デフレ崖っぷちの韓国、文在寅がハマる「財閥改革」の罠
田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)
田中秀臣(上武大学ビジネス情報学部教授)
童顔でスラリとした長身の2人は、ほかの高校生と比べても引けを取らないほどの若々しさをアピールしている。
また、パク・シネはドラマ『ドクターズ-恋する気持ち-』『ピノキオ』『相続者たち』などで、missAのスジは『むやみに切なく』『ドリームハイ』などでたびたび制服姿を披露しており、みずみずしくて愛らしい高校生のイメージを見せつけてきた。
2017-09-12 05:00:00
部品会社に代金支払い遅延
起亜自の工場では解雇寸前
現代自動車は、サムスンと並んで韓国を代表する二大企業である。その現代自は、中国市場での販売不振に伴い中国での部品代金支払いが遅延した。
その結果一時、中国4工場の操業が止まる騒ぎを招いた。依然、問題の根本は解決していない。現代自にとっては、はなはだ不名誉なことで、経営危機の深刻さを浮き彫りにしている。
現代自の売上高営業利益率は、昨年からすでに5%台(注・トヨタは8%前後)まで低下している。
それだけ不況抵抗力を失ってきた。
そこへ、韓国政府のTHAAD(超高高度ミサイル網)導入に反対する中国政府の嫌がらせが、中国での韓国製品不買を招いている。
現代自は、その影響をストレートに受け、販売不振に陥ったもの。
ただ現代自は、中国市場だけの不振でないことが問題を複雑にしている。米国市場でも販売が停滞しているのだ。
こうなると、現代自の商品性自体が魅力を欠いているわけで深刻な局面に入っている。
部品メーカーに代金支払い遅延
『ハンギョレ』(8月30日付)は、「現代自動車、中国工場4カ所が稼動再開、納品代金支給は協議中」と題して、次のように報じた。
中国政府による韓国企業イジメは尋常でない。
国営テレビで国民に不買を勧める異常行動に出ている。
これに対して、韓国政府はWTO(世界貿易機関)に訴えず、ひたすら中国政府へ「揉み手」して「哀訴」といった生温い態度である。
中国政府の違法行為には断固、抗議すべきなのだ。
韓国メディアは、「韓国には外交当局も通商当局も存在しないのか」と皮肉られる始末である。
「反日」では、「国民の感情が認めない」などと高飛車に出る文政権も、相手が中国政府となれば身がすくんでいる。可哀想な韓国政府である。中国政府から、ますます足下を見透かされ馬鹿にされているのだ。
(1)「先週から部品調達の支障により操業が止まっていた現代自動車の中国合作工場4カ所が30日稼動を再開した。
現代自動車は『部品供給を中断した現地協力会社が再び供給を始めたことにともない、北京現代の4つの工場が次々に稼動に入った』とこの日明らかにした。
しかし、現地部品メーカーに未払いとなっている代金の支給はなされておらず、火種が残っている状況だ。
北京現代は現代自動車と中国現地企業の北京汽車が50対50の持分で作った合作会社だ。
生産は現代自動車が、財務部門は北京汽車が主導権を持っていて、独自の意思決定が難しい。
会社関係者は『納品代金の支給問題は継続協議中』とし『現地の資金事情が悪化して困難はあるが、早期に解決するため努力している』と話した」
部品会社も代金を支払ってくれない相手に、いつまでも部品を納入するはずがない。
今回の現代自中国4工場が一斉に操業中止に追い込まれたのは、「代金支払い後れ」が理由である。
だが、未払い金が全て支払われたわけでない。いつまた、部品供給ストップの事態を招くかも知れないのだ。綱渡り経営が続いている。
(2)「現代・起亜自動車は今年3月から本格化したTHAAD報復の余波で、今年上半期の中国販売量が昨年同期に比べ半減した。
現代・起亜自動車の苦戦により、現地に一緒に進出した韓国の部品企業も限界状況をむかえているという。
最近これらのメーカーの工場稼動率は50%以下に低下し、売上と収益性が大幅に悪化している。
資金事情が好転しないならば、また別の納品中断事態が起こることもありうる状況だ」
韓国企業で、現代自とともに中国へ進出した部品会社は、深刻な経営危機に見舞われている。
中国の民族系部品会社であれば、現代自以外のメーカーに納品先を切り替えられるが、韓国から進出した部品会社は、現代自と「運命共同体」になっている。ここが、つらいところである。
『中央日報』(8月31日付)は、「北京現代車の協力会社が倒産危機」と題して、次のように報じた。
中国では、外資系企業は全て現地企業との合弁を条件づけられている。
現代自も同様の条件で合弁形態だ。今回は、製造が現代自、経理が現地企業と分かれている。
部品代金遅延問題は、経理を担う現地企業が主導権を握っている。
今回の支払い遅延は、現地企業が資金温存を先行させて招いたものだ。
現地企業は、部品単価をさらに25%の大幅引き下げを主張しているという。
この引き下げが実現すると、部品の品質面で大きな問題が起こるという。中国での現代自経営は、いずれ行き詰まる危険性を秘めてきたようだ。
(3)「現代自動車の中国工場に部品を納品している会社の社長J氏はこの春から代金を受けていない。
こうした中で先週、青天の霹靂のような連絡を受けた。
『納品代金の支払いが年末まで円滑にいかないようだから自主的に対策を出してほしい』という内容だった。J
氏は『もう1カ月を持ちこたえる余力もない。10年以上にわたり現代車と取引してきたが、事業を整理するべきか深刻に悩んでいる』と語った」
現代自中国工場に部品を納入している企業によれば、この春から販売代金を受け取っていない。
その上、年末までさらに支払い遅延の見込みという。こうなると、部品会社は経営不可能な事態に陥る。
やむなく、事業整理の検討を始めたという。現代自としては、部品代金を支払いたくても、合弁相手の中国企業が財布の口をしっかりと閉めて不可能だ。
ここが、合弁形態の難しさである。中国側企業は、自らが生き残り策を模索しており、一銭の出費もしたくないとい「守銭奴」ぶりである。
日本企業であれば、こういう「不義理」をしないだろう。日本の部品系列関係は、「親子も同然」の濃密な関係にある。中国では、こういう関係は成立しないのだ。
(4)「現代車中国法人の協力会社はすべて事情が似ている。現代と直接取引する1次協力会社だけでも200社を超え、2・3次ベンダーや物流など関連分野まで合わせると協力会社は約4000社にのぼる。
中小企業が大半の協力会社が平均3.5カ月間(現代車側集計)の納品代金を受けられず、連鎖倒産の危機を迎えている。
このうちの一社、イナージー社(中国名・北京英瑞杰)が先週、プラスチック燃料タンクなどの部品の納品を拒否し、現代車工場4カ所が『オールストップ』する事態が発生するなど危機が現実になっている。
現代車は8月30日、北京現代工場4カ所が稼働を再開したと明らかにした。
しかし2万個の部品のうちボルト1個でも抜ければ生産ライン全体が停止するしかないため、工場稼働中断事態がいつ再発するか分からない状況だ」
現代と直接取引する1次協力会社だけでも200社を超える。
2・3次ベンダーや物流など関連分野まで合わせると協力会社は約4000社にのぼるのだ。この中の1社でも、部品代金の支払い遅延を理由に部品納入を拒否すれば、今回のように現代自の組み立て工場が操業中止に追い込まれる。
韓国の現代自本社は、自ら資金手当をして部品納入拒否という最悪事態を回避する手立てを尽くさないのだろうか。
現代自の信頼に泥を塗る事態が発生しているのだから、ここは「資金援助」すべきと思うが、その余裕もなくなってきたのか。
営業利益率5%台という収益低迷が、こういう危険を招いていると言える。
(5)「『現代車危機』の1次的原因は販売不振だ。
このため現代車は今年の販売目標(中国)を当初の125万台から80万台に下方修正し、工場の稼働を大幅に減らしている。
3交代・24時間体制だったラインが今では1交代・8時間だけ稼働している。
さらに職員は生産ラインに配置される時間より、教育や作業場清掃で過ごす時間の方が多いという。
ある関係者は『残業手当を受けることができず実質収入が減った職員の中には、夜間の代行運転などアルバイトをする人もいる』と話した。実際、北京平谷地域の部品協力会社10社では5月、職員が賃金維持を主張してストライキを行ったという」
中国の現代自の組み立てラインは、3交代・24時間体制であるが、すでに1交代・8時間だけの稼働に低下している。
3割操業にまで落ち込んでいる。
従業員の給与は当然、大幅に減少しており、夜間の代行運転などアルバイトをする人もいるという。中国従業員の生活は、中国政府の「現代自不買指示」で、思わぬところで中国人の生活を直撃している。この面については、後で触れる。
(6)「中央日報が入手した資料によると、現代車と北京汽車は7月19日と31日、ソウルと北京を行き来しながら2回、北京現代取締役会を開いた。
ここで中国側の合弁会社の北京汽車は今年の目標利益である55億元(約825億円)を達成するためには協力会社の材料費を25%削減すべきだと要求した。
現代車は『協力会社の負担が重く、現実的に不可能』とし、受け入れなかった。
納品単価を抑えてきた中、ここから25%引き下げれば協力会社は利益をほとんど出せないという理由だった。
業界関係者は『利益金の配当をめぐる交渉が決裂し、北京汽車が納品代金を支払ずにいる』とし『販売急減による収益減少を(協力会社の)コスト削減で補充し、当初設定した配当金を受けるべきという要求は質が悪い』と語った」
このパラグラフでは、現代自の合弁相手企業の北京汽車が、常識から外れた要求を出している。
「北京汽車は今年の目標利益である55億元(約825億円)を達成するために、協力会社の材料費を25%削減すべきだと要求した」ことだ。
この裏で、中国当局が圧力を掛けているのであろう。法人税を予定通り納めさせるという目標が優先されているに違いない。
この要求が通れば、部品会社の経営は一段と悪化する。倒産も視野に入れざるを得ないのだ。
その場合、北京汽車も損害を被るはずである。
共倒れを防ぐべく、倒産回避を最優先すべきだが、あくまでも目先利益を重視している。
中国では、「持ちつ持たれつ」という相互依存の繁栄図式は成立しないのだろう。
日本企業にとっても、こうして得がたい経営事例を見ることができるのだ。「自社だけ儲かれば良い」。これが、中国式経営の赤裸々な姿だ。
起亜自の工場では解雇寸前
以上の話は、現代自の北京工場で起こっている例だが、現代自系列の起亜自動車も中国で苦悩を重ねている。
上海の北に位置する江蘇省塩城は、起亜自動車の企業城下町である。
人口160万のこの都市は、中国政府が外国企業を恣意的に罰すれば、中国の労働者まで巻き込まれて、必ず犠牲を負うことを知らしめる例になろうとしている。
WSJは、以上のように要約して、中国労働者に累が及んでいる実態を報じた。
『ウォール・ストリート・ジャーナル』(8月24日付)は、「韓国製品ボイコット、中国の労働者を直撃」と題する記事を掲載した。
上海の北にある江蘇省塩城にある起亜自動車は。大幅な操業短縮を強いられている。
現状ではまだ、労働者の解雇は起こっていない。遠からず、そのリスクが現実になろうとしている。
中国政府は、韓国イジメの薬が効きすぎて中国労働者を苦しめる。
そういう予想外の事態が起ころうとしているのだ。
すでに、景気減速によって中国全体で失業者が増えているが、さらに失業者が増えるとなれば、中国政府が「韓国イジメ」で批判される側に回るのだ。
(7)「塩城は、韓国製品に対する非公式な不買運動で大打撃を受けている。
中国で起亜の自動車の売り上げが急減し、起亜の工場で働く労働者は労働時間と賃金の大幅削減を受け入れざるを得なくなった。
大規模な解雇は行われていないが、多くの労働者は生活のために配達やタクシーの運転手などのアルバイトをしなければならなくなった。
『反韓感情は私たちには何の役にも立たない』と起亜で働く26歳のチェンさんは言う。
チェンさんは起亜が罰せられることで中国の雇用が脅かされていると感じている。起亜で働く人たちの話では、7月は半分の給料で3日しか仕事をしていないという」
大規模な解雇は行われていないが、多くの労働者は操業短縮による給与減を補うべく、配達やタクシーの運転手などのアルバイトを余儀なくされている。
この事態の発生が、中国人労働者に「反韓感情」を植え付けるはずもない。中国政府の「メンツ」が、中国労働者を虐めるという事態を引き起こしているのだ。
(8)「起亜は塩城を代表する企業で、他のメーカーより賃金が高い。解雇が行われれば余波は避けられない。
『塩城に住んでいれば、親戚か友達か、友達の友達が必ず起亜で働いている』と、起亜の販売代理店のセールスマネジャー、サン・ナン氏は話す。
『自動車産業は塩城を支えており、何も起きてほしくないと誰もが思っている』。
中国では今年3月以降、自動車・ポップソング・ハイテク機器などありとあらゆる韓国製品の売り上げが急減している。
不買運動は公式な動きではない。
北朝鮮の核開発を受けて韓国が米国の戦域高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備したことへの報復として、中国国営メディアが不買運動を奨励している。
その結果、多くの中国人消費者は韓国旅行を控えたり、対立が起きるまで中国で大人気だった韓国のポピュラー音楽やテレビ番組を拒否したりしている」
中国社会が、いとも簡単に中国政府の「韓国製品不買」呼びかけに応じている。
このことに、中国国民の限りない前近代性と付和雷同性を感じる。
だが、中国国民にまで被害が及び失業者が出る事態になると、風向きは変わるはずだ。
そこまでいくと、中国政府の「負け」が確定する。今は、その瀬戸際にある。
不条理な「韓国イジメ」が、どれだけ韓国における中国イメージを悪化させているか。中国政府は、冷静にその損得を計算すべき時期にきた。
(2017年9月12日)
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