昨日の勉強会で外山先生が発表してくれた内容をのせたいと思います。訪問診療などを行っていて、高齢男性は女性と比べるとどうしてもデイサービスなど外に出るような介護サービスに消極的な印象があります。介護負担軽減やADL維持などを目的に医療者の立場からデイ導入などをおすすめすることもあります。おすすめするうえで、どのようなきっかけや心理的な背景があるのかを知るは1つのヒントになるかもしれません。
<高齢男性とデイサービスなどへの社会活動参加>
★矢野ら(川崎医療福祉学会誌、2008):老人会などの集団活動参加に積極的な男性16人と消極的な男性8人にインタビューして比較
積極群:周りからの誘いが多い、人とかかわる職業が多い、多くの人との交流する企画を希望
消極群:聴力障害、視力障害、疼痛などの症状を有する人が多い、一人作業や自営業が多い、個人や少人数で行える企画を希望
心理的要因への言及は乏しい
★小野寺ら(東北大医保健学科紀要、2008):介護予防事業と派生したグループ活動に参加している高齢男性4人(平均70.5歳)へのインタビュー。参加のきっかけと継続要因について質的分析
・きっかけ
退職を契機とした自己の課題の明確化:「閉じこもりがちな生活を通じ運動不足を認識」、「自己の身体の大切さを認識」、「地域の人々とのつながりがないことへの気づき」、「地域の一員としての自己の希求」
参加行動を促す外的要因:「自己の課題とその達成手段を同時期に認識する」、「地域の人々とつながる好機が付与される」
・参加継続の要因
事業参加による課題の達成:「運動による成果を実感」、「メンバーとのつながりを実感」
課題達成からのさらなる発展:「健康への知的探求への満足」、「地域の一員としての自己の獲得」
男性の課題指向性の強さが参加のきっかけ・継続要因に影響するとの考察
★
松下ら(日本PC連合学会誌、2015):30人の高齢男性へのインタビューを通じて高齢男性の社会的参加(DS,HHなど)に関する心理的背景要因を質的に分析
・内的要因:
「男性としての性質」:頑固、出不精、会話苦手、強がり、さみしがり、病人扱いは嫌
「仕事・役割へのこだわり」:仕事が別にある、役割ないとおっくう
「老いの受容」:体がいうことをきかないと受け入れ変わる
「趣味の存在」:仕事以外に趣味ない
・外的要因:
「参加者の割合」:男性の比率、同年代・少人数がいい
「会合・デイの内容」:内容でいく気変わる、弁当・酒は重要、女性講師
「アクセスと身体状況」:距離、移動手段、耳が遠い、つまずきやすい
・関係性の要因:
「家族との関係」:亭主関白、孫や子供の言葉には弱い
「男性参加者との関係」:仲間で集まりたい、集まる機会が少ない
「女性参加者との関係」:女性に負けたくない、恥をかきたくない
「介護・医療スタッフとの関係」:職員の接し方も重要
「近所との関係」:近所との交流が少ない、
(内的要因はなかなか介入は難しいが)外的要因、関係性要因に関しては介入の余地ありと分析
今回の勉強会で、ディスカッションとなり、みんなで共有した内容として「デイに行くことが目的にならないようにしよう、あくまで手段」といったところがあります。
「なんのためにデイに行くのか、その先に本人にとってどんなメリットがあるのか」といった観点を忘れないようにしないとなと思います。ついついデイに行ってもらうことが目的になってしまうことがありますが、まず、介護負担軽減を目的とするのか、それとも行くことで患者さんのQOLに(現在もしくは将来)寄与することを目的にするのか、実際に患者さんのQOLに寄与するのか、そのあたりを明確に整理していく必要があるのかなと思います。あたりまえのことですが・・・。