横浜市都筑区耳鼻咽喉科

南山田(センター北と北山田の間)の耳鼻咽喉科院長のブログ。

スギ花粉症の舌下免疫療法2

2014-01-22 15:23:28 | 院長ブログ

アレルギーの薬が効いているのは飲んでいる間だけですし、レーザー治療も数ヶ月から長くて数年しか効果が続かないとされています。しかし免疫療法(減感作)は、治療終了後もずっと効いていてくれる、ある意味完治の可能性のある、唯一の治療法です。また、この治療を行うことによって、スギ花粉症だけでなく、他の抗原に対する喘息や結膜炎にも、効果が期待できるとされています。

とは言え、免疫療法は、かなり長期間根気よく続けなければならない治療法です。“アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の実際と適応”の適応の3で、軽症から重症まで対象になり得るとされていますが、実際には、軽症の方には治療を続ける意志を持てないかも知れません。やはり対象は、毎年花粉症で苦しむ方、花粉症の期間は薬を続けなければならない方、薬があまり効かない方、薬を飲みたくない方、そして完治の可能性を望まれる方に、限られるでしょう。

以下は、“アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の実際と適応”の中の、“舌下免疫療法SLITの患者への確認”という項目です。治療を始めるにあたっては、これらを知っていただかなければならないというものです。

 


・花粉非飛散期も含め、長期間の治療を受ける意志がある(最低2年間程度)

・舌下アレルゲンエキスの服用(舌下に2分間保持)を毎日継続できる

・少なくとも1か月に1度受診可能である(発売1年以内は2週間に1回)

・すべての患者に効果を期待出来るわけではないことを理解できる

・効果があって終了した場合も、その後効果が減弱する可能性があることを理解できる

・副作用等の対処法が理解できる


 

自宅などで自分で行える治療とは言いながら、毎日、最低2年間、できれば3年間続けなければなりません。そして1ヶ月1回の受診が必要となっていますが、他の薬でもそうですが発売後1年間は2週間分の処方しかできませんので、当面は2週間に1回の受診ということになります。

また、それだけ頑張って続けても、全員に効果が出るわけではありません。 現在当院で行っている皮下注射によるハウスダストの減感作の場合、治療を行った4割の方は症状がほとんど出なくなる、4割は治療前より軽くなる、しかし2割には全く効果が出ない、と患者さんにお話しています。スギ花粉症の舌下免疫療法の効果も、せいぜいこれと同程度と考えられます。さらに、治療中は有効でも、終了後、効果が減弱する可能性があります。これについては、3年以上続けると、終了後減弱することが少ないとされています。

アナフィラキシーというのは、全身に強いアレルギー反応が出る副作用で、全身に発疹が出るだけでなく、喉が腫れて呼吸が苦しくなったり、血圧が下がってしまったりする、重い症状の出ることを言います。この副作用はたいてい投与後15分前後で出ます。注射で行うときは、病院にいる間に症状が出るので、すぐ治療が行われます。重症の場合、アドレナリンの筋肉注射、酸素吸入、点滴などが行われますが、そこまで至ることはまずありません。多数の患者さんの注射を行っている大きな病院のアレルギー外来でも、数年に1度しかありませんし、あってもさほど重症にならずにすぐ回復します。

注射に比べ、舌下免疫療法では、口の中の粘膜が荒れるなどの局所の小さな副作用はあっても、アナフィラキシーはきわめて少ないとされています。舌下免疫療法は欧米では既にずっと以前から行われていますが、アナフィラキシーの報告は世界でも数例のみで、それもいずれも大事には至っていません。日本での治験では、1例もありませんでした。しかし稀とはいえ可能性が全くないわけではないので、自宅などでご自分で行う方法ですから、万が一起きてしまったときには、病院に救急受診する必要があることを理解していただかなければなりません。

 

実際の方法

2週間分のエキスを処方しますが、初回は院内で投与を行います。少ない量のアレルゲンエキスを舌下に滴下し、2分間保持した後、飲み込みます。その後、30分間は院内にいていただき、副作用のないことを確かめます。

翌日からは、それをご自分で行っていただきます。投与開始後2週間は、毎日だんだん量を増やしていきます。1日1回あらかじめ決められた量を、舌下に滴下し、2分間保持した後、飲み込みます。その後5分間はうがいと飲食を控えるようにします。投与後2時間は激しい運動や入浴を避けることも必要です。

2週間後には、受診して副作用の有無などを確認した上で、維持量のエキスを2週間分処方します。原則としてこの維持量で、毎日治療を続けていきます。その後も2週間に1度の受診が必要です。(発売後1年以上経てば、4週間分の処方が可能になります。)2年間はこれを続けます。

 

花粉飛散期には副作用が起きやすい可能性があるので、飛散期まで3ヶ月は余裕を持って治療を開始すべきとされています。従って治療を開始するのは、4月中旬から10月までの間が望ましいということになります。

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スギ花粉症の舌下免疫療法1

2014-01-22 10:18:03 | 院長ブログ

今週になってインフルエンザの患者さんが急に増え始めたようで、インフルエンザ罹患後に中耳炎になって耳鼻科を受診するお子さんも増えています。その一方で、症状が出始めたと訴えていらっしゃるスギ花粉症の患者さんも、少しずついらっしゃっています。まだほんの少数の花粉しか飛んでいないでしょうから、かなり敏感な方か、実はハウスダストなどの他のアレルギーの症状の可能性もありますが、いずれにせよ、もうすぐ花粉症の季節になります。

花粉症の治療は、第一に花粉をできるだけ避けること、第二が薬です。症状が出始めてからでは、薬が効きにくいので、毎年花粉症の症状で悩まれる方は、花粉飛散開始の1-2週間前、ということは、1月下旬から2月のはじめまでに、薬を前もって飲み始めることが薦められます。これを初期療法と呼んでいます。

もうひとつの花粉症の予防法は、レーザー治療です。レーザーをやっても、季節中全く症状がなくなるわけではありません。しかし初期療法と比較して、レーザー治療の方が、予防効果が高いと報告されていますし、当院の患者さんでも、レーザー治療をやるようになって、症状が格段に減ったという方も多くいらっしゃいます。

花粉症治療は、さらにもうひとつあります。減感作療法(免疫療法)と言って、花粉のアレルギーを起こさせる抗原を体に与え、薄い量からだんだん増やしていき、ある程度の量に達したらその量で長期続ける方法です。従来は注射しかなかったのですが、当院でもより必要性の高いハウスダストに対してしかやっておらず、スギ花粉症に対しては行っていませんでした。4月以降、それが口から与える(舌の下に液体を垂らす)方法でできるようになります。今季の花粉症には間に合いませんが、この方法は薬やレーザーと違って、寛解(治療を終了しても症状が出ない。ある意味完治)が得られる可能性のある方法です。

このスギ花粉症に対する舌下免疫療法は、準備が出来次第、当院でも行う予定です。適応になるのは下のような患者さんです(日本鼻科学会、アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の実際と適応より)。

 

適応

1.      当初は原則として12歳以上を対象とする。

2.      特異的IgEが病態に関与している症例を対象とする。

3.      軽症から重症まで治療対象となり得る。

 

適応外(禁忌)症例

1.      β阻害薬使用中の症例

2.      %FEVが70%以下、または不安定な気管支喘息患者

3.      全身ステロイドの連用や抗癌剤を使用している患者

4.      重症の口腔アレルギー症候群

5.      治療開始時に妊娠している症例

6.      急性感染症に罹患している時

7.      自己免疫疾患の合併や既往、または濃厚な家族歴を有する患者

8.      転居の予定がある、または継続的な通院が困難である例では慎重に考慮する

 

適応の1は、小児も有効という報告はあるのですが、今回の製造承認のための臨床試験が12歳以上で行われたため、当面はこの年齢が対象ということになります。2に関しては、血液検査(RAST)で、スギ花粉に対する抗体が陽性であることを、確認する必要があるということになります。過去にこの検査をしていなければ、それを先に行うことになります。

適応外(禁忌)の1のβ阻害薬というのは、インデラル、セロケン、アテノロール、アーチストといった、高血圧、狭心症の薬のことです。これらの薬を服用している方は、舌下免疫療法の起こり得るなかで最も大きな副作用であるアナフィラキシーを起こしやすいとされています。

2の重症の喘息の方は、抗原の投与によって喘息発作を招きやすいのです。スパイロメトリーという検査で、1秒率が70%以下というと、かなりの重症ですので、症状だけでも見当がつくかも知れませんが、当院にはスパイロメータがありますので、必要なときにはこの検査も行います。

5の妊娠に関しては、既に妊娠前から免疫療法を行っている方であれば、胎児に対する影響は少なく、継続は可能とされています。しかし、稀とはいえアナフィラキシーを引き起こし得る治療法なので、現時点では敢えて妊娠中に開始することは、避けるべきということのようです。

 

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