勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
韓国、「国家崩壊!」出生率は最低記録「家計債務」は過去最高
出生率低下は泥沼状態
住宅購入の債務が圧迫
韓国は文在寅(ムン・ジェイン)大統領の登場によって、「大衆迎合政治」が本格化している。
世論調査では、「就任100日」で高い支持率(78%)を得ているのだ。
文氏は、それ故に自信を深めている。
だが、高い支持率には裏がある。
世論調査会社の話では、積極的に世論調査で答えている層は「文支持者」であり、非「文支持者」が回答を拒否しているという。
これでは、実勢以上に文大統領支持率が高まらざるを得ない。文氏は夢心地であろう。
韓国にとって「百年の計」を立てるには、「大衆迎合政治」であってはならない。
国民に対して「真実」を語る勇気を持たなければならないのだ。
日本人の私が、余計なお節介をする必要もないが、端から見ていても極めて危険に映る。
文大統領は、支持率が下がることはあっても国民に向けて、現状のままで推移すれば、韓国が破綻することを告げるべきである。
それを回避して、口当たりの良いことばかりを語っているのだ。
一国の将来にとって、人口問題は極めて重要な問題である。
私は学生時代からこの問題に関心を寄せてきた。
「人口論」という授業も受けて「単位」を得ている。
当時、人口過剰論のまっただ中であった。学生には不人気な科目であり、受講学生は数えるほどしかいなかった。
今にして思うことは、不人気な科目でもいつか、その知識は生きることがあるのだ。
日本の合計特殊出生率が人口置換率である2.08を割ったのは1975年である。
それ以降、坂を転げ落ちるように出生率が低下している。
日本では、2025年に1.8へ回復させるべく、国を挙げての「働き方改革」の一環として取り組んでいる。
文大統領もこの面で本腰を入れないと、「韓国崩壊」の引き金を引く事態を招くに違いない。
出生率低下は泥沼状態
『朝鮮日報』(8月24日付)は、「4~6月期の合計特殊出生率、過去最低の1.04」と題して、次のように伝えた。
今年4~6月期の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に出産する子どもの数)は、過去最低の1.04まで落ち込んだ。
現在の人口を維持するには、合計特殊出生率が2.08でなければならない。
韓国の現状はちょうどその半分にすぎない。
合計特殊出生率が1という状況が続けば、長期的に見て人口が半減するという「赤信号」が灯った。
北朝鮮の政治体制は、軍事独裁政権が続くとすれば、この両国の人口問題が安保面で微妙な影を落としかねない。
韓国は、この視点からも人口問題を再検討する時期に入っている。安全保障は、国家存立の基盤である以上、人口対策が必要になってきたのだ。
(1)日本の1.42(注:16年には1.44)を下回る。合計特殊出生率が大幅に下がっているため、韓国の人口が現在の半分程度になる時期は当初の政府見通しよりも早まる見込みだ」
韓国の合計特殊出生率が、1すれすれまで低下している事実は深刻である。
この背景には、若者の就職難が大きな問題となって立ちはだかっている。
さらに掘り下げてゆくと、韓国産業界が技術革新の波に乗れずにいることもある。「反日」をやり過ぎて、日韓経済界の交流が途絶えて、日本から新技術情報が伝わらなかったのだ。
もう一つ、韓国が日本の「失われた20年」という沈滞局面を見て、日本経済の潜在成長力を見くびっていた点も災いしている。
これが一層、「反日」を燃えさからせ、結果的に墓穴を大きくした面もあるのだ。
要するに、日本から学ぶ姿勢を放棄して、唯我独尊で有頂天になっていたことが、現在の悲劇をもたらしたと言える。
そう見ると、韓国の出生率低下=韓国経済沈滞は自業自得という側面も強く、なんら同情することもない。
ただ、朝鮮半島が軍事的に不安定地帯になるとすれば、回り回ってその混乱の影響が日本にも及ぶリスクが出てくる。
これは、日本にとって由々しき事態になる。
(2)「統計庁は昨年12月に今後100年間の人口推計を発表した際、
『合計特殊出生率が1.12のまま維持されるという悲観的なシナリオを仮定すれば』と前置きした上で、2085年に韓国の人口が現在の約半分に当たる2620万人に減少すると予想していた。
2~3年後の出生児数に影響を与える婚姻件数が、2015年の30万2800件から昨年28万1600件、今年上半期は13万8000件と急減しているからだ」
韓国の合計特殊出生率が1.12を前提にした人口予測では、2085年の人口が現在の約半分に当たる2620万人となる。
だが、前述の通りすでに1,04まで低下している。さらに婚姻数の減少を考えると、1すら割り込むという危機状態に落ち込む。
こうなったら、文字通り「韓国崩壊」である。
それでもなお、「慰安婦問題」「徴用工問題」を言い続けて反日で騒ぎ立てるのだろうか。
文政権は、日本に対して前記に2問題をちらつかせている。
だが、国際法から見て「再交渉」は不可能である。
となると、文大統領はこの問題を取り上げて韓国国民を煽り立てるだけで終わるであろう。
日本の対韓国感情は悪化するから、韓国は何も得られないのだ。
「感情論」で日本を揺さぶっても、最後に損をするのは韓国である。こういう理詰めの解釈ができないのだろうか。不思議な大統領である。
韓国の出生率低下では、経済的困窮の側面も見逃せない。
結婚したくても結婚できない。そういう現状が、出生率低下を招いているからだ。
住宅購入の債務が圧迫
『朝鮮日報』(8月24日付)は、「韓国の家計債務、過去最高1388兆ウォン」と題して、次のように伝えた。
家計信用残高は家庭が各金融機関から借り受けた融資、クレジットカード債務などを合算したもので、あらゆる家計債務全体を示す金額だ。
韓国銀行の調査では、家計負債増加率は2013年の1.5%から16年は4.7%と3倍近くに増えている。
今年の6月末は、3月末に比べて2.2%の増加である。これを年率に換算するとざっと9%増にもなる。異常な家計負債の増加である。
この事態は、韓国の家計にも負担だが、韓国経済全体の個人消費を落ち込ませる公算が強い。
(3)これは、マンションの買替え需要が急増したことを示している。
ソウル中心に買い換え需要が殺到した。実需でなく転売目的の仮需が加わり、文政権が規制方針を明らかにすることでようやく下火になった経緯がある。
(4)「預金銀行による住宅担保ローンの増加幅は昨年1~3月期に6000億ウォンにとどまったが、4~6月期は6兆3000億ウォンへと10倍以上増えた。
担保ローンをはじめとするその他融資の伸びも1~3月期の4000億ウォンから5兆7000億ウォンに増え、関連統計を取り始めた2006年以降で最大を記録した。
今年4~6月期の預金銀行による住宅担保ローンの増加幅は、昨年1~3月期に比べてなんと10倍以上もの急増になった。
クレジットカード決済額の販売信用残高は、74兆9000億ウォンで統計開始以来最高だという。
これは、住宅を購入したので家電や家財道具もこれに併せて新調した結果であろう。
確かに、住宅購入やそれに付随した関連支出の増加は、その時の景気を刺激する。
後になると、「債務」として残るので家計を圧迫する。
こうして、一時的な住宅景気の終了後には、長期にわたって個人消費に悪影響を与えることを知らなければならない。
韓国の家計純資産のうち、不動産が全体の74%を占めている。これは、米国の35%、日本の44%、英国の55%に比べて、格段に高い比率である。
それ故、家計純資産に占める不動産比率が7割強にも達している。これが、韓国経済に圧迫を与える。
韓国が、中国と同様に不動産を所有したがる背景には、儒教社会という共通項もある。
それは、立派な住宅に住むことが社会的なステータスになる効果があるからだ。
儒教社会では、相手の品定めをするとき、相手がどの程度の資産家であるかを基準にする。個人の内面性を問わない「メンツ」の社会である。
こういう特殊事情を考えると、韓国社会が不動産を所有したがる背景が分かる。
それが長期的に、韓国経済にマイナスになっている事実も認識すべきである。
つまり、高額な不動産購入による多額の負債発生に伴う負担が、家計の可処分所得に食い込み、個人消費に負の影響を与えるのだ。
韓国政府が、景気刺激策で住宅建設を促進させたが、結果として家計負債を増加させた点で失敗である。改めて、金融市場整備の重要性が指摘できる。
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(2017年9月2日)