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[FT]日本の公的債務への懸念は行き過ぎだ

2017-09-26 17:35:40 | 日記

[FT]日本の公的債務への懸念は行き過ぎだ

 

2017/9/7 6:30

(2017年9月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

1000兆円。1,000,000,000,000,000円。国内総生産(GDP)比239%。

日本の公的債務の壮大な規模を示すだけで、予告された惨事の戦慄が走り、道徳的な警鐘が鳴る。

これほど大きな債務は間違いなく金融の大惨事に終わるはずだ。

ギリシャを見ればいい。それで議論は終わりだ。何か手を打て、それも今やれ、怠け者め――ということだ。

 

急速な高齢化が進むなか、日本は公的債務と共生するという選択肢をとらざるを得ない

急速な高齢化が進むなか、日本は公的債務と共生するという選択肢をとらざるを得ない

債務は日本の経済的な議論をまひさせ、税や歳出をめぐる政治的な意見対立を抑え込み、あらゆる景気刺激策に影を落とす。

だが、財政のアルマゲドン(終末)を告げる20年間の警告にもかかわらず、債務危機は一度として起きなかった。

米リーマン・ブラザーズ破綻と東日本大震災の規模のショックにもかかわらず、危機に近い事態さえ起きていない。

トレーダーの間には、日本国債の空売りを指す名前がある。「ウィドウメーカー」がそれだ。

■4つの解消法はいずれも現実味なし

金融の善悪を説く物語は大抵、債務の悪習を浄化する清めの危機で終わる。

だが、そうした危機は永遠に起きないかもしれないことを受け入れるべき時が来た。

日本はこれまで、世界一のペースで高齢化が進む国民を円滑に養ってきた。

景気回復の息の根を止めた2014年の消費増税など、深刻な政策ミスにつながったのは、中途半端でつじつまの合わない債務危機への不安だった。

国が多額の公的債務を解消する方法は、4つしかない。

成長、返済、デフォルト(債務不履行)、そしてインフレだ。

成長は論外だ。

安倍晋三首相が何を言おうとも、人口が縮小しているうちは、日本は成長によって債務から抜け出すことはできない。

どれほど多くの貿易協定に調印しようとも、どれほど多くの改革を完了しようとも、無理だ。

大規模な移民受け入れはすべてを一変させるが、債務比率でそのような根本的な社会的選択を決めるべきではない。

返済は成長と同じくらい難しい。

債務を返済するためには、医療や年金、国防への支出がどんどん増えるにもかかわらず、何年にもわたって財政黒字を出す必要がある。

そして国が黒字を出すためには、消費者、企業、あるいは外国人が財政黒字に相当する額の赤字を出す必要がある。

増税の見込みと不確かな年金給付を考えると、日本の家計が貯蓄を積極的に使い果たしていくとは考えにくい。

となると、デフォルトかインフレという2つの危機的結果が避けられないように思える。

だが、デフォルトは全く意味をなさない。

日本の債務のほぼすべてを、中央銀行と国内金融システムが保有しているからだ。

もし債務を返済しなければ、政府はただ単に、銀行の資本増強を迫られるだけだ。

自己に対してデフォルトすることになるわけだ。

インフレ率の上昇――日本が過去20年ほど達成できずにいる2%ないし2%強のインフレ目標――は、穏やかに債務を軽減することで、害になるどころか助けになる。

インフレ上昇への移行の過程で、日銀が制御を失い、物価急騰を許してしまうことは、あり得なくはない。

だが、政府には、いわゆる「インフレ税」を導入する動機がほとんどない。

日本は物価に敏感な年金生活者に満ちた資産保有国だ。

年金生活者の貯蓄を台無しにする以上に、政治的な自殺を遂げる早道はない。

公的債務を解消する4つのルートはいずれも、あり得ないように思える。

また、日本が世界最大の債権国であることを考えると、投資家のパニックと円からの資金逃避が4つの道のりのいずれかを選ぶよう政府に強いると考える明白な理由は何もない。

■5つ目の選択肢「債務と共生」

となると、比較的妥当な5つ目の選択肢が残る。

公的債務を解消するな。債務と共生していけ、ということだ。これは驚くほど実行可能だ。

債務危機が生じる可能性に疑問を投げかけた、先見性のある論文を2005年に執筆した米コロンビア大学の経済学者デビッド・ワインシュタイン氏と共著者のマーク・グリーナン氏は、

近く発表するアップデート版で、日本が国債パニックを避けられた理由を3つ挙げている。

金利負担の低下、高齢者向け歳出の容赦ない抑制、そして大幅な増税だ。

日本が債務に対して支払う実質金利は着実に低下してきた。

短期金利がマイナスになっている今、国は短期の借り入れを行うのにお金をもらっている。

日本の外貨準備やその他の公的金融資産からの収入を考慮に入れると、利払い費の管理はさらにたやすくなる。

その結果、安倍氏の下で実施された景気刺激策は、長年増加し続けた日本の債務をついに安定させた。

債務総額は2012年にGDP比237%だった。国際通貨基金(IMF)は、2022年の債務が同232%になると予想している。

低金利は、財政の持続可能性にとっては、既存の債務は大した問題にならないことを意味している。

それ以上に重要で、無駄の多い公共事業の評判を裏切るのは、日本が医療・年金支出について厳しい決断を下してきたことだ。

高齢者に対する1人当たりの歳出は実質ベースで減少した。

税収は2000年以降、GDP比で6ポイント増えている。

「このアプローチが続けば、日本は金融危機も大規模なインフレも避けられる可能性が高い」とワインシュタイン、グリーナン両氏は書いている。

■人口減で崖っぷちは続く

日本には散財する余裕はない。

ベビーブーム世代が高齢になるにつれ、各種手当の給付に資力調査を導入し、富裕税や消費税からの税収を増やす必要がある。

だが、日本はそれができることを示してきた。

このため、差し迫った危機への不安を捨て、即時の財政引き締めへの要求を取り下げるべき時が来た。

安倍氏の政策は日本の債務を安定させた。

景気後退時に利下げできるほどインフレ率が上昇し、好況期に財政黒字を出せるほど経済が強くなるまで、このまま回し続けていくことが不可欠だ。

日本のような人口動態を持つ国は、常に崖っぷちに近い場所にいる。

だが、歳出の規律を守れば、崖から落ちる理由はない。ウィドウメーカーには、まだまだ大勢の犠牲者が潜んでいる。

By Robin Harding

(2017年9月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)


韓国経済は財閥依存が続く限り実力を高めることができない

2017-09-26 16:34:04 | 日記

2017.8.15

韓国経済は財閥依存が続く限り実力を高めることができない

 これまで革新を呼びかけてきた文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、財閥への依存度の高い経済構造を改革し、韓国経済が抱える問題の解決に向かうことが必要になる。

 最大の問題は、北朝鮮の脅威がある中で、将来の経済を見据えた抜本的な改革に取り組むことができるか否かだ。

ここまでのところ、文政権は初動動作を誤ったように見える。

会話をまったく受け付けない北朝鮮との融和姿勢を前面に打ち出し、中国との関係強化を進めてきた。

 経済面では、財閥の再編や競争原理の発揮ではなく、財閥企業への依存度はさらに高まっている。

文政権は財閥の解体など抜本的な改革に伴う痛みを恐れているのかもしれない。

当面、不満解消を狙った近視眼的な政策運営が続くだろう。それでは、韓国が抱える問題の根本的な解決にはならない。

韓国経済を支える
サムスンの実力

 北朝鮮問題への不安がある中でも、韓国最大の財閥企業であるサムスンは一貫して業績の拡大を遂げている。

4~6月期、中核企業であるサムスン電子の業績は半導体事業の成長に支えられて過去最高の営業利益を記録した。

この結果、同社は、過去24年間にわたって世界の半導体市場のトップに君臨してきた米インテルの売り上げを上回り、世界トップの半導体メーカーの座を手に入れた。

 サムスンは有機ELパネル市場でのシェアも拡大している。

7月に同社は韓国国内で2兆円規模の設備投資を発表した。今後もシェアの拡大を軸に、業績は拡大基調で推移する可能性があるだろう。

サムスンの強さは、その組織力にありそうだ。

2014年、サムスンの中興の祖であり強烈なカリスマ性の下で財閥全体を統率した李健煕(イ・ゴンヒ)氏は病に倒れた。その容体は定かではなく、一説には死亡説もささやかれている。

 その後をついだ李在鎔(イ・ジェヨン)被告は、前大統領であった朴槿恵(パク・クネ)被告への贈賄罪に問われている。

同被告は検察から懲役12年を求刑され、短期間で経営の第一線に復帰するのは難しいだろう。

 この状況でも、サムスンは利益を追い求め成長を遂げている。

これは、組織全体に成長を追い求めるDNA="アニマルスピリット"が浸透しているからだろう。

その組織を作り上げたことがイ・ゴンヒ氏の功績といえる。

 成長への渇望に駆られたカリスマ的統率者がいなくとも、利益を追求するDNAが各事業のトップからボトムに至るまでの人員に受け継がれている。

それがサムスン最大の強みだ。

 ただ、忘れてはならないのは、こうした財閥企業の成長は政治によって大きく支えられてきた面があることだ。

政府が財閥企業に対して優先的に事業の許認可を与えたりした結果、サムスン電子の売上高は韓国のGDPの2割に達した。

事実上、韓国経済は10大財閥による寡占という、かなりいびつな状態になってしまった。

既得権益にしがみつく財閥企業
経済活動の効率化の重要性

 富が10大財閥に集中する。その結果、韓国では経済格差が拡大した。

言い換えれば、多くの人々が財閥企業の業績拡大のおこぼれに与ってきた。

その状況を個人の努力で改善するのは容易ではない。

社会全体で経済格差への不満が蓄積され、政治・経済・外交の革新を呼びかけた文大統領の当選につながった。

一方、財閥企業の中には、既得権益にしがみつき、自分たちの利益を守ることを重視している者も多い。

典型が自動車業界だ。現代自動車は中国での販売不振から減益に陥っている。

本来ならリストラが必要な状況だ。にもかかわらず、同社の労働組合は6年連続のスト実施を決めた。

この状況で生産の効率化は見込みづらい。

 また、人口減少という問題もある。

韓国の出生率は1.2台とわが国よりも低く、状況は一段と深刻だ。文政権は、人口が減少する中で経済を成長させ、一人当たりの所得を増やさなければならない。

そのためには、経済全体で競争原理を発揮し、生産性を引き上げなければならない。

それが、文政権が取り組むべき経済政策のテーマといえる。

 これまでの韓国経済の歴史を振り返ると、財閥の再編は不可避と見られる。

短期間でそうした改革を行えば、企業業績が悪化し失業者は急増するだろう。

財閥の競争力を活かしつつ、中小企業などへ優先的に許認可を与え、新しいモノやサービスなどを生み出すイノベーションを促進する政策が必要だ。

 しかし、韓国にとって財閥の存在感はあまりに大きい。

いわばアンタッチャブルな存在にまで肥大化してしまったようにも見える。財閥の経営がふらつけば、国家経済の基盤が揺れる恐れがある。財閥改革の痛みは大きすぎる。

 そのため、歴代の政府は財閥の再編などを重視しつつも、抜本的な改革を進められなかった。

文政権も然りだ。現在、韓国政府は財閥企業に対する税率を引き上げ、経済全体での所得再分配機能を向上させようとしている。

加えて、公的部門での正規雇用の増加や児童手当の拡充なども重視されている。それは、財政出動による不満解消策と言え、バラマキにつながるだろう。

今後も続く
韓国の財閥依存体質

 外交政策の問題を考えても、財閥依存の体質を改めるのは難しい。

文政権は、日米が韓国との関係を重視し続けるとの前提の下、北朝鮮との融和姿勢を前面に打ち出し、中国との関係強化を進めてきた。

 しかし、北朝鮮を巡る緊張の高まりを受けて、韓国は在韓米軍のミサイル迎撃システム(THAAD)を増強する方針を示した。

これは当初から想定されていた展開だが、文政権は中国への配慮を優先した。

 韓国にとって中国は最大の貿易相手国だ。

すでに、THAAD配備をめぐる中国の報復措置を受けて、現代自動車やロッテのデパートの売り上げは急減した。

今後、更なる報復措置が取られれば、蛇口が絞られるように韓国の対中貿易が落ち込み、財閥企業の経営が悪化する恐れがある。

 そのリスクが顕在化すれば、文政権への支持率は低下し、改革以前に政権運営が難しくなるだろう。

この展開を恐れるあまり、文政権は近視眼的な政策の立案に終始し、中小企業の育成、公正な競争環境と所得再分配機能の向上など、長らく指摘されてきた改革を打ち出せずにいる。

 現在、韓国の経済全体は安定している。それは構造改革を進めるチャンスだ。

ただ、文政権は改革には及び腰と考えられる。経済格差を解消することは難しいだろう。

北朝鮮問題への懸念も高まる中、徐々に韓国の経済・外交政策は行き詰まる恐れがある。

政策の方針修正は不可避といえる。それが、韓国の国力を左右すると同時に、朝鮮半島情勢の安定にもつながるだろう。

 朝鮮半島と距離的に近いわが国にとって、韓国の状況は対岸の火事ではない。

わが国も、構造改革を進めて国力を高めなければならない。

加えて、国際社会での発言力強化も必要だ。政府は、公正かつ真摯な姿勢で国際経済の発展と政策協調の重要性を主張し、それに賛同する国への支援を行えばよい。

いわば、是々非々の立場を明確に示し、アジア各国との政策連携を進めるべきだ。それが実現できれば欧州各国との関係強化も進めやすくなるはずだ。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)


今の野党では「大義なき解散」でも自民党に絶対勝てない理由

2017-09-26 16:20:42 | 日記

今の野党では「大義なき解散」でも自民党に絶対勝てない理由

今の野党では「大義なき解散」でも自民党に絶対勝てない理由: Photo:首相官邸© diamond Photo:首相官邸

ようやく遅すぎる釈明会見を開いた豊田真由子衆議院議員の暴言事件、知名度の高い今井絵理子参議院議員の不倫事件、森友・加計問題や閣僚達の一連の不祥事などで支持率を落とした自民党だが、野党に自民党を倒せるような勢いはなさそうだ。

民進党は蓮舫元代表の辞任劇と山尾志桜里衆議院議員の離党事件で揺れに揺れ、日本維新の会は橋下徹元代表が去ってから党勢は衰え続け、9月24日に投開票された堺市長選でも敗北を喫した。有権者は、一体何をどう選べばよいのか。(政治ジャーナリスト 黒瀬徹一)

突然の大義なき「台風解散」野党は戦いやすいはずだが…

 9月の三連休、日本列島を台風18号が縦断した。旅行予定の変更を余儀なくされた方々も多かったかもしれないが、台風のような解散風が吹き荒れ、永田町の住民たちは多くの予定変更に迫られたことだろう。

 28日召集の臨時国会冒頭、衆議院を解散する――。

 もし、臨時国会の冒頭で衆議院が解散されれば、10月中にも衆議院議員選挙が実施されることになる。

 森友・加計問題や閣僚たちの一連の不祥事、遅すぎる釈明会見を開いた豊田真由子衆議院議員の暴言事件などで支持率を落とす自民党。野党にとっては戦いやすい状況であるはずが、臨戦態勢が整っているようには全く思えない。

 民進党は蓮舫元代表の辞任劇と山尾志桜里衆議院議員の離党事件で揺れに揺れ、日本維新の会は橋下徹元代表が党役職を去ってから衰退に歯止めがかからず、先週末9月24日に投開票された堺市長選でも維新候補が敗北を喫した。

衆院選を前に立ち上げられた、首都東京で注目が集まっている小池新党「希望の党」にしても、国政へ進出する大義名分が見えない。

 安倍政権の「大義なき解散」においてさえ、野党第一党である民進党、大阪では今なお根強い支持を得る日本維新の会、そして注目を集める小池新党が、国政において自民党に代わり得る存在になれないのはなぜなのか。

与野党ともに「ミソギ解散」二重国籍と不倫が致命傷な理由

 9月1日、民進党の新代表には前原誠司元代表が選ばれた。

 前任の蓮舫元代表が二重国籍問題で混乱し、もはや党をまとめられなくなった結果である。

そして、前原新代表の船出を襲ったのが、党のエースと目されていた山尾志桜里衆議院議員の不倫騒動と離党劇だ。

 しかし、彼女たちが叩かれている要因は、そういった些末なスキャンダルそれ自体ではない、ということは深く肝に銘じておかなくてはならない。

蓮舫元代表について言えば、野党の役割は与党を追及するところにあるにもかかわらず、自分自身が追及された時に、説明を二転三転しているようでは、説得力を失ってしまう。

つまり、その時点で野党第一党のリーダーとしての「議員活動」に支障が生じてしまうのだ。

最初から情報をすべて公開し、戦うべきところは毅然とした姿勢を貫いていれば、辞任に追い込まれることはなかったと思う。

 一方、山尾議員は「日本死ね」ブログを紹介したことで一躍脚光を浴びたという経緯がある。

子育てに苦労する女性の声を代弁するのが彼女の仕事だし、多くの有権者はそれを期待して彼女を支持していた。

しかし、その立場にありながら「不倫」にうつつを抜かしてしまうと、「子育てしながら働くのはとても大変なのだ」という意見が説得力を失い、反対派からの攻撃の隙を与えてしまう。

この時点で極めて罪深く、これまた「議員活動」に支障が生じてしまうのである。

なぜバッチをつけている間だけでも我慢できなかったのか、と残念でならない。 

前原代表の誕生にしても、「またこの人か」という使い古された感が否めない。

有権者目線で言えば、結局同じ顔ぶれがとっかえひっかえ役員をたらい回しにしているようにしか見えない。

 同じようなことをグダグダと繰り返す。続々と離党者が現れ、同じような顔ぶれが看板を替えて議員を続けようとする。

与党も野党もスキャンダルが起きれば適当に選挙をこなし、なんとなく「ミソギが済んだ」と勝手に都合良く解釈する。

 だから、一向に支持が高まらないのである。

堺市長選と「維新潰し解散」維新が大阪でさえジリ貧な理由

 ここで目線を東京から大阪へ移そう。

 9月24日、堺市長選挙が投開票された。

 結果は、現職の竹山修身氏の三選が確定し、維新候補が敗北した。衆院選を目の前にした大阪第二の都市での敗北は、維新にとって痛恨の一撃だった。

 2017年9月24日投開票 堺市長選挙 ・竹山修身 16万2318票 当 ・永藤英機 13万9301票

 4年前の市長選と比較すると、投票率は50.69%から44.31%まで下がった。その中でもほとんど得票数を下げなかった維新は、さすがにいまだ支持は根強いと言える。

 (参考)2013年9月29日投開票 堺市長選挙 ・竹山修身 19万8431票 当 ・西林克敏 14万0569票

 だが、4年前と比べてまったく支持が増えていないことも事実なわけで、このままでは衆院選での議席増は望めないし、大阪都構想の実現も遠いのは明らかであり、ジリ貧感が否めない。

「維新」がジリ貧な理由は明らかだ。

まず、維新の創立者でもあり、カリスマ的リーダーだった橋下徹元大阪市長・府知事が維新を去ったことが大きい。

大阪都構想が住民投票で否決された後,市長の任期を終え、日本維新の会の政策顧問も今年5月に辞任。

テレ朝系のバラエティー「橋下×羽鳥の番組」も9月に終わる。

 党の看板政策である「大阪都構想」の実現の見通しが厳しくなったことによって、もう一つの党の看板政策であった「身を切る改革」についてもトーンが弱まっている。

日本維新の会が主張していた月100万円の文書通信費の使途公開にしても、実際に党のホームページに公開された資料に目を通してみれば、多額の金額が単に「政党支部への寄附」で処理されているケースが散見され、あまり意味があるようには見えないのが実態だ。

目的が失われてしまうと、何のために身を切っているのかもわからなくなってしまうということだろうか。

 その結果、維新はアイデンティティを失って漂流し、「大学無償化」などという政策をいきなり打ち出し始めてしまった。

本来、小さな政府を志向し、徹底的な行財政改革と合理的な是々非々の政策判断が維新のウリだったにもかかわらず、人気とりのために財政的根拠や丁寧な検証もない積極財政路線に走った。

 さらに、政局的な観点では、国政において日本維新の会が自民党に寄りすぎる印象を強めてしまい、「野党」感が薄れてしまった。

日本の政局は「保守と革新」などという思想的な軸は自称政治通の妄想に過ぎず、「自民党とそれ以外」という軸が最も正しい。

60年以上にも渡って存在し続けたブランド政党に、次々とベンチャー野党が挑む、というのが日本の政治の構図だ。自民党以外の政党は、自民党との差別化ができなくなった瞬間に、存在意義が消滅してしまう。

 一方で、立ち位置が自民党に近づいたにもかかわらず、候補者は「元民主党」が目立つ。

大阪では今なお自民党と拮抗する勢力を維持しているが、隣の兵庫県に目を移すと、衆議院議員は一人もおらず、兵庫県1区の梅村聡氏(元大阪選出の民主党参議院議員)、兵庫6区の市村浩一郎氏(元民主党衆議院議員)のように、独自候補を擁立できていない。

これでは、看板をすげ替えただけで維新の看板で当選しようとする「議員であり続けられたらそれでよい」政治屋なのではないか、と疑惑の目で見られても仕方ないだろう。

 今回の衆院選は、正直、全国的に見ればさほど見所はないが、維新の失墜により、大阪は最も混沌とする激戦エリアとなるだろう。

「大義なき解散」でも大義なき新党では自民党は倒せない

 今回の選挙で新しい風を起こすと目されているのが、小池新党「希望の党」だ。

 民進党を離党した細野豪志元環境相と、小池百合子東京都知事側近の若狭勝衆院議員が新党結成に向けて動いていたが、ついに小池百合子都知事が代表に就任することが発表された。

 だが、これまた小池都知事の人気を頼りにした大義なき新党結成に見える。

小池都政はまだ動き出したばかりであり、都政においても説明と実績が足りておらず、国政に出る理由があまりに乏し過ぎる。

そもそも、新党と言いつつ、やっぱりどこかで見た顔の寄せ集め感が否めない。

困ったら「民主党」を「民進党」に変えてみたり、「おおさか維新の会」を「日本維新の会」に変えてみたり、小池都知事の威光の陰に集まってみたり、中身を変えずに表面ばかりを繕おうとするのはいかがなものか。

 皆、選挙での「生き残り対策」ばかりを考えるのではなく、本質的に大切なことを考えなくてはいけない。

 まず、こんなにも衆議院が4年間の任期を全うできないようであれば、いっそ任期を短期化した上で、解散権は不信任案が可決された時(または信任決議案が否決された時)の対抗手段に限った方がよい。

確かに、今の時代、4年という期間はあまりにも長すぎる。これを憲法改正の議論に加えてもらいたい。

 野党側はいつも「急な解散」と批判するが、現行制度においては常在戦場が衆議院の特徴なのは周知の事実であって、言い訳は許されない。

野党はもっと日頃から新人発掘に力を入れ、「看板のすげ替え」だけでない新陳代謝を図るべきだ。

多くの有力議員が離党した民進党は、今回の選挙で大幅に議席を減らすだろう。

"政党サーフィン"や"役員のたらい回し"をやめ、ベテランが若手に席を譲る潔さが求められている。

 日本維新の会はアイデンティティクライシスを脱却し、本来の主張を取り戻す以外に生き残る道はないだろう。

カリスマがいなくなった状態で、抽象的で実現不可能な案を叫ぶばかりでは、ジリ貧の状況から抜け出すことは不可能だ。橋下徹以外のリーダーを発掘・育成してこなかったことに尽きる。

野党が自民に勝てないのは「人づくり」を怠ってきたからだ

 野党が永遠に自民党に勝てない理由は、「人づくり」を怠っていたからだ。「人づくり解散」を契機に本気で人づくりに取り組んでもらいたい。

 とはいえ、ここまで野党が頼りないと、正直、ほとんどの小選挙区では今から結果が見えてしまっている。

本来、選挙の主役は有権者であるべきだが、やる前から結果が見えてしまうとは極めてばからしい茶番劇だ。「投票しても意味がない」という嘆きは、実は案外正しい感覚だろう。

 政党はもっとまともな候補者を選び、評価し、退陣させる人事制度をつくり、新陳代謝を高めるべきだ。同じ顔ぶれが看板を変えるだけでいつまでも居座るから、人々は政党不信に陥る。

 マスコミも、スキャンダルを事後的に報道するのではなく、候補者・議員を評価する仕組みを作り、投票の前に情報を得られるように努めなくてはならない。

ネットメディアでは議員評価を実施するサイトもいくつか見られるが、偏っていたり閑散としていたり、あまり有益なものは見当たらない。

 政治学者は、もっと「現実の政治」を分析する研究に時間を使ってほしい。

巷の政治学者の論考などを筆者も時折読んでいるが、形而上学的なことばかり論ずる人が多く、何の意味も感じられず、読了後、いつも時間を無駄にした気分になる。

 いっそ日本人全員が投票に行かなくなれば、それすなわち「クーデター」となり、国会を無血開城させ、新しい政府を樹立することができるかもしれない、とチラリと思ったりする。

「人づくり」を理由に、またしても安倍総理が「伝家の宝刀」を抜く。しかし、有権者に選択を願う前に、まずは政界の「人づくり」が急務だと思う。

 選択肢なき選択。我々に与えられた考える猶予は、一ヵ月もない。


ライダイハン、韓国社会に衝撃 ベトナム派兵、徐々に汚点 対日批判ブーメランも

2017-09-26 16:00:27 | 日記

ライダイハン、韓国社会に衝撃 ベトナム派兵、徐々に汚点 対日批判ブーメランも

ライダイハン、韓国社会に衝撃 ベトナム派兵、徐々に汚点 対日批判ブーメランも: 彫刻家のレベッカ・ホーキンスさんが制作した韓国軍兵士の慰安婦とされたベトナム女性と混血児をたたえる「ライダイハンの彫像」(岡部伸撮影)

© 産経新聞 提供 彫刻家のレベッカ・ホーキンスさんが制作した韓国軍兵士の慰安婦とされたベトナム女性と混血児をたたえる「ライダイハンの彫像」(岡部伸撮影)

 【ソウル=名村隆寛】慰安婦問題では国民総出で日本への批判を続ける韓国。

「ライダイハン」の存在によって明らかになった、自国兵士による性的暴行の事実は韓国社会に衝撃を与えた。

「女性の人権擁護」を掲げ非難する声がある一方、日本に対し責任追及をしてきた自分たちの首も絞める“ブーメラン”になりかねず、同問題では難しい判断を迫られている。

 ベトナムへ派兵を実施した朴正煕(パク・チョンヒ)政権以後、韓国政府は元派遣兵士を「国家の有功者」とみなしてきた。

 しかし、1998年にベトナムを訪問した金大中(キム・デジュン)大統領(当時)は「ベトナム国民に苦痛を与えたことを申し訳なく思っている」と初めて謝罪したが、元軍人や保守系団体から強く批判された。

 李明博(イ・ミョンバク)政権の2009年には、有功者の顕彰制度に関する法案改正の文書に「世界平和の維持に貢献したベトナム戦争参戦勇士」と記されたことにベトナム政府が猛反発し、外交問題に発展した。

だが、韓国政府はこれまで謝罪の意を公式に文書化していない。

 ベトナム戦争での韓国兵は公式には英雄視されるものの、民主化を経た1990年代以降、徐々に“汚点”と化している。それを先導しているのが左派系の市民団体やメディアだ。

 元慰安婦の支援団体「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)」や女性団体は今月14日、

ソウルのベトナム大使館前で突然、「ベトナム政府とベトナム人民に韓国国民として心から謝罪します」と記したベトナム語と韓国語のプラカードを掲げ、謝罪デモを開始。毎日交代で続けている。

 プラカードには、元慰安婦の女性らの「韓国人」としての謝罪の言葉もある。

挺対協の尹美香(ユン・ミヒャン)代表は韓国紙に「日本のように戦時の被害者を否定してはいけない」とデモの理由を語った。

挺対協などは慰安婦問題と同様、ライダイハン問題も「女性の人権という人類普遍の問題」と訴えている。

 韓国ではベトナム戦争とは関係のない元慰安婦の支援団体までが介入するなど、ライダイハン問題を複雑化させている。