ついに恐山に入山した。イタコにお前の前世はああだ、来世はこうだと言われ、これまでの人生観が吹き飛ぶ衝撃を受けるのではないかと恐れていたけれど、そんな通過儀礼は全くなかった。
しかし、菩提寺境内の様相は、先月噴火し、溶岩流に焼け尽くされたばかりの無間地獄のような所に連れてこられた迫力だった。ゴジラやキングコングの特撮スタッフでもこんなにリアルに無気味な舞台は作れないだろう。
山肌の多くが草木も生えない剥き出しの砂山となり、麓には黒く焼け爛れた岩石が重層する合間の所々から熱蒸気が噴き出し、硫黄の匂いがそこら中に漂い、流れる水の成分のためか小川の底は黄色や朱色に変色していた。誰が積んだのか賽の河原を模した瓦礫の山が、いつ崩れるか分からない日常の不安感を煽っていた。
賽の河原を通り抜けると、それまでの殺伐とした様相から、白い清浄な砂浜の舞台に変わり、その向こうには穏やかで透明なみずうみが広がっていた。まるで地獄と極楽浄土をビジュアル化したジオパークのような霊場だった。
たっぷり巡礼した後は、境内に設けられた硫黄温泉に無料で浸からせていただいた。
恐山
賽の河原に
石を積む
焼け爛れたる
こころ崩れそ