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朴槿恵氏はなぜ罷免されたのか

2017-06-24 21:56:57 | 日記
朴槿恵氏はなぜ罷免されたのか

一部省略

大統領弾劾の普遍性と特殊性を考える

澤田克己 (毎日新聞記者、前ソウル支局長)


憲法秩序を守るために必要だった「弾劾」

 韓国の憲法裁判所は、財閥から出資させた財団を通じて崔順実(チェ・スンシル)被告に不当な利益を得させるために大統領の職権が乱用されたことなどを認定した。

さらに、朴氏が問題の発覚後も疑惑を否認し続ける一方で、真相究明に協力すると繰り返しながら実際には捜査に非協力的だったことを批判。

そのうえで、「被請求人(朴氏)による一連の言動からは、法に反する行為が繰り返されないようにする憲法守護の意思を読み取れない」と断じた。

 そして、「被請求人の法に反する行為が憲法秩序に与える否定的影響と波及効果は重大であることから、被請求人を罷免することによって得られる憲法守護の利益は圧倒的に大きい」と結論づけた。

 国会は弾劾理由としてセウォル号事故対応での職務怠慢や公務員人事権の乱用なども挙げたが、憲法裁によって退けられた。

同じく国会が訴追理由とし、特別検察官も立件したサムスンがらみの贈収賄事件については、憲法裁は判断を示さなかった。

結果として、必要最低限の事件について違法性を認めたうえで、疑惑発覚後の朴氏の対応を重視したといえるだろう。

 憲法秩序を守るという観点から見れば、大統領を職にとどめるより辞めさせた方がいいという判断である。

世論は圧倒的に弾劾賛成であり、昨年秋以降の退陣要求集会の熱気などを見れば、弾劾請求が棄却されたら大混乱に陥ることが確実だった。そういったことまでを考えれば、事態収拾には弾劾を認める以外の選択肢はなかったとも言えそうだ。

事態を深刻化させた崔被告のイメージ

 崔被告を巡る事件の実態はこれから刑事裁判で解明されることになる。

ただ、事件の態様や規模としては特別に奇異なものではない。

大統領の関与がどれだけあったかにもよるが、それでも現時点で受ける印象は「過去の政権のスキャンダルと本質的に大差ないのではないか」というものである。特に、韓国世論が沸騰した契機である「演説草稿文を事前に見せていた」というのは微罪にしかならない。

 だが、世論の反発は尋常ではなかった。

これはやはり、崔被告が伝統的支配階層のイメージから掛け離れていたことに最大の理由があるとしか考えられない。

儒教支配の長かった朝鮮半島の社会においては学問を修めた文民エリートによる統治が当然視されている。

それなのに、新興宗教の教祖を父に持ち、あやしげなイメージをまとった崔被告が大統領を背後から操っていたという。

それが、韓国社会に大きな衝撃を与え、結果的に大統領弾劾という悲劇につながったように思われる。

韓国の朴槿恵大統領が罷免された。

日本の感覚では不思議な面の多かったプロセスではあるものの、弾劾は憲法に定められた手続きである。

これからは大統領選や次期政権の行方に焦点が移ることになるが、その前に弾劾が認められた背景を振り返っておきたい。

 私は今まで韓国司法に対して批判的な記事も書いてきた。

今回の事態でも、韓国の検察や特別検察官による一連の捜査には無理が目立った。

今後の公判では、無罪判決が相次ぐ事態もありうるだろう。ただし、弾劾審理については事情が少し違う。「司法の暴走」や「世論への迎合」と批判するのは簡単ではない。

 弾劾制度は、14世紀の英国に起源を持つ。

国王の任命した大臣を議会が罷免するために始まった。

現代においても、弾劾というのは「公職を剥奪するか否か」を問うものにすぎず、刑事罰に問えるかどうかは関係ない。

韓国の憲法裁判所も今回の決定文で「弾劾の決定は対象者を公職から罷免することであり、刑事上の責任を問うものではない」と明示した。

 これは各国共通の原理だ。

米国の正副大統領などに対する弾劾について定めた合衆国憲法第2条第4節は訴追事由を「反逆罪、収賄罪その他の重大な罪または軽罪」としている。

「軽罪」というのは原文では「Misdemeanors」である。辞書で引くと、硬い表現としての「不行跡、不品行」と法律用語としての「軽犯罪」となっている。

「弾劾」はそもそも政治的だ

 昨年罷免されたブラジルのルセフ大統領にしても、下院による弾劾訴追の理由は政府予算の赤字を隠すために不正な会計処理をしたというものだった。


ルセフ氏は慣例に従っただけだと主張したが、経済の急激な落ち込みと与党幹部の多くが関与した前政権時代の大型汚職事件が発覚したことで国民の怒りが爆発。

連立与党から離反者が相次ぎ、上院の投票で弾劾が決まった。

 国民は熱狂して喜んだが、こうした会計処理は実際に前政権まで普通に行われてきたことであり、汚職事件に関与したのは弾劾を主導したテメル副大統領(現大統領)の側だと指摘されていた。

ブラジル国内では、政権を取ることで捜査にストップをかける狙いがテメル氏側にあったのではないかという見方も出ているという。

ちなみにルセフ氏はその後、刑事訴追されたりしていない。

 米国やブラジルでは、下院が弾劾発議し、上院が弾劾審理を行う。

どちらも政治家の投票で決まるのだから政治的決定であることは明白だ。

韓国は一院制だから憲法裁判所が弾劾審理を行うことになっているけれど、弾劾という制度の性格が韓国だけ違うわけではない。

憲法裁判所での審理で弾劾が認められるためには「違法性」だけでは足りず、判断基準のあいまいな「重大な違法性」が必要とされているのが弾劾の特徴をよく示している。

クーデターとは違う合法的な手続きだが…

 韓国では初代大統領である李承晩が不正選挙に怒った市民や学生たちによる大規模デモに抗しきれなくなって退陣したり、朴氏の父である朴正煕が軍事クーデターで権力の座に就いたり、ということがあった。

それに比べると憲法に明示された手続きで弾劾が行われたことは、今年でちょうど30年となる民主化の成果だと言える。

韓国で「民主主義の勝利」という言葉が語られるのは、こうした意味だろう。

 ただし、これをもって「民主主義の勝利」などと持ち上げるのも、実際にはおかしな話である。

理由はどうであれ、自分たちの手で選んだ大統領を任期途中で放逐せざるをえなくなったのは不幸なことであり、とても誇れるものではないはずだ。

朴氏を訴追した国会側の代表者として法廷に臨んだ権性東(クォン・ソンドン)議員=国会法制司法委員会委員長=は宣告公判を受けて、「今回の事件は勝者も、敗者もない。

私たち全てが勝利し、敗北した」と語ったという。こうした落ち着いたコメントが当事者から出てきていることに救いを感じる。

選挙集会で叫ばれた「朴正煕!」

 5年前の大統領選を取材していた時、朴槿恵氏の選挙集会に集まった高齢者が「朴正煕!」と叫んでいるのを見て驚かされた。

朴正煕は民主化運動を弾圧した独裁者だが、一般の国民にとっては高度経済成長を成し遂げてくれた恩人でもある。

朝鮮戦争直後に世界最貧国レベルだった韓国に現在の繁栄をもたらした点で、朴正煕の功績は極めて大きい。

私の友人は数年前、70代の父親に「いまの韓国の発展ぶりをどう思うか」と聞いたという。その時に返ってきた答えは「夢みたいだ」だったそうだ。

 貧しいけれど希望があった朴正煕時代は、日本で言えば「ALWAYS三丁目の夕日」で描かれた時代のようなイメージである。

朴正煕が殺害されて突然終わりを迎えただけに、きれいな記憶ばかりが思い出されるという面もあるだろう。

その時代を生きた多くの人は、娘に朴正煕を重ね、熱狂的な支持を送ったのである。

 一方で、豊かな生活を享受する現代の若者たちは閉塞感にさいなまれている。

1997年の通貨危機を脱するために始まった新自由主義的な経済政策の下で常に競争を強いられ、格差は拡大する一方だ。

正社員と非正規雇用の待遇格差は日本とは比べものにならないほど大きい。

それに正社員になれたとしても、何年も働けるわけではない。

社内での激しい競争にさらされ、大手企業での平均勤続年数は12年にすぎない(韓国の就職情報サイト「サラムイン」が昨年発表した売上高上位100社調査)。

社会の分断を深刻化させた強権政治

 朴槿恵氏も5年前の大統領選では格差や福祉問題を前面に打ち出し、分断された社会の再統合を訴えた。

だが、実際の政権運営は父親譲りの強権ぶりで、反対派の声には一切耳を傾けようとしなかった。

反対勢力は力で押しつぶし、側近でも意に沿わない言動があれば容赦なく切り捨てた。

韓国では朴正煕が独裁色を強めた70年代のことを「維新時代」と呼ぶのだが、朴槿恵政権下では「維新時代でもあるまいし」という言葉がよく聞かれた。

 一方で、経済政策などは全くといっていいほど実績を残せなかった。

政策を立案しても、野党の抵抗で実現できなかったのである。

韓国の大統領は「帝王的」とも称されるが、それでも政策実現のためには国会の協力が必須となる。

朴氏のスタイルで野党から協力を得るなど、とうてい不可能なことだった。

父親の時代とは環境が違うのに、朴氏は父の影を追うことしかできなかった。

 結局、もともと深刻だった社会の分断は朴政権下でより深刻化した。

朴氏に対する逆風が猛烈なものとなった背景には、こうした政権運営に対する怒りも大きかった。

疑惑が発覚した際にきちんと謝罪し、説明を尽くそうとする態度を見せていれば、こんなことにはならなかったのではないか。

そう言われることもあるが、朴槿恵という人物にそうした対応を求めることは無理だったのだろう。

韓国、「無原則」社会的合意で雇用増ねらう「干渉主義政治」

2017-06-24 11:26:54 | 日記
勝又壽良の経済時評

日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。


2017-06-21 05:00:00

韓国、「無原則」社会的合意で雇用増ねらう「干渉主義政治」

「社会的大妥協」という強制

「86世代」が実権握り干渉

一部省略



韓国では若者の失業率が深刻である。

4月の韓国の青年失業率(15~29歳)が、4月としては過去最高の11.2%まで上昇した。


韓国にとって、失業問題は早急に解決策を探らなければならないが、文政権は市場経済の活性化に伴う雇用増でなく、腕力で無理矢理に雇用を増やそうという「干渉主義政治」が前面に出ている。

米国のトランプ大統領が、保護主義で雇用を増やそうとする拙速主義に似通った面がある。雇用問題は、こうした「短期決戦」で解決できないものである。韓国の文大統領には、その認識が希薄だ。


「社会的大妥協」という強制

『ハンギョレ』(6月11日付)は、「文在寅大統領、働き口解決法として『社会的大妥協』を提示」と題して次のように伝えた。


文氏の選挙公約では、次のような点が上がっていた。

(1)公的機関で81万人、民間で50万人の雇用創出(潜在失業者を除く実数で135万人であるから、これを吸収する人数)

(2)最低賃金を時給1万ウォンに引き上げる(労組の要求通り。現在は約7000ウォンであるから20年までに実現するためには年率15%の引き上げが必要)

(3)4大財閥を中心とする財閥改革(労組の経営への参加)などを掲げた。一言で言えば、韓国経済を成長させ、その果実で分配を改善するのではなく、現在のパイの中で分配を変えるということであろう。

経済関係の公約でも、雇用・賃金問題が1.2位を占めており, 文氏の関心の高さを示している。

ただ、これらの目標をどのように実現するか、その手法がきょうのブログで明からかにされている。

ただ、政治権力で直接、雇用問題や賃上げに介入することが、副作用をもたらさないか。

市場経済を原則とする資本主義経済ルールを歪めないか。そういう懸念が生まれるのだ。これは、韓国経済の屋台骨に大きく響く問題である。

文大統領の任期は5年である。政治的に失敗すれば、次期大統領は野党にその座が渡る。

問題は、その間に韓国経済の土台はガタガタになる危険性が高まることだ。その段階になれば、もはや「反日」を叫ぶ気力もなくなるのでないか。完全に韓国経済の沈没である。その船長が、文在寅大統領になりかねないのだ。

(1)「文在寅大統領が、『経済民主主義実現のための社会的大妥協』を新政府の国政課題の前面に掲げた。

「経済民主主義実現のための社会的大妥協」という言葉には、甘美なささやきがある。

社会全体が、少しずつ譲り合って妥協すれば、雇用も増えるし賃上げも可能になる、という「ささやき」である。

確かに、短期的には「社会的大妥協」は可能としても、経済的に合理的な判断に基づく意思決定でなければ、一過性に終わるであろう。

韓国メディアが現在、アベノミクスを評価している裏には、一過性でなく継続性が見られることを認めているに違いない。

「経済主導者の譲歩と妥協、連帯と配慮」とは、具体的に「財界・労働界・市民社会と政府の“大妥協”が先決されなければならないというのが大統領の確固たる哲学」と指摘している。

これは、1980年代前後に欧米で広く議論された「所得政策」の逆バージョンである。

文政権は、賃上げして雇用を増やすことをやろうというのだから逆「所得政策」であろう。

文氏の逆「所得政策」も成功の可能性は小さいだろう。副作用が大きくなるにちがいない。「イノベーション」能力の減退をもたらすからだ。

(2)「文大統領は、今の労使政委よりは大統領が直接委員長を務める『雇用委員会』にこのような社会的合意機構の機能をゆだねるものと見られる。


文氏は、「雇用委員会」の委員長を務め、委員には「財界と労働界、市民社会、宗教界、女性界があまねく参加した高齢化・少子化対策連席会議のような新しい機構が必要だ」とする。

安倍内閣の「1億総活躍社会」というイメージであろう。


賃上げに応じない企業や、雇用を増やさない企業はやり玉に挙げられる。

こういう「ポピュリズム」が、真の経済活性化につながり、経済成長率を高める要因になるはずがない。


経済は、恩讐を超えた合理的な判断機構である。

中国の「社会主義市場経済」が、合理的な経済機構であれば、対GDP比で280%もの債務残高を抱えるはずがない。

市場機構のもたらすサイン(製品価格暴落)によって、事前に過剰投資=過剰債務は食い止められるものだ。

それが作動しなかった結果、とてつもない過剰債務を抱えることになった。中国経済失敗のケースを冷静に分析することだ。

これと同様に、韓国が賃上げと雇用増を強引に企業へ受け入れさせたらどうなるか。

企業の収益は圧迫され、やがて賃下げと解雇に追い込まれるであろう。

「ポピュリズム」経済政策は長持ちせず、破綻を迎えるであろう。

86世代」が実権握り干渉

『韓国経済新聞』(6月12日付)は、「韓国の初の『干渉主義』政府」と題するコラムを掲載した。筆者は、同紙編集局ベク・グァンヨプ/知識社会部長である。

このコラムでは、前記の「経済民主主義実現のための社会的大妥協」を政府の「干渉主義」として批判している。

歴代の進歩派政権の金大中、盧武鉉の両政権ですら、ここまで干渉主義をとらなかったと批判する。

この背景には、「86世代」という市場経済主義を否定して、「中朝に親愛感」をもつ計画経済主義者が実権を握っている結果であろう。

このグループが政治的権力の中枢を担う5年間で、韓国経済の体質は大いに傷むリスクを抱えるにいたった。

3)「文在寅政権の発足から1カ月。一つの幽霊が韓国をはいかいしている。

『干渉主義』という幽霊だ。

文政権は『第3期民主政府』であり『進歩政府』であることを自任する。

しかし今までの形態では民主や進歩でなく干渉的な傾向が目立つ。

干渉主義は介入と規制で国家目標を達成しようという統治方式だ。賃金、利潤、投資、税金、インフレなど、あらゆるものが干渉の対象となる」


文政権は、朴・前政権を批判してやまない。

だが、新政権もまた「干渉主義」という名で強力な権力を後ろ盾に、「問答無用」の姿勢で迫っている。

こうした状況を見ると、韓国の民主主義の底の浅さを実感せざるを得ない。

韓国マスコミは、民衆の「ローソク・デモ」という平和的な手段で朴政権を退陣に追い込んだと自慢している。

実態は、「ポピュリズム」の裏返しである。

なぜなら、文政権の行動が大衆人気を得ようと、権力を利用して国民におもねる姿が露骨であるからだ。

文政権は、「ローソク・デモ」を利用した強権政権と言える。

文政権は、賃金、利潤、投資、税金、インフレなど、あらゆるものが干渉の対象とする。

「86世代」は、盧武鉉政権が倒れて以来10年、雌伏の時期を過ごしてきた。

まさに「十年、一剣を磨く」の心境であっただろう。

それだけに、その溜め込まれた思いが一気に噴き出している。「暴走」していると言ってもよい。


(4)「新政権は発足初日から『干渉本性』を隠していない。仁川(インチョン)空港を訪問し、『雇用大統領』になるとして『非正規職ゼロ時代』を宣言した。

数十年間の労働市場の難題は、いかなる調整も説得過程もなくその一言で決断されてしまった。

反論は許諾されない。別の解決法に言及した経総は『積弊』とされ、反省文を書くことになった。

通信基本料、公務員増員、最低賃金、検察改革などのイシューでも越権的な強行が多い。

『国民の命令』だから従えという形だ。大統領執務室に『雇用状況ボード』を設置して企業別に点検する復古調も見せた」。

文大統領は、「鶴の一声」で決めている。文氏は前回大統領選で敗れているから、大統領の座が持つ意味は、他の大統領とは異なるかも知れない。待ちに待って手に入れた大統領の椅子である。

「非正規職ゼロ時代」は、現実の人口動態変化を無視した、単なる理念先行の思いつきである。

少子高齢化時代を迎えて、多くの人々を労働力化しなければならない時代背景がある。

それを無視した一律の「正規職」は非現実的なのだ。要は、「同一労働・同一賃金」が実現しないところに問題がある。

その原因を突き詰めて是正する。これこそ、政治の守備範囲である。スタンドプレーは、大統領がやるべきことでない。「手柄は他人に」という謙譲な姿勢が必要だ。

(5) 「干渉主義は、『より大きな政府が主導する、より多くの行動が正義であり進歩』と強調する。

金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権が時々、干渉的な色彩を表したが、その当時も『市場中心自由主義』が圧倒した。2人の大統領は支持者から『新自由主義者』と批判を受けたりもした」

このパラグラフで、「韓国は今まで干渉主義の無風地帯だった」という点に大いなる異議がある。これは明らかに「身びいき」である。

干渉=規制である。韓国は規制が多すぎるから、「偽装転居」が大臣(長官)人事で障害になっている。

居住こそ自由であるべきだ。どこに住もうが自由であってデメリットを受けない。これが原則である。

とごろが、居住地によって不利益を受けるから「偽装転居」が行なわれるのだ。

中国の「都市戸籍」と「農民戸籍」も典型的な差別である。戸籍となると偽装は不可能だが、韓国の「偽装転居」の解決は容易である。地域規制を撤廃すれば、事が済む問題である。

新自由主義」とは、国家による管理や裁量的政策を廃して原則自由であり、規制は例外という考え方である。

市民社会の歴史がない韓国で、そもそも新自由主義の成立する基盤がないのだ。

「新自由主義」の意味をわきまえずに、前記の二つの政権を批判したものであろう。

(6)「新政権は金大中、盧武鉉政権を継承すると話してきた。しかし動きは違う。

一種のタブーだった民間企業への露骨な介入もためらわない。

『圧力を感じる時は感じるべき』とし、最初から脅迫調だ。正義と真理を独占するかのようだ。

干渉政策で成功した国はない。20世紀初めに英国の経済が米国に抜かれて帝国から押し出されたのは、「社会的自由主義」など干渉主義的な熱気にとらわれたのが大きかった。

スウェーデンも干渉主義を導入した1950年ごろから約50年近く景気不振に苦しんだ。

結局、スウェーデンはミレニアム前後に自由市場主義に復帰し、正常な軌道に再進入した。

干渉主義は温かい資本主義、経済民主主義など、それらしきスローガンを前に出す。

『みんなに食料を、失敗者にチャンスを』約束する。

しかし終着地はいつも『みんなの貧困』だった。『大きな政府』の独善こそが、時代錯誤的な積弊だ」

スウェーデンでは、国論を分けるような大きな問題について知恵を働かしている。

事前に、国内の利害関係者を集めて1~2年ぐらい徹底的に議論して問題点を解決してから、国会へ上程している。

だから、国会はただ議決すればよいのだ。

こういうスウェーデン方式を韓国へ導入するならば、政府が音頭をとることはなく、利害関係の当事者が主役になるのだ。

韓国は、都合の良いところだけをとって「社会的大妥協」と言っているに過ぎない。議論の底が浅いのだ。