エネルギーと食糧の武器化 備蓄米は20日でなくなる?“持たざる国”ニッポンの未来【報道1930】
TBSNewsDeg¥ より 220625
石油、天然ガス、穀物、肥料…これらに恵まれたエネルギー・食料大国ロシア。
ロシアはこれを“武器化”し、世界に強い姿勢を見せている。
確かにエネルギーと食料、この2つを持つことは、いざというとき圧倒的に有利だ。だが日本の食料自給率は3割台、エネルギー自給率に至っては約1割というのが現実だ。
ではどうしたらいいのか。“持たざる国”の明日を議論した。
エネルギーと食糧の武器化 備蓄米は20日でなくなる?“持たざる国”ニッポンの未来【報道1930】
■「オイルショックの教訓…皮肉にもその一つがロシアだった」
日本は食料もエネルギーも自給には程遠い状況だが、食糧の場合とエネルギーの場合では事情が異なると国際政治学者の森本敏氏は言う。食糧は嗜好によって美味しいもの、色々なものを食べたいから自給率が下がっている。
国内で取れる米・野菜・魚をもっと食べれば自給率を上げることはできる。しかし…
ー国際政治学者 森本敏元防衛大臣
「エネルギーは自給率11%で、ほとんどは中東から原油を買っている。これを何とかしようと、自分の国で自給率を上げるというのは政治的に難しい。原子力は国民の理解が得られない。再生可能エネルギーはコストがかかる。エネルギーの問題はかなりクリティカル(危機的)」
となると、日本のリスクヘッジとしてのエネルギー対策は輸入先の分散くらいしかできないのだろうか?かつて経産省で通商交渉の最前線にいた細川教授はいう。
ー明星大学 細川昌彦教授
「私たちは石油危機を経験してる。私自身第2次オイルショックの時に原油の輸入を担当していた。ものすごい騒ぎでしたが、2度のオイルショックで日本の脆弱性に直面して、石油備蓄を始め、省エネルギーを始め、供給元の多角化を進めた。中東依存があまりに凄かったんで輸入元を分散した。皮肉なことにその分散したひとつがロシアなんですよ。サハリンの油田…。他にはメキシコとか…」
■「食糧を国家の存続にかかわる重要なアイテムだと考えていない」
世界に目を向けると“持たざる国”は当然のことながら日本だけではない。だが、ほかの“持たざる国”と日本が大きく違う点は“食糧の安全保障”だ。二つの国を例に挙げた。
イスラエルの場合、国土の60%が砂漠にもかかわらず食糧自給率は90%以上に達した。なぜか。
IT技術を活用して砂漠での農業に成功。具体的には「点滴灌水」という根の部分だけに必要な水分を供給し、馬鈴薯・トマト・ピーマンなどを栽培している。さらに2015年までに、首相直轄で国防省の下に、経産省が管轄する食糧安全保障組織「緊急食糧供給庁」が設立されている。
さらにスイスの場合、国土の多くが農業に不向きな山岳地帯だが、食糧自給率は50%だ。酪農・畜産では100%を達成している。なぜか。
スイス政府は2017年、憲法に食糧安全保障の条項を追加。民間企業には食糧・物資の備蓄を義務付ける代わりに税・金利面で優遇する仕組みを作り、危機に備えるようにしている。
ー国際政治学者 森本敏元防衛大臣
「日本は食糧安全保障という言葉だけは知っていて、食糧を国家の生存にかかわる重要なアイテムと考えていないということ。いろんな理由があって複合されているが、やっぱり戦後の我々の生活から考えると、口が肥えてきちゃったんですよ。
本当に美味しいものを食べようとするわけですよ。農家にすればお米を作る労働をするよりも、もっと付加価値の高いものを作って高い値段で売って豊かな生活をしようと思う…。
(中略)日本人のパンの贅沢さって、ケーキのようなパンを食べてる。
こういうこと言っちゃいけないけど、ウクライナから小麦を買って食べない。だから日本はウクライナからほとんど小麦を買っていない。こういう贅沢は農業を変質している」
国民の嗜好も、農家の考えも食糧安全保障とはかけ離れている日本。イスラエルやスイスのように国が明確な政策を打ち出さないと何も変わらない。
ー明星大学 細川昌彦教授
「日本は前提としてあるのが危機感の欠如だと思います。イスラエルは1948年の独立から10年毎に中東戦争をしている。すると戦時下いかに国内で食料を確保するか、切迫した状況を経験している。
だから点滴灌水にしても農業ベンチャーを集めてイノベーション起こして、その技術を今度は輸出したりもしている。背景に危機感があるってこと。
でも日本は、例えば米余りで農家が困っているから減反政策、っていうような平時の農業政策しかしてこなかった」
減反政策の結果はどうなったのか…コメの生産量のグラフをみてみる。1961年をゼロとした場合、各国ともに生産量を増やしているが日本だけがマイナスとなっている。各国との差は“ワニの口”のようだ。さらに農地自体も減少している。いざというときに作ろうにも土地はないのだ。
ー明星大学 細川昌彦教授
「今も経済安全保障の一環で食糧安全保障を叫んでいるんですが、それは予算確保が目的なんです。減反してここに毎年3500億円もかけて農地を減らしている。安全保障に逆行している。
農家を守るんだったら直接支払いをやればいいわけで、国民のための食糧安全保障ならば、まずは減反政策を止めるところから始まるのではないか」
細川教授は台湾有事の際、シーレーンが封鎖され、日本に何も入ってこなくなる。そういう場面を想定した農業政策を立てるべきだと語った。
■日本のコメの備蓄は20日でなくなる
では有事の場合、日本にどのくらいの備蓄があるのか…。中国と比べながら見てみよう。
日本のコメの備蓄は約100万トン。アメリカの農務省の調べでは、中国は1億1200億トンのコメを備蓄しているという。確かに人口には差があるが、この備蓄だけで全国民をどのくらい養うことができるのか…。
資源・食糧安全研究所の柴田昭夫代表が、独自の推計で生存に必要なコメの量を1日一人430グラムと試算している。これをもとに番組で試算したところ中国は186日、日本は20日で底をつくことになるのだ。
日本の備蓄の考えは、過去の不作になった時のコメの生産量を参考に考え、中国は食糧安全保障の考えで備蓄をとらえている。
中国はコメだけでなく、トウモロコシや小麦など世界で備蓄されている量の半量を自国に持っているとみられている。
■「半導体は台湾の“護国神山”」
食糧自給率もエネルギー自給率も日本とほぼ同じでありながら、それに対する直接的な対策よりも全く別の方法で世界を生き抜こうとしているのが、お隣・台湾だ。
台湾は最先端の半導体の製造において世界シェアは実に92%だ。この圧倒的シェアに満足することなく約16兆円を投じて、4企業合わせて20の新工場を建設しようとしている。ちなみに敷地面積の合計は東京ドーム40個分以上だという。
台湾の狙いはどこにあるのか?半導体を専門とする大学院の院長に話を聞いた。
⚫︎国立台湾大学「重点科技術学院」 闕志達(けつしたつ)院長
「半導体は戦略的資源になっている。全世界の経済にとって台湾の重要性は、ここ1、2年で知ってもらえた。
(中略)中国では『台湾を取り戻す、TSMCを奪い取る』という発言もあるが、そうなったら工場が破壊されるだけです。今のウクライナを見ればわかるでしょ。もし台湾でそういうことが起きたら工場が止まる。再稼働まで半年から1年かかる。そうなれば世界のサプライチェーンが終わる。アップルのスマートフォンも出荷されなくなる。使われているのは全部TSMCの半導体ですから。
(中略)衝突が起きてから解決するのではなく、世界は未然に防ごうとする。そのため各国は今後台湾に注目するでしょう」
何かあったら半導体が手に入らない。だから世界各国が台湾有事を許さないだろうという、まさに新時代の安全保障政策だ。国際政治が専門の鈴木教授は言う。
ー東京大学公共政策大学院 鈴木一人教授
「台湾では半導体を護国神山と呼ぶ。国を守る神様の山ですよ。元は台湾の南北を貫く中央山脈のことなんですが、まさに自らを守るために台湾は半導体に力を入れた。しかも世界がそれに依存している。つまり世界にとって不可欠な存在になることによって自分たちを守る」
ー明星大学 細川昌彦教授
「キーワードは“不可欠な存在”になること。そのために限られた人材と資金リソースをどこに投じるか、それを見定める戦略が大事になる。台湾にとってはそれが半導体だった」
世界にとって不可欠な存在であれば、世界が守ってくれる。きわめて合理的で、もっともな考え方だが、相手が中国であることに森本氏は懸念を抱く。
ー国際政治学者 森本敏 元防衛大臣
「中国は合理的であるかわからない。(中略)私が中国のリーダーだったら、台湾の持ってる半導体のノウハウと資源をそっくりそのまま手に入れることはできないか考える。それができれば中国は圧倒的に強くなる。
中国は2~3日でサイバーとかを使って、武力ではなく台湾の半導体を占有したら…そういう道もないわけではない。そのこともあって台湾は、半導体の工場を日本やアメリカに分散して生き残りを図っているんじゃないか」
(BS-TBS 『報道1930』 6月22日放送より)
💋1970年代 オイルショックであれだけ右往左往したのに、
計画停電にtvの放送時間短縮、街の照明制限、トイレ紙不足、洗剤不足。
喉元過ぎれば熱さ忘れる、の典型。
の言葉通り、マスゴミ(特に朝毎)と政治家、はては大手製造業経営者までもが!
この報道がTBS系なのが皮肉な事、おまえが言うか?まあ言わんよりマシ。後悔先に立たず)。元々左翼系が世界知らずだったが右翼も…
予算配分の固定化、既得権益絶対的確保は思考停止の典型。財政の持つビルトインスタビライザーの本来の機能が?まるで共産主義的計画経済志向。
不思議の国日本。それでも、政治は変わらない⁈ 実際に起これば又…そら恐ろしい。
世界製造シェアNo1を片っ端から、隣国に譲る太っ腹な経営者!