燎原の火は一帯を焼き尽くすまで消し難し、と言うけれど、いよいよ人間社会のパニックの極みが忍び寄りつつあるようである。
経営資源の3要素はヒト、モノ、カネと言い慣わされているけれど、パニック時の人間行動はモノ、カネ、ヒトの順序になる。かつてのオイル・ショック時や今次のコロナ・ショックのように、トイレットペーパーやマスクなど、まずモノに向かう。それでパニックが沈静化すればお終い。それでも鎮火しないで燃え盛っていると、次は昭和金融恐慌時の取り付け騒ぎに代表されるカネに向かう。それでも収まりがつかなければ、最後は一揆や戦争に突き進み、ヒトに向かう。
いま第2段階が燻ぶり始め、エジプトでは預金引き出し額の制限を始めた。品物不足を懸念して買いだめに走るのを阻止する狙いがあるようである。まだモノへのパニックを抑えるのが主目的であるけれど、日本でも他人事でない。
海外での都市封鎖(ロックダウン)が対岸の火事でなく、首都圏でも新型コロナウイルス感染拡大状況を見ながらカウントダウンが始まっている。超有名タレントがお亡くなりになるなど、日本だけが抑え込みに成功しているわけでない。欧米のような感染爆発がわが身に迫れば、動揺が激しくなるのは目に見えている。
まだ、現金給付がどこに向かうかを心配しているうちは良いけれど、減収や給与停止が現実化すると、日々の資金繰りや我先の資金手当てのための金融機関での行列に目を向けざるを得なくなる。これが連鎖反応を起こし、あの銀行の資金が底をつきそうだといった誤った噂が噂を呼びだすと、取り付け騒ぎに発展し、金融パニックにもなりかねない。
こうした忌まわしい事態を避けるため、いま大事なのは政府の信用と実行力である。緊急経済対策の中身について、どう工夫すればお目当ての業界に資金還流し、ひいては政官の懐を潤すかを、官庁と業界で談合している場合ではない。お手盛りでなく、実体経済に真水を流すことがなければ、大恐慌に突入する瀬戸際である。地鎮祭は清浄に行われなければ堅固な家が建たない。
硝子越し
欲しき物見ゆ
掟あり
構ふものかと
みななだれ込む
夏のように暖かだった昨日から今日は一転、牡丹雪が関東地方を舞った。気温差が1日違いで20度近くもあったという。各知事らが懸命に外出自粛を要請しているにもかかわらず、元気な若者たちが繁華街にカラオケなどに繰り出したと伝えられているので、そのお仕置きだったかもしれない。おかげで中山競馬は最初の2レースのみで、第3レースから出走が取り止めとなった。
雪桜
散るを惜しむか
白妙の
衣羽織りぬ
春を永久にと
桜の開花が例年より早く、暖春をゆったり味わっていたのに、新型コロナウイルス対策で外出自粛が叫ばれている関東地域をきょうは大雪が襲った。春の珍事かと思いきや、遅い雪の記録は、東京では4月17日というのが、近くは2010年とか3回も起きており、驚くには値しないようである。桜と雪のコントラストもいいけれど、杉のみどり葉に降りかかる雪も目に鮮やかで、風情がある。工藤夕貴の『ヒマラヤ杉に降る雪』というのもあった。
ヒマラヤの
頂き登りぬ
心地せむ
みどり鮮やか
杉に降る雪
新型コロナウイルスが蔓延する異常な春のせいか、東京・上野公園では桜が満開した後、関東にも雪が盛んに降った。菌を縮み上がらせる浄化作用が期待される。
花や散る
雪や舞ひけむ
病む春の
道紛らわせ
コロナ塞げよ
SF作家でも空想できなかった外出自粛令が世界に行き渡る世界はいろんな楽しい、だけでなく悲しい、または笑える物語を現実に紡ぎ出してくれそうである。事実は小説より奇なり、とはこういうことであった。小説家にとってはこれから起きることはネタの宝庫になるのだろうか。あるいは頭の中で一生懸命に捻っていたモチーフやコンテが現実より詰まらなくなって、営業妨害になるのだろうか。
新型コロナウイルス感染拡大が切羽詰まった国々では、日本のように自粛とか要請とか言ったレベルでなく、外出禁止同然の相互監視社会に移っているようで、違反者に罰金とか拘束、鞭打ちなどの処罰が加えられているから、トランプ米大統領がよく口にする魔女狩りの中世世界に戻ったとも言える。
窮屈なのでウイルスにはさっさと退散してもらいたい気分であるけれど、人間側には感染を避けるためにお互いの距離を置くソーシャル・ディスタンシングくらいしか有効な手立てを見出せていないのだから、地球を一渡りするまでは止む気配はない。
COVID-19のビフォー・アフターでは、卑近例でいえば挨拶の方法として握手、抱擁、キスを避け、肘タッチや合掌を取り入れるなど、人類の文明史的な変革が起きていくかもしれない。何せ従来だと、中高年の引きこもりなんかは社会の劣後者と見做されかねなかったけれど、今や奨励されるのだから、人間の生活意識も90度から180度まで逆転というか、改めていかなければならない。子供は家族の独占物でなく、社会の共有物として育てようという発想になるかもしれない。障害者や老人の介護や夫婦の関係が、より社会化されていくこともあり得る。カップルの概念が男女間のみでなくなってきたのだから、あと一歩前に進んでもおかしくない。
新型コロナウイルス以降の時代は、頭を柔軟にしておかなければ置き去りにされてしまう危険性がある。たった百年にも満たない人生でも、テレビなど無かった頃から、口で命じたらTVが映り出すように変化した。在る物が消え、無い物が生まれる世の中である。人知では推し測れない生々流転の流れ、法則に身を任すしかない。
ジューンブライドにはまだ間があっても、新生活をスタートするのにぴったりの春に、結婚式を挙げようと予定してるカップルも多いと想像できるけれど、イベント自粛のムードの中で、強行突破できるか迷うかもしれない。一生に一度の事だから不要不急でないと主張できそうだけれど、今どき一生に一度は当てはまらないと反論されたり、小池東京都知事が花見は来年でもできるので控えましょうと言うなら、結婚式も来年に延ばせるのではないかとなってしまう。ちなみに某社の調べでは、結婚月人気ランキングの1位は10月で、3月5位、4月8位、5月3位と、春の挙式もそれなりにはある。
プロ野球阪神の選手が感染したこともあってスポーツ面に目を向けると、もう中止になったのに、センバツの名勝負とか、プロ野球のレジェンド選手みたいなタイトルが並ぶ。そんな古臭いのはええでと思って、スポーツ速報をクリックすると、3月15日のプロ野球オープン戦と大相撲春場所千秋楽以降、更新されていない。数日前に頑張り過ぎて顰蹙を買ったK-1以外にホットなスポーツ試合がなく、生ものが無くなってしまっている。さぞスポーツ紙とか専門情報誌は困っているのだろうな。記者もフリーライターもテーマ探しに苦労しているに違いない。こんな異常乾燥警報の中なので、取材対象はそれ以上に気を付けなくてはならない。普段なら目をつむってもらえるゴシップでも、ドカーンと取り上げられてしまう、地雷の道を歩くようなものである。そこら中に文春砲が狙っているような緊迫状況は、読者としては楽しみだなあ。
楽しめない緊迫状況は、目に見えないウイルスに劣らない破壊力を持つ、イナゴの猛威である。アフリカをなめ尽くし、ユーラシア、アジアに進軍中と伝えられる。これを口にすると煽り情報拡散の罪で検挙されるかもしれないけれど、こんなものがユーラシアの穀倉地帯を食い荒らしたら、世界の食糧事情が激変してしまう。次は米大陸を襲うかもしれない。マスクやトイレットペーパーどころの騒ぎでなく、飢えとの戦いに突入すれば、1か月分くらい買いだめしても、食い繋ぐ以前に野盗に襲われる危険が身に迫るであろう。週末は外出せずに、この対処法をよく考案しようと思う。
ういるすに
次いで蝗の
待ち受くる
無間地獄や
出かけられけむ
「うーん、G7首脳TV会議なんてのんびりした事をやってないで、トランプ・習の米中トップ緊急会談でコロナ撲滅と通商摩擦解消で歴史的協調を演出するしか局面打開の道はないな。1929型の大恐慌に突入するかどうかの岐路に立っているので、一世一代の大勝負に打って出てほしい。頼むで。」と、16日に両首脳に直言しておいたら、やっと27日に実現した。米国の感染者が中国を上回って、尻に火が付くまでお互いに意地の張り合いっこをしていたのだから、世界2大国の指導者の資質としてどうかとも思うけれど、まあ素直に従ってくれたことには謝意を表したい。
日本では首都圏の外出自粛要請など、新型コロナウイルス感染の爆発拡大防止に向け、オリンピック延期決定を機に本格化しているけれど、手遅れ気味なのでやるときは徹底的に実施しなければならない。インドでは自粛要請に従わない者たちに対し、街路で動きを制止し、鞭などで引っ叩いている動画が流れているけれど、安倍首相も小池東京都知事もぜひその覚悟で踏み込んでほしい。生温い手法で“やってます感”を出すだけで、お茶を濁していては、全く効果が出ないだろう。
AP通信はフィリピンの重篤感染者へのインタビュー記事を流した。彼は日本旅行の帰りの航空機で、後ろの席の同国人からコロナ菌をうつされ、死の恐怖を味わったと言っている。日本政府はこうした情報にも目を配り、その感染源の乗客を特定し、日本での行動範囲を追跡し、感染ルートになっていないか徹底調査を実施すべきである。
日米で通年予算あるいは緊急経済対策予算が成立し、株式市場では太平を謳歌しているようであるけれど、一方で米国の雇用情勢は新規失業保険申請が史上空前の328万件にも達し、コロナ禍不況の入り口がぱっくり開いた気配もある。企業活動の全世界にわたる停止拡大が各国の財政金融対策によって一時的に凌げても、現代資本主義社会が味わったことのない未踏の経済混乱の挑戦が待ち受けているような気がする。
ぽかぽかの春日和も、外出自粛が試される週末にかけグッと下り坂になるとか。29日日曜日には東京辺りにも大雪警報が出たようである。私は常も周辺を小歩く程度で、外出自粛が習い性なので普段と変わりはないけれど、中国を抜いた米国のような感染者拡大は周囲に迷惑なので、日本人が好みの番茶でも啜りながらまったり過ごしてほしいものである。
引きこもり
常はひんしゅく
かふめれど
この時ばかり
褒めらるころな