もう6月になってしまったから、これは先月の写真です。5月はセンダンの花の季節。薄紫の花がこずえいっぱいに咲き、甘くさわやかな香りが風に混じる。とても美しい木。
家の近くの公園に立っているセンダンの木に、かのじょが心親しみ始めたのは、30代の頃だったと思います。最初の頃は、センダンはかのじょに少し冷やかでした。人間そのものが、あまり好きではなかったからです。
木も、この世に生きている間は、かのじょの正体が誰なのか、わからないのですよ。ですからセンダンも、最初はかのじょのことを、普通の人間だと思っていました。わがままな女の子が、友達ができなくて、木や動物の方に心寄せて自分を偉く思おうとするのは、かなりよくあること。そういう人間を、センダンは冷ややかに見ていたのです。
けれどもかのじょが使命を帯びて生まれてきた天使だったとわかった時、彼はその活動を助けていくことを決意したのです。それによって彼は、普通では味わわない試練を幾つも味わわねばなりませんでした。そして彼はそれを見事に乗り越えて、かのじょを助けていったのです。
天使と使命を共にする者は、あまりにも美しくなる。このセンダンは、ほかのセンダンよりずっと美しく、すばらしいものになりました。こんなみごとな花を咲かせることのできるセンダンを、この近所では見たことはありません。
今のセンダンは、かのじょのことを深く愛している。どんなことにも耐えてがんばっていたかのじょのすべてを知っている。この木に親しむ者は、かのじょの美しい心の秘密を、教えてもらえるかもしれません。