先日歯科の先生にお世話になりましたが、歯科でいつも感心させられるのが、痛くないように治療する工夫の数々です。昔は、歯の治療は痛くて、かなりの覚悟が必要だったのですが、今はほとんど痛みを感じることなく、治療をしてもらうことができます。耳鼻咽喉科の局所麻酔は歯科に比べて、まだまだ工夫の余地があると思われます。
耳鼻咽喉科の中耳炎や副鼻腔炎、あるいは扁桃の手術は、昔は局所麻酔で行っていました。。いろいろ痛くないように、工夫はしていましたが、患者さんにとっては、かなり辛い手術だったと思います。これらの手術は、現在では、全身麻酔で行われることが、多くなっています。
しかし、昔局所麻酔の手術をたくさんやったことで、身についたこともあります。局所麻酔では、局所の手術に集中しつつも、同時に常に患者さんの状態にも気をくばり、少しでも痛みを少なくするように、常に意識しなければなりません。その習慣は、通常の診察にも役立っています。
キャンセルなどで、若干ですがワクチンに余裕ができ、現在インフルエンザ予防接種の受付を再開しています。昨日も何人か、そうやって当日受付によって予防接種を行った子がいましたが、その中にお母さんによると、注射ではいつも暴れてしまって大変だという子がいました。暴れられたら、押さえつけるのも難しい、もう大きい子です。
痛いところを手で押さえると痛みが軽くなるというのは、日常よく経験します。押さえたことによる触覚の信号によって、痛みの信号の反応が弱くなる、というところでしょうか。子供に注射をするときは、左手で注射する上腕をつかみます。これは、動かないように固定する意味と、親指で注射器を固定して動かれても抜けないようにする意味がありますが、つかまれた触覚で、痛みの感覚を弱める目的もあります。私はさらに、注射をしながら左手の小指と薬指を動かして刺激して、その効果を高めるようにしています。もちろん、手早く皮下に正確に注射することに集中しつつも、子供に話しかけながら行うことも大切です。
その子にも、こうやって注射をしたら、暴れるどころかにこにこ笑ったまま、終えることができました。お母さんもほっとした様子でした。もちろん、他の先生もいろいろ工夫されているでしょうし、私の方法もいつもうまくいくとは限らないのですが、こういう風にうまくいくと、私にとっても嬉しいことです。