よしーの世界

好きな神社仏閣巡り、音楽、本、アートイベント情報を中心にアップします。

お艶殺し(おつやころし)   谷崎潤一郎

2022-10-16 07:35:08 | 
若い人だったらタイトルだけ見ると、一瞬どういう意味か分からないかも。しかし、古風な日本語で

見事に綴られた「お艶殺し」は人形浄瑠璃や歌舞伎で実演してほしい程です。お店(たな)の一人娘

・お艶と主人夫婦の信頼も厚い奉公人・新助の駆け落ちは、思いもつかない展開に読者は翻弄され、

可憐な道行き(見せ場)と陰惨な所業の連続に夢中になって読み進めてしまうことでしょう。


冒頭「宵の五つの刻限に横町の肴屋の春五郎が酔っ払って跳び込んで来て、丼の底をちゃらちゃらさ

せながら、此の間銀座の役人に貰ったばかりだと云う、出来たてのほやほやの二朱銀を掴み出して、

三月あまりも入れ質して置いた半纏やら羽織やら春着の衣装を出していった後では、いつも忙しい駿

河屋お店も、天気の悪いせいか一人として暖簾をくゞる客は見えない。」という調子で流れるように

謡うように、ずっと書かれているのです(実際は縦書きなので雰囲気がズイブン違う)


言い廻しも昔風で、使われている漢字も旧いモノが多いので、読むのに少し苦労するかもしれません。

そういえばドナルド・キーン氏が当時使い慣れた旧い漢字で書いていると新聞社とかに全部書き直さ

れてしまったと言ってました。その頃でも大家の谷崎潤一郎大先生ですから、自分の思うような漢字

で書いていたということです。


2作目の「金色の死」は一転して、若い谷崎潤一郎の芸術に対する自問自答のような小説で、谷崎の

生い立ちに則したような作品です。簡潔な文章で書かれていて青い時代の谷崎が見えます。谷崎作品

は結構読んでいるつもりですが、作品によって千変万化の日本語独特の文章は素晴らしく、とても魅

惑的です。
コメント
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