倫理が存在しなかったことが、致命的なまでに金銭へこだわる社会をつくり出したのだ。
(6)「中国軍に在籍経験のある中国共産党の歴史に詳しい高文謙氏(注:『周恩来秘録』の著者)は、
『中国共産党政権がいわゆる改革開放政策を打ち出した以降、軍は武器密輸、軍馬場(軍用の馬を飼育し海外に輸出する。
また馬の飼育牧場をキャンプ地や観光地として民間人に開放する)の運営、様々な業種の大型国有企業との連携でビジネスを行って、金を集めてきた』と回答した。
『贈賄を受けた人がどのように資金回収したのか。
つまり軍内部では昇進と出世のため、
一番下の兵士から排長(小隊長)幹部へ、
その上の連長(中隊長)、営長(大隊長)、団長(連隊長)、旅長、師長クラスへと、
下から上の各階級で贈賄を行っている』と高氏は説明した。
より高い階級に昇進できれば、その権力と地位を利用して金儲けできて、また下の階級からも貢がれるため、兵士から将校まで皆贈賄や腐敗に奮走するという」。
中国では、国有企業の民営化移行当時、共産党幹部はあらゆる機会を利用して私腹を肥やした。
人民解放軍内部でも、同様のことが行われたのだ。たとえば、軍用の馬を飼育し海外に輸出する。また馬の飼育牧場をキャンプ地や観光地として民間人に開放するなどだ。
2000年前後の中国は、国有財産を私物化することが派手に行われていた。
『周恩来秘録』の著者である高文謙氏は、中国の恥部を知り抜いている。
その髙氏が証言するのだから間違いない。
人民解放軍は、「下から上の各階級に向けて贈賄を行いながら」出世街道を進むのだ。
頂点に立ったとき、それまでの贈賄に使った金品以上の物を収賄によって「回収」する。
これが、中国における贈収賄のメカニズムであって、必然的に自己増殖するようになっている。
(7)「中国政治評論家の陳破空氏は、『兵士召集から腐敗が始まっている。
男子が軍に入隊したいなら2万~5万元(約34万~85万円)、女子は5~10万元(85万~170万円)との相場で、
軍幹部に賄賂を渡さなければならない』
『軍内部の腐敗は至る所でみられる。国境防衛部隊なら、武器を密輸する。
なかでは一部の武器を東トルキスタン解放組織(ETLO)まで渡っていた。
また森林や鉱山など資源を守る部隊も、その森林や鉱山資源を勝手に他人や企業に売ることで金を儲けてきた』と示した」。
人民解放軍では、入隊時から賄賂が仲介役を果たす。
男の兵士は約34万~85万円、女性は85万~170万円が相場という。
なぜ、女性兵士の賄賂相場が男性兵士よりも高いのか。
女性は兵士の数が少なく「狭き門」であろうか。
入隊後は、部隊内で良き結婚相手が見つかるという「チャンス料」も入っているのかも知れない。
ちなみに、習近平氏夫人は、人民解放軍の現役幹部である。
(8)「陳氏は、次のようにも語った。『軍内ではこのような噂が流れている。
(収賄の罪で失脚し病死した元軍ナンバー2の)徐才厚が亡くなる前に、
太子党の劉亜洲氏(現空軍上将)と劉源氏(元総後勤部政治委員、上将。
15年に軍を退役)を除いた
ほとんどの将校から賄賂を受け取ったと話したようだ』
『つまり、中国共産党内で昇進や出世したければ、賄賂を行わなければならない。軍内の腐敗は非常に深刻だ』。
また、兵士や将校らは出世、賄賂、金儲けばかり考えているのだから、『中国人民解放軍の戦闘力は全くゼロに等しい』と指摘した」。
中国政治評論家の陳氏によれば、収賄の罪で失脚し病死した元軍ナンバー2の徐才厚が亡くなる前の発言で、ほとんどの人から賄賂を受け取ったという。
中国共産党内で昇進や出世したければ、賄賂を行わなければならないという不文律があるのだ。
軍内の腐敗は非常に深刻であり、日々の戦闘訓練よりも立身出世ばかりを考えている軍隊だ。
これでは、戦闘能力が高くなるはずがない。
習氏が「反腐敗闘争」に全土を取り組んでいる。習時代が終われば元の木阿弥になろう。賄賂は、中国文化であるからいかんともし難いのだ。
(9)「中国国内メディアの報道によると、14年3月15日に徐才厚が当局に身柄を拘束された後、
家宅調査に当たった政府関係者らは北京市内にある徐の豪邸の地下室から、膨大な量の現金、金延べ棒、豪華な宝石装飾品、骨董書画などを発見した。
十数台の軍用トラックを使ってやっと全部運び出したという。
一方、15年に失脚した郭伯雄は軍内の将校に対して官職売りを行っていた。
少将に昇進したいなら500万~1000万元(約8500万~1億7000万円)。中将に1000万~3000万元(1億7000万~5億1000万円)などの相場を付けたと言われている」。
このパラグラフでは驚くべき事実の「賄賂相場」が書かれている。
少将昇進は、約8500万~1億7000万円。
中将昇進は、約1億7000万~5億1000万円。
15年に失脚した郭伯雄は、軍内の将校に対して上記のような相場を提示して、官職売りを行っていたという。
有能な指揮官が昇進するのでなく、金の力であったとは開いた口がふさがらない。
こんな指揮官が引き連れる人民解放軍が、敵と対峙したとき勝てるかどうかは疑問である。
前記の賄賂を払って昇進しても「採算」は合うのか。
今度は、自らが高い相場を提示して官職売りするから、立派に元が獲れるに違いない。
この腐敗しきった人民解放軍が、世界覇権を狙って米軍と対峙することなど、真面目に考えられるだろうか。
習氏が終身、国家主席で止まり、「反腐敗闘争」を仕掛け続けない限り無理だろう。賄賂は、中国人の血となり肉となっている遺伝子である。
(2017年3月7日)
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2017-03-07 05:00:00
中国軍、「戦意喪失」深刻な内部腐敗と退役軍人デモに揺れる
老兵は邪魔者扱いされる
中将の賄賂相場は5億円
昔も今も変わらないと言うべきか。中国軍の内部規律は緩みっぱなしである。
日清戦争当時、清国軍の上官は兵士の給料をピンハネや横領するなどして、士気がきわめて低かった。
人民解放軍に看板は付け変わったが、内実は変わらないようだ。
昇進には「賄賂」が必要とされている。こんな軍隊の兵士が、国のために命を賭けて戦うはずがない。
真の愛国心は金で買えないのだ。純粋に国を守る精神は、金では育たず自然発生的なものであろう。
中国では昨年10月、退役軍人約2万人が北京に集まり待遇改善のデモを行った。
この時は、政府との話し合いで解決したかに見えたが、実際は約束しただけで実行されなかったのだろう。
この2月、再度の待遇改善要求で退役軍人約2万人が集結した。当局は、厳しい警戒を続けており、強制解散などの措置に出ている。
老兵は邪魔者扱いされる
『大紀元』(2月27日付)は、次のように伝えた。
この記事で、中国当局が退役軍人は社会安定を脅かす者とし、取り締まりの対象と見なしている。
米国では、退役軍人は国家を守った勇士として尊敬され、厚遇されるのだ。これに比べて、中国の退役軍人は「厄介者扱い」である。
この冷遇によって、必ず中国社会の不安の種となって行くに違いない。中国政府は、大変な心得違いをしている。武器の扱いと団体行動に馴れている彼らだ。このグループを敵対視することは、中国共産党の波乱の芽になろう。
昨年10月、北京に集まった退役軍人のデモでは、手荒な扱いをしなかった。
関連省の省長が緊急に集められて協議するなど、デモ隊側に慎重に対応した。
今回は、デモ参加者を殴る行為まで行っており、「暴徒」扱いだ。
これは、恨みを買う行為であり、今後の先鋭化が懸念されるのだ。
<strong>中国が財政的にゆとりを欠いている結果、約束した待遇改善が不可能になったのだろう。ここまで財政は逼迫している。
中国政府は現在、発生している失業者対策で手一杯である。
ここ数年で、鉄鋼と石炭の労働者180万人を減らす計画だ。
昨年は約72万6000人を削減した。今年は50万人の削減を見込んでいる。
政府の尹蔚民・人事社会保障相が、3月1日記者会見で発表したものである。
もはや、退役軍人の待遇改善余力がなくなっているのだろう。
(1)「中国の20以上の省から上京した退役軍人は2月22日から24日まで、当局に対して待遇改善政策の実施を訴え大規模なデモを行った。
一人の退役軍人は大紀元に対して、3月の全国人民代表大会と全国人民政治協商会議(両会)が開催されるまで、各地の元軍人は今後数回分けて、主要政府機関前でデモを続けていくと話した」。
退役軍人は、今秋の両会(人民代表大会と政治協商会議)までデモを続けるという。
今回は今年最初のデモであるから、断固たる取り締まり姿勢を見せているのだろう。それにしても、警備はやり過ぎである。
共産党軍事革命の先兵に対して、暴徒扱いするとは言語道断である。今後、必ずこのしっぺ返しを受けるだろう。
(2)「米自由アジアオ放送(RFA)によると、現地時間22日に約1万人の退役軍人は、北京市の中国共産党中央紀律委員会(中紀委)ビル前で集まり迷彩服を着用し整列しながら、当局が約束した待遇改善政策を着実に実施するようと陳情した。
23日早朝に北京警察当局に鎮圧された。その後、退役軍人らが交流サイト(SNS)を通じて、全国各地の元軍人に応援を呼び掛け、24日に各地から駆け付けた一部の元軍人は天安門広場で再びデモを行ったが、また鎮圧された」。
中国当局が、約束した待遇改善策を行わないのは約束違反である。
非は当局にあるにもかかわらず、デモ隊を鎮圧するとは政府への信頼を失わせる行為だ。
「ない袖は振れない」という事態に陥っているのだろう。一方では、際限ない軍拡を続けている。
夜間飛行もできないステルス型戦闘機を、空母「遼寧」に艦載機として並べているのだ。
戦闘能力はゼロ同然の代物である。さらに後、2~3隻の空母を建造するという。財政逼迫の折り、なんともチグハグナ話ではないか。
(3)「湖北省襄陽市出身の退役軍人の王さんは大紀元に対して、『今回3日間は2万人以上の退役軍人が陳情に参加した。
彼らは2つのグループに分けて北京に入った。両会が開催するまで、第3グループ、第4グループ、第5グループと次々と北京に入るだろう』と話した。
中国当局は、退役軍人は社会安定を脅かす者とし、取り締まりの対象と見なしているため、各地の警察当局は地元の退役軍人に対して監視などを強化している」。
(4)「RFAの報道によると、22日から24日のデモに参加した退役軍人の大多数はすでに地元に強制送還された。
また一部は北京市にある地方からの陳情者を拘留する施設に送られた。
当局が鎮圧する際、元軍人らを殴打し暴行を加えた。また、当局は北京火車駅で、地方から上京した迷彩服を着る人に対して身分証検査を強化した」。
つくづく思うことは、中国政府が長期的な戦略に基づいて行政をやっていないことである。
退役軍人が大量に出れば、それに対する待遇がどれだけ必要かは、すぐに計算できるはずだ。
仮に計算はしていても、中国景気の下支え目的でインフラ投資に資金を回わさざるを得ない事情でもあろう。
メンツのために経済成長率を下支えするからだ。
退役軍人向けの予算は、橋や鉄道の建設予算に回されているにちがいない。
こんな「火の車財政」でも、大言壮語(ほら吹き)だけは忘れずラッパを吹き続けている。
退役軍人が不満を抑えきれないのは、中国軍トップが相変わらずの賄賂漬けであるからだ。
人間、ここまで強欲になれるだろうかと思うほど、巨額の賄賂を受け取っているから呆れる。
中国人固有の強欲さがもたらした賄賂話である。
中将の賄賂相場は5億円
『大紀元』(2月10日付)は、「中国軍の深刻な腐敗、戦闘力はゼロ」と題する記事を掲載した。
この記事を読むと、中国社会が骨の髄まで腐りきっているという実感に襲われる。
官界のような昇進コースのあるところでは、全てが「金次第」である。
地獄の沙汰も金次第というが、中国は「金が万能」の社会である。どんなに偉そうなことを言っても、彼らのお里は知れているのだ。
(5)「近年、中国軍高官が相次いで腐敗問題で失脚したことで、国内外に軍内部の深刻な贈賄や収賄が知れ渡ることとなった。
中国問題専門家はこのほど、高官は武器密輸などの方法で、贈賄のために横領していると指摘した。
米VOAが2月3日に報道したもの。
VOAは、中国軍高層部の人事異動について、専門家によるディスカッションの内容をまとめた記事で、一部の読者から『(収賄などで無期懲役を言い渡された元軍トップ)郭伯雄氏らが莫大な金額の賄賂を受け取ってきた。
軍内部では官職売り、または官職買いにつき、明確な相場がある。
では贈賄した人たちはその後、どのように資金回収をしているのか』との質問があったという」。
中国は古来、官職売り、または官職買いが一般的に行われてきた社会である。
その慣行が、人民解放軍でも踏襲されたに過ぎない。人民解放軍になって突然、官職の売買が行われたものでないのだ。
これほど、金銭にこだわった理由は何か。人間の価値判断基準が、財産の多寡にあるという特異な社会構造である。
金持ちは偉い、貧者は下劣という一律の価値判断が成立している。
ここでは精神性の高さが問われず、動物的な振る舞いで、獲物の多寡だけを競う一面を持っている。
世界広しといえど、財産の多さをひけらかす民族は、漢族とエスキモーだけと指摘されている。
この裏には、経済倫理が存在しないことも理由である。
司馬遷が、『貨殖列伝』も書いたが、存命中に出版せず、死後に刊行された書物である。
当時の「農本国家」では、商工業が禁圧されていた。その中で、『貨殖列伝』という高潔な商人の生涯を書くことは憚れていた。
今なお、司馬遷はこの著書ゆえに、低評価されることもある。
結局、中国には経済倫理が存在しなかったことが、致命的なまでに金銭へこだわる社会をつくり出したのだ。
(6)「中国軍に在籍経験のある中国共産党の歴史に詳しい高文謙氏(注:『周恩来秘録』の著者)は、
『中国共産党政権がいわゆる改革開放政策を打ち出した以降、軍は武器密輸、軍馬場(軍用の馬を飼育し海外に輸出する。
また馬の飼育牧場をキャンプ地や観光地として民間人に開放する)の運営、様々な業種の大型国有企業との連携でビジネスを行って、金を集めてきた』と回答した。
『贈賄を受けた人がどのように資金回収したのか。
つまり軍内部では昇進と出世のため、
一番下の兵士から排長(小隊長)幹部へ、
その上の連長(中隊長)、営長(大隊長)、団長(連隊長)、旅長、師長クラスへと、
下から上の各階級で贈賄を行っている』と高氏は説明した。
より高い階級に昇進できれば、その権力と地位を利用して金儲けできて、また下の階級からも貢がれるため、兵士から将校まで皆贈賄や腐敗に奮走するという」。
中国では、国有企業の民営化移行当時、共産党幹部はあらゆる機会を利用して私腹を肥やした。
人民解放軍内部でも、同様のことが行われたのだ。たとえば、軍用の馬を飼育し海外に輸出する。また馬の飼育牧場をキャンプ地や観光地として民間人に開放するなどだ。
2000年前後の中国は、国有財産を私物化することが派手に行われていた。
『周恩来秘録』の著者である高文謙氏は、中国の恥部を知り抜いている。
その髙氏が証言するのだから間違いない。
人民解放軍は、「下から上の各階級に向けて贈賄を行いながら」出世街道を進むのだ。
頂点に立ったとき、それまでの贈賄に使った金品以上の物を収賄によって「回収」する。
これが、中国における贈収賄のメカニズムであって、必然的に自己増殖するようになっている。
(7)「中国政治評論家の陳破空氏は、『兵士召集から腐敗が始まっている。
男子が軍に入隊したいなら2万~5万元(約34万~85万円)、女子は5~10万元(85万~170万円)との相場で、
軍幹部に賄賂を渡さなければならない』
『軍内部の腐敗は至る所でみられる。国境防衛部隊なら、武器を密輸する。
なかでは一部の武器を東トルキスタン解放組織(ETLO)まで渡っていた。
また森林や鉱山など資源を守る部隊も、その森林や鉱山資源を勝手に他人や企業に売ることで金を儲けてきた』と示した」。
人民解放軍では、入隊時から賄賂が仲介役を果たす。
男の兵士は約34万~85万円、女性は85万~170万円が相場という。
なぜ、女性兵士の賄賂相場が男性兵士よりも高いのか。
女性は兵士の数が少なく「狭き門」であろうか。
入隊後は、部隊内で良き結婚相手が見つかるという「チャンス料」も入っているのかも知れない。
ちなみに、習近平氏夫人は、人民解放軍の現役幹部である。
(8)「陳氏は、次のようにも語った。『軍内ではこのような噂が流れている。
(収賄の罪で失脚し病死した元軍ナンバー2の)徐才厚が亡くなる前に、
太子党の劉亜洲氏(現空軍上将)と劉源氏(元総後勤部政治委員、上将。
15年に軍を退役)を除いた
ほとんどの将校から賄賂を受け取ったと話したようだ』
『つまり、中国共産党内で昇進や出世したければ、賄賂を行わなければならない。軍内の腐敗は非常に深刻だ』。
また、兵士や将校らは出世、賄賂、金儲けばかり考えているのだから、『中国人民解放軍の戦闘力は全くゼロに等しい』と指摘した」。
中国政治評論家の陳氏によれば、収賄の罪で失脚し病死した元軍ナンバー2の徐才厚が亡くなる前の発言で、ほとんどの人から賄賂を受け取ったという。
中国共産党内で昇進や出世したければ、賄賂を行わなければならないという不文律があるのだ。
軍内の腐敗は非常に深刻であり、日々の戦闘訓練よりも立身出世ばかりを考えている軍隊だ。
これでは、戦闘能力が高くなるはずがない。
習氏が「反腐敗闘争」に全土を取り組んでいる。習時代が終われば元の木阿弥になろう。賄賂は、中国文化であるからいかんともし難いのだ。
(9)「中国国内メディアの報道によると、14年3月15日に徐才厚が当局に身柄を拘束された後、
家宅調査に当たった政府関係者らは北京市内にある徐の豪邸の地下室から、膨大な量の現金、金延べ棒、豪華な宝石装飾品、骨董書画などを発見した。
十数台の軍用トラックを使ってやっと全部運び出したという。
一方、15年に失脚した郭伯雄は軍内の将校に対して官職売りを行っていた。
少将に昇進したいなら500万~1000万元(約8500万~1億7000万円)。中将に1000万~3000万元(1億7000万~5億1000万円)などの相場を付けたと言われている」。
このパラグラフでは驚くべき事実の「賄賂相場」が書かれている。
少将昇進は、約8500万~1億7000万円。
中将昇進は、約1億7000万~5億1000万円。
15年に失脚した郭伯雄は、軍内の将校に対して上記のような相場を提示して、官職売りを行っていたという。
有能な指揮官が昇進するのでなく、金の力であったとは開いた口がふさがらない。
こんな指揮官が引き連れる人民解放軍が、敵と対峙したとき勝てるかどうかは疑問である。
前記の賄賂を払って昇進しても「採算」は合うのか。
今度は、自らが高い相場を提示して官職売りするから、立派に元が獲れるに違いない。
この腐敗しきった人民解放軍が、世界覇権を狙って米軍と対峙することなど、真面目に考えられるだろうか。
習氏が終身、国家主席で止まり、「反腐敗闘争」を仕掛け続けない限り無理だろう。賄賂は、中国人の血となり肉となっている遺伝子である。
(2017年3月7日)