今週になってインフルエンザの患者さんが急に増え始めたようで、インフルエンザ罹患後に中耳炎になって耳鼻科を受診するお子さんも増えています。その一方で、症状が出始めたと訴えていらっしゃるスギ花粉症の患者さんも、少しずついらっしゃっています。まだほんの少数の花粉しか飛んでいないでしょうから、かなり敏感な方か、実はハウスダストなどの他のアレルギーの症状の可能性もありますが、いずれにせよ、もうすぐ花粉症の季節になります。
花粉症の治療は、第一に花粉をできるだけ避けること、第二が薬です。症状が出始めてからでは、薬が効きにくいので、毎年花粉症の症状で悩まれる方は、花粉飛散開始の1-2週間前、ということは、1月下旬から2月のはじめまでに、薬を前もって飲み始めることが薦められます。これを初期療法と呼んでいます。
もうひとつの花粉症の予防法は、レーザー治療です。レーザーをやっても、季節中全く症状がなくなるわけではありません。しかし初期療法と比較して、レーザー治療の方が、予防効果が高いと報告されていますし、当院の患者さんでも、レーザー治療をやるようになって、症状が格段に減ったという方も多くいらっしゃいます。
花粉症治療は、さらにもうひとつあります。減感作療法(免疫療法)と言って、花粉のアレルギーを起こさせる抗原を体に与え、薄い量からだんだん増やしていき、ある程度の量に達したらその量で長期続ける方法です。従来は注射しかなかったのですが、当院でもより必要性の高いハウスダストに対してしかやっておらず、スギ花粉症に対しては行っていませんでした。4月以降、それが口から与える(舌の下に液体を垂らす)方法でできるようになります。今季の花粉症には間に合いませんが、この方法は薬やレーザーと違って、寛解(治療を終了しても症状が出ない。ある意味完治)が得られる可能性のある方法です。
このスギ花粉症に対する舌下免疫療法は、準備が出来次第、当院でも行う予定です。適応になるのは下のような患者さんです(日本鼻科学会、アレルギー性鼻炎に対する舌下免疫療法の実際と適応より)。
適応
1. 当初は原則として12歳以上を対象とする。
2. 特異的IgEが病態に関与している症例を対象とする。
3. 軽症から重症まで治療対象となり得る。
適応外(禁忌)症例
1. β阻害薬使用中の症例
2. %FEVが70%以下、または不安定な気管支喘息患者
3. 全身ステロイドの連用や抗癌剤を使用している患者
4. 重症の口腔アレルギー症候群
5. 治療開始時に妊娠している症例
6. 急性感染症に罹患している時
7. 自己免疫疾患の合併や既往、または濃厚な家族歴を有する患者
8. 転居の予定がある、または継続的な通院が困難である例では慎重に考慮する
適応の1は、小児も有効という報告はあるのですが、今回の製造承認のための臨床試験が12歳以上で行われたため、当面はこの年齢が対象ということになります。2に関しては、血液検査(RAST)で、スギ花粉に対する抗体が陽性であることを、確認する必要があるということになります。過去にこの検査をしていなければ、それを先に行うことになります。
適応外(禁忌)の1のβ阻害薬というのは、インデラル、セロケン、アテノロール、アーチストといった、高血圧、狭心症の薬のことです。これらの薬を服用している方は、舌下免疫療法の起こり得るなかで最も大きな副作用であるアナフィラキシーを起こしやすいとされています。
2の重症の喘息の方は、抗原の投与によって喘息発作を招きやすいのです。スパイロメトリーという検査で、1秒率が70%以下というと、かなりの重症ですので、症状だけでも見当がつくかも知れませんが、当院にはスパイロメータがありますので、必要なときにはこの検査も行います。
5の妊娠に関しては、既に妊娠前から免疫療法を行っている方であれば、胎児に対する影響は少なく、継続は可能とされています。しかし、稀とはいえアナフィラキシーを引き起こし得る治療法なので、現時点では敢えて妊娠中に開始することは、避けるべきということのようです。