【問題】
01. 教育の中立や公正、教育水準の確保などの実現の必要性、教科書という特殊な形態での発行の禁止に過ぎないという制限の程度などを考慮すると、ここでの表現の自由の制限は合理的で必要止むを得ない限度のものというべきである。
02. 教科書の目的は学術研究の結果の発表ではなく、検定制度は一定の場合に教科書の形態での研究結果の発表を制限するに過ぎないので、学問の自由を保障した憲法23条の規定に違反しない。
03. 行政処分には憲法31条による法定手続きの保障が及ぶと解すべき場合があるにしても、行政手続きは行政目的に応じて多種多様なので、行政処分の相手方に告知や弁解、防御の機会を常に必ず与える必要はなく、教科書検定の手続きは憲法31条に違反しない。
04. 教科書検定の審査や判断は申請図書の内容が学問的に正確か、中立・公正か、教科の目標などを達成する上で適切か、児童や生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの観点からなされる学術的・教育的な専門技術的判断なので、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられる。
【解答】
01. ○: 最判平05.03.16(家永教科書裁判)理由二3
(略)本件検定についてみるのに、
(一) 前記のとおり、普通教育の場においては、教育の中立・公正、一定水準の確保等の要請があり、これを実現するためには、これらの観点に照らして不適切と認められる図書の教科書としての発行、使用等を禁止する必要があること、
(二) その制限も、右の観点からして不適切と認められる内容を含む図書のみを、教科書という特殊な形態において発行を禁ずるものにすぎないこと
などを考慮すると、本件検定による表現の自由の制限は、合理的で必要やむを得ない限度のものというべきであって、憲法21条1項の規定に違反するものではない。(略)
02. ○: 最判平05.03.16(家永教科書裁判)理由三
教科書は、…(略)…、学術研究の結果の発表を目的とするものではなく、本件検定は、申請図書に記述された研究結果が、たとい執筆者が正当と信ずるものであったとしても、いまだ学界において支持を得ていなかったり、あるいは当該学校、当該教科、当該科目、当該学年の児童、生徒の教育として取り上げるにふさわしい内容と認められないときなど旧検定基準の各条件に違反する場合に、教科書の形態における研究結果の発表を制限するにすぎない。
このような本件検定が学問の自由を保障した憲法23条の規定に違反しないことは、当裁判所の判例の趣旨に徴して明らかである。(略)
03. ○: 最判平05.03.16(家永教科書裁判)理由五3
(略)行政処分については、憲法31条による法定手続の保障が及ぶと解すべき場合があるにしても、それぞれの行政目的に応じて多種多様であるから、常に必ず行政処分の相手方に告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を必要とするものではない。(略)
04. ○: 最判平05.03.16(家永教科書裁判)理由七2
(略)本件検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの様々な観点から多角的に行われるもので、学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられるものというべきである。(略)
【参考】
家永教科書裁判 - Wikipedia