平塚のご当地麺「ラオシャン」に感じる地元愛
ここ数年、晦日に平塚の船宿から出るアマダイ船に乗るのが恒例になっている。アマダイは関西ではグジと呼ばれ珍重される高級魚で、柔らかな白身は一度味わうと病みつきになる旨さだ。美味を求めて毎年懲りずに沖へ出る。しかし穏やかな相模湾とはいえ、冬の海の寒さは厳しい。
そこで、釣りの後は必ず平塚の「ラオシャン」を啜り体を温める。ラオシャンは「平塚式タンメン」と呼ばれるご当地麺だ。一般的にタンメンと言うと、炒めた野菜がたっぷり盛られた丼を想像するだろうが、平塚式は全くの別物。ソーメンの様に細く白い麺と、酸味の効いたスープが特徴のオリジナリティ溢れる一杯なのだ。
平塚においてラオシャンは2系統が存在する。ラオシャンを考案した本家は平塚駅前の繁華街にある「老郷(ラオシャン)本店」。そして老郷本店で修業した方が出店したのが「花水ラオシャン」だ。老郷本店は硬派にタンメンと餃子のみで勝負。一方の花水ラオシャンは、おつまみメニューもあり、トッピングのバリエーションも豊富である。
スープは豚骨ベースの清湯。ほんのり効いた酸味の正体は「リンゴ酢」という。これがクセになるのだ。一方、喉越しの良い麺は自家製。かん水も卵も使用していないため「中華麺」ではなく、オリジナルのラオシャン専用麺だ。つなぎを使用していないのに十分なコシがあるから不思議。
そして、ラオシャンはタマネギの粗みじんとワカメが無くして成立しない。丁寧に調理・味付けされたチャーシューも絶品だ。澄んだスープに手を加えるのは気が引けるが、卓上のラー油やリンゴ酢を加えながら食べ進めていく。昼下がりの湘南。餃子も頼みタンギョーと洒落込めば、ご機嫌な時間が流れる。
こちらのお店は地元サッカーチーム「湘南ベルマーレ」のサポーターで、コラボTシャツも販売している熱の入れよう。選手もサポーターも多く訪れ、交流があるという。ご主人の地元愛を感じるエピソードだ。老郷という言葉には「古くからの親しい友」という意味がある。お店は創業60余年。平塚に欠かせない友である。
<店舗データ>
【店名】 花水ラオシャン 本店
【住所】 神奈川県平塚市花水台29-4
【最寄】 JR東海道線「平塚駅」南口徒歩20分