無線脳の視点

無線関係のモノ・ヒトに毒された日常を地味に書いてみる。

続・防災・災害通信はインフラに頼るな

2020年10月12日 | 無線系全般
かれこれ10年も前になるか、東日本大震災の発災以前、奄美大島周辺の集中豪雨による災害で通信が途絶してしまったことについての記事を書いた。
当時の記事リンクはこれだ。(ヒマな方は参考にどうぞ)
防災・災害通信はインフラに頼るな

この記事を書いた頃、未曾有の被害を出した東日本大震災も広島豪雨も熊本地震も北海道胆振地震も、さらにはまだ記憶に新しい2019年東日本台風などが起きる前のことだが、無線脳視点、当ブログ主としては「平常時のインフラに頼らないと成り立たない非常用・災害通信などは、いざというときに全く役に立たない」という主張は相変わらず堅持したままである。
そこで、昨今の自然災害が多発する環境において、いかに通信を確保するか?という課題について、IP無線の是非について考えてみる。
まず、「IP無線とは何ぞや?」というそもそもそれは何だ?についてはウィキペディア上の解説文に説明は譲るとして、IP無線って実際どうなのよ?について若干の俺様バイアスを含めて感想とか意見とか警鐘とか、雑多なことを書き残しておくことにする。

私の視点は、そもそもが無線と無線設備に取り憑かれた電波大好き無線脳の視点という所が出発点なので、電波を使って地点間通信を行うことが大前提なのは言うまでも無く、インターネットだとか有線電話回線なんかを経由して通信するのなんざ邪道よ邪道~、男は黙って直接通信!山上通信!中継するならマイクロ使え自営無線バンザイ!というスタンスであるため、おのずとIP無線などという、自分(自社)で管理できる範囲外かつ毎月基本料金のかかる中途半端でヘンテコな機械なんぞ批判的な立場にならざるを得ない。
しかし、しかしである。
とあるイベント事で実際ににっくきIP無線機を預けられて使ってみたことによって「そ、そこまで意固地にならなくてもいいか・・・な?!」という所まで脳内の雪解けは進んだ、かに見えた。だって、便利なんだもんあれ。
ボタン一発押したら持ってる人に同時に伝わるし、日本全国どこにいても使えるし、誰かが喋ってても割り込めるし、いやこれすっげー楽しーよ!などなど。

そんなIP無線も悪くないんじゃね?と思い始めた中で発生したのが2019年東日本台風、である。
主に東日本エリアの太平洋側、特に千葉県の中南部あたりで大きな台風被害がみられたこの台風、広範囲が停電になり、木更津市にあるAMラジオの100kW局、ニッポン放送の本局までもが停波!という事態にまでなったからさぁ大変。ニッポン放送の送信所内にある非常用発電機までもがダウンしてしまい大型発電機確保で東奔西走したという苦労話まで聞こえてきたのである。

千葉県の中南部では停電により携帯電話中継局の電源が落ちただけでなく、電柱を伝う通信回線も物理的に切断されたりして、携帯電話が使えなくなった地域が続出したのであった。当然、携帯電話回線を流用するIP無線も携帯電話基地局のダウンにより通信は断絶するのだが、そこで生じるべき疑問、
「あれ?IP無線って災害に強いって売り込みじゃなかったっけ?」「屋内でもIP無線機は通話可能! 災害時にも繋がる!」「データ帯域で通話だから災害時でもつながりやすい!」「 災害時には発信規制がかかって固定電話・ケータイ電話等の音声帯域はかかりづらくなりますよ、だからIP無線!」
という謳い文句あったでしょ、そこ、どうなってんの?と。

何てことは無い、「電話回線そのものが切れたら現場はそんなもん(IP無線)使い物にはならないのである」

Googleの検索で「IP無線 災害時」などと検索してみると表示される内容は、「IP無線機は、災害時のBCP対策の一環としても有効!」とか無線機器に強い通信業者様がせっせと書いちゃってるんだけど、そもそも非常時っていう非常の規模とか災害のレベルを定義してないとIP無線万能!なんて誤解する人でるでしょうに。そこ、冷静に考えようよ?と思うのである。言い方悪いけど基本料金稼ぎっすよあれ。
参考まで、私の仲間が災害時ではない平常な時に、仕事でN県の花火大会にIP無線を持って行ったら「花火が始まる前も花火が終わってもしばらく使えなかった!あんなのゴミだ!」と騒いでいた。当然である。IP無線は携帯電話の通信回線を使うんだから、大規模イベントで人が集まるところでも基本ダメなのよ。狭いエリアに何万人ものシロウトさんが集まって「映え~」とか「なう」とか書きながら「花火動画うp!」などとやらかしてる中でどんだけボイスパケット飛び交わすこと出来るんかよと。

無線脳の結論としては、10年前に書いた記事をふまえて考えた現状でも「防災・災害通信はインフラに頼るな」「IP無線は非常時や災害時では当てにするな」という所に行き着くのであった。
どうしても非常時にも使いたいよねという向きは、 mcAccess e無線機とIP無線機が合体したサービスがあるから、mcAccess e の通信エリアが含まれたエリアで使うのであればまぁアリかな、と言ったところである。
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