「地球温暖化」の知られざる真実…夏の「猛暑」でこれから起きる「本当にヤバいこと」
現代ビジネス より 210805 藤 和彦
⚫︎「猛暑」のヤバすぎる現実
猛暑による恐怖が世界規模で広がっているが、日本も無縁ではなくなってきた。
その影響はただ「暑い」ということだけではなく、我々の食卓にも深刻な影響を及ぼしかねないのだ。
⚫︎世界的な「猛暑」がやってきた
ここのところ、米国、カナダなどの北米や欧州、ロシア、インド、イラクなどが相次いで猛暑に襲われている。あまりのすさまじさに「新型コロナウイルスの次は猛暑で世界的に大規模な死者が発生する」との警告すら出ている。
日本付近では活発な梅雨前線が停滞し、集中豪雨に見舞われたが、世界的に異常気象が発生している原因は偏西風の蛇行である。
偏西風は北半球の上空を西から東へ吹くジェット気流のことで、高気圧や低気圧は偏西風の影響を受けて西から東へ移動する。
この偏西風が今年5月下旬から大きく南から北へと蛇行するようになり、しかも、それが史上稀に見る大きなものだった。北米地域には断続的に暖気が流入。高気圧や低気圧の動きがほぼ止まり(ブロッキング)、熱い空気を溜め込んだ高気圧が米国北西部からカナダ西部にかけて居座る「ヒートドーム」現象が発生した。
このため、米国の各地の気温が観測史上最高を記録する事態となったのである。
⚫︎トウモロコシの「危機」
欧州連合(EU)の気候情報機関は7月7日に、「6月の北米の平均気温は過去30年間の平均値より1.2度高く、過去最高となった」と発表した。
米国の熱波は最悪期を脱したようだが、ヒートドームが消えて平年並みになるにはもう少し時間がかかるため、米国は近代史上最悪の干ばつを経験することになりそうだと米メディアBUSINESS INSIDERは報じている。
さらに、米中西部の多くの地域ですに記録的な干ばつが続いている状況下で熱波が襲来したことから、今後農作物の収穫が減少するなど大規模な被害が発生する事態が想定されつつあると米ナショナルジオグラフィックなどは警鐘を鳴らしている。
つまり、猛暑によって農作物被害が起きかねないというわけだが、中でも懸念されるのはトウモロコシの不作である。
⚫︎トウモロコシの不作が懸念される
米国のトウモロコシの生産量と輸出量はともに世界のシェアの3割を占める。中西部の大生産地域はコーンベルトと呼ばれ、アイオワ、イリノイ、ネブラスカ、ミネソタの4州で米国全体の5割を育てている。
トウモロコシは通常5月に種がまかれ、7月から8月にかけて受粉するが、過度の高温(気温が32度以上)や乾燥は大敵である。
花粉の活性が失われるため上手く受粉ができない先端不稔となってしまうからである。水の要求量が多い受粉の時期に襲来した今年の熱波により、10月の収穫期に大きな影響が出るとの予測が出ている。
⚫︎日本で「食品価格が高騰」へ…!
すでに食品価格については上昇基調が始まっている。実際、世界の食品価格の動向についてみてみると、新型コロナウイルスのパンデック以降の高騰ぶりは目を見張るものがある。
国連食糧農業機関(FAO)が作成する世界食料価格指数(穀物や食肉、乳製品などの国際取引価格から算出)は、1年前から4割上昇し、約10年ぶりの高水準となっている。
日本でも7月から家庭用の食品が次々と値上がりしているが、要因の一つはトウモロコシ価格の高騰である。トウモロコシの価格は世界的な供給不足のせいで60%強の値上がりとなっている。トウモロコシの主要産地の一つであるブラジルで干ばつが発生し、中国が大量購入に走っているからである。
シカゴ先物市場のトウモロコシ先物価格は1ブッシェル当たり6ドルを超えた水準で高止まっている(6月末現在)。
2018年8月から家畜伝染病のアフリカ豚熱が流行した中国では,その後感染は徐々に落ち着き,昨年から豚の飼育頭数が急回復したことにより,豚の飼料用の需要が急拡大している。
中国の飼料原料に占めるトウモロコシのシェアは5割である。輸入するトウモロコシの主な用途は養豚用の飼料原料であり、主要な輸入先は米国である。
⚫︎そして「豚肉の価格」がどんどん上がってくる
中国政府は国内の穀物農家を保護するため、トウモロコシの輸入枠を720万トンに設定しているが、昨年はこの輸入枠を突破してしまった。65%の高関税を払ってもなお国内の需要があったのである。
中国が飼料用として輸入している米国産トウモロコシ価格が急騰するようなことになれば、世界最大の豚肉生産国である中国にとって大打撃であるが、日本を始め世界の豚肉価格にも悪影響を及ぼすことになるだろう。
⚫︎豚肉の価格が上がってきた
米国の豚肉価格は、すでに昨年の底値の3倍を超える高値となっている。
昨年春のパンデミック時にクラスターが発生したことが食肉加工工場が相次ぎ閉鎖し、生産者の一部が出荷時期が合わない豚の殺処分を大量に行ったことがその背景にある。
日本でも6月の国産豚肉の卸値が米国の豚肉価格の上昇の影響を受けて前月比2割高となっており、世界的に豚肉価格が高騰する気配を見せている。
今年の中国は昨年に続き、降雨災害が発生し、コメを始めとする農作物の収穫に影響が出るとの予測もある。FAOの6月の世界食料価格指数は1年ぶりに前月比マイナスとなったが、今後再び急上昇する可能性がある。
⚫︎偏西風の蛇行はこのところ常態化しつつある。
地球温暖化が原因との説があるが、そのメカニズムは不明である。いずれにせよ、私たちは今後異常気象による農作物の不作に悩み続けることになるのではないだろうか。
猛暑による恐怖が世界規模で広がっているが、日本も無縁ではなくなってきた。
その影響はただ「暑い」ということだけではなく、我々の食卓にも深刻な影響を及ぼしかねないのだ。
⚫︎世界的な「猛暑」がやってきた
ここのところ、米国、カナダなどの北米や欧州、ロシア、インド、イラクなどが相次いで猛暑に襲われている。あまりのすさまじさに「新型コロナウイルスの次は猛暑で世界的に大規模な死者が発生する」との警告すら出ている。
日本付近では活発な梅雨前線が停滞し、集中豪雨に見舞われたが、世界的に異常気象が発生している原因は偏西風の蛇行である。
偏西風は北半球の上空を西から東へ吹くジェット気流のことで、高気圧や低気圧は偏西風の影響を受けて西から東へ移動する。
この偏西風が今年5月下旬から大きく南から北へと蛇行するようになり、しかも、それが史上稀に見る大きなものだった。北米地域には断続的に暖気が流入。高気圧や低気圧の動きがほぼ止まり(ブロッキング)、熱い空気を溜め込んだ高気圧が米国北西部からカナダ西部にかけて居座る「ヒートドーム」現象が発生した。
このため、米国の各地の気温が観測史上最高を記録する事態となったのである。
⚫︎トウモロコシの「危機」
欧州連合(EU)の気候情報機関は7月7日に、「6月の北米の平均気温は過去30年間の平均値より1.2度高く、過去最高となった」と発表した。
米国の熱波は最悪期を脱したようだが、ヒートドームが消えて平年並みになるにはもう少し時間がかかるため、米国は近代史上最悪の干ばつを経験することになりそうだと米メディアBUSINESS INSIDERは報じている。
さらに、米中西部の多くの地域ですに記録的な干ばつが続いている状況下で熱波が襲来したことから、今後農作物の収穫が減少するなど大規模な被害が発生する事態が想定されつつあると米ナショナルジオグラフィックなどは警鐘を鳴らしている。
つまり、猛暑によって農作物被害が起きかねないというわけだが、中でも懸念されるのはトウモロコシの不作である。
⚫︎トウモロコシの不作が懸念される
米国のトウモロコシの生産量と輸出量はともに世界のシェアの3割を占める。中西部の大生産地域はコーンベルトと呼ばれ、アイオワ、イリノイ、ネブラスカ、ミネソタの4州で米国全体の5割を育てている。
トウモロコシは通常5月に種がまかれ、7月から8月にかけて受粉するが、過度の高温(気温が32度以上)や乾燥は大敵である。
花粉の活性が失われるため上手く受粉ができない先端不稔となってしまうからである。水の要求量が多い受粉の時期に襲来した今年の熱波により、10月の収穫期に大きな影響が出るとの予測が出ている。
⚫︎日本で「食品価格が高騰」へ…!
すでに食品価格については上昇基調が始まっている。実際、世界の食品価格の動向についてみてみると、新型コロナウイルスのパンデック以降の高騰ぶりは目を見張るものがある。
国連食糧農業機関(FAO)が作成する世界食料価格指数(穀物や食肉、乳製品などの国際取引価格から算出)は、1年前から4割上昇し、約10年ぶりの高水準となっている。
日本でも7月から家庭用の食品が次々と値上がりしているが、要因の一つはトウモロコシ価格の高騰である。トウモロコシの価格は世界的な供給不足のせいで60%強の値上がりとなっている。トウモロコシの主要産地の一つであるブラジルで干ばつが発生し、中国が大量購入に走っているからである。
シカゴ先物市場のトウモロコシ先物価格は1ブッシェル当たり6ドルを超えた水準で高止まっている(6月末現在)。
2018年8月から家畜伝染病のアフリカ豚熱が流行した中国では,その後感染は徐々に落ち着き,昨年から豚の飼育頭数が急回復したことにより,豚の飼料用の需要が急拡大している。
中国の飼料原料に占めるトウモロコシのシェアは5割である。輸入するトウモロコシの主な用途は養豚用の飼料原料であり、主要な輸入先は米国である。
⚫︎そして「豚肉の価格」がどんどん上がってくる
中国政府は国内の穀物農家を保護するため、トウモロコシの輸入枠を720万トンに設定しているが、昨年はこの輸入枠を突破してしまった。65%の高関税を払ってもなお国内の需要があったのである。
中国が飼料用として輸入している米国産トウモロコシ価格が急騰するようなことになれば、世界最大の豚肉生産国である中国にとって大打撃であるが、日本を始め世界の豚肉価格にも悪影響を及ぼすことになるだろう。
⚫︎豚肉の価格が上がってきた
米国の豚肉価格は、すでに昨年の底値の3倍を超える高値となっている。
昨年春のパンデミック時にクラスターが発生したことが食肉加工工場が相次ぎ閉鎖し、生産者の一部が出荷時期が合わない豚の殺処分を大量に行ったことがその背景にある。
日本でも6月の国産豚肉の卸値が米国の豚肉価格の上昇の影響を受けて前月比2割高となっており、世界的に豚肉価格が高騰する気配を見せている。
今年の中国は昨年に続き、降雨災害が発生し、コメを始めとする農作物の収穫に影響が出るとの予測もある。FAOの6月の世界食料価格指数は1年ぶりに前月比マイナスとなったが、今後再び急上昇する可能性がある。
⚫︎偏西風の蛇行はこのところ常態化しつつある。
地球温暖化が原因との説があるが、そのメカニズムは不明である。いずれにせよ、私たちは今後異常気象による農作物の不作に悩み続けることになるのではないだろうか。