今はSNSで交流することが主になった友人がブログでこの本のことを最近記していた。植物図鑑や多少の新書本などを除くと、生物の領域の本とはほぼ無縁だった。タイトルがおもしろいこともあり、本書を読む動機づけになった。
第5章中の見出し「カラスは飼えるか」の節の冒頭で、カラスの研究者である著者は「基本、飼えない。以上」(p194)と記す。その節の末尾では「だから、うっかりカラスを飼ってはいけないのである」(p201)と結ぶ。この8ページの節中に、きっちり理由が説明されている。ナルホド!である。
本書は、2020年3月に単行本が刊行された。単行本と同じ表紙で2023年3月に文庫化されている。
読了してから、少しインターネットで検索してみたら、結構カラス情報もインターネットに溢れていることを知った。カラスの飼育関連情報もかなりあるものだ。インターネットってやはりおもしろい。勿論、情報のフィルタリング、選択は必要だけれど・・・・・。いくつか、補遺として抽出情報を列挙してみた。
カラスに興味を持つ人には、本書の末尾の10ページにわたる「付録-カラス情報」が有益だろう。◎カラスが見られる場所と◎カラス本が列挙されている。
前者には、カラスのねぐらの一例、カラスの「聖地」、日本のカラスゆかりの神社、各種のカラスの見られる場所(日本とアジア)に触れている。
後者には、< 1 実用書(でもないか)篇、2 物語篇、3 専門誌もあるのだった、4 映画にも結構登場するのであった、5 歌詞にカラスが登場する歌はこちら > と、各々について列挙されている。カラスも奥が深い・・・・と思った次第。
とはいえ、この本、カラスに特化した本ではない。「はじめに」に代えて「脳内がカラスなもので」という見出しでの冒頭文も著者がおことわりとして「本書の内容は鳥類を主とする生き物について」(p3)なのだ記す。カラスを主軸にして幅広く語ったエッセイ集である。軽い語り口調で体験談を広く織り交ぜたエッセイだった、鳥類についての本は初めてだったが、けっこう楽しみながら読み進めることができた。肩の凝らない読み物に仕上がっている。だが、研究者視点での裏付けはきっちり押さえられている。その道の研究者たちのエピソードにも触れられていておもしろい。
本書の内容は、最初、ウエブ「考える人」に24回の連載として発表されたそうだ。その時のタイトルは『カラスの悪だくみ』だったとか。これもいわば、反語的タイトルづけだ。「私のスタンスは『カラスは悪だくみなんかしねえよ』であった」(p202)と本書に著者は本心を書いている。
本書の構成をご紹介しておこう。ちょっと付記する。
1章 フィールド武者修行 著者の武者修行は屋久島でのサル調査だとか
2章 カラスは食えるか ニワトリとカラスを対比。カラス:食えるがまずい
3章 人気の鳥の取扱説明書 カラス、ワシ、ハヤブサ、タカ、インコ、オウム、アオサギ、ハチドリ等々
4章 そこにいる鳥、いない鳥 カササギ、恐竜、ドードー、ウミツバメ等が登場
5章 やっぱりカラスでしょ!
カラス以外にもいろんな鳥が登場する。著者の体験談(失敗談を含む)や様々な事例が紹介されていて楽しく読み進めることができる。なかば雑学書でもある。そこがおもしろい。
著者は子供の頃に「カラスって面白い」と思ったという。大学時代にカラスにハマり、「とうとうカラスで学位を取得したが、残念ながらカラスでは食えない。というかカラスでなくても、動物行動学は食えない」(p210)と記す。「普段は(付記:東京大学総合研究)博物館に勤め、その傍でカラスの観察、という生活を送っている」(p210)そうである。だが、子供の頃の興味を、そのまま仕事で実現しているのはある意味で羨ましいと思う。
本書でカラスの生態の一部は理解できた。
カラスについて、本書で学んだ事項の一部だが、要点を覚書にしておきたい。
*世界にカラスは約40種。日本には7種が記録されている。
*普通に「カラス」と呼んでいるのは2種:ハシボソガラスとハシブトガラス
*雑食性。自然界の掃除屋(スカベンジャー)。死骸を食べる。人間の食べ残しはごちそ
うの山。嫌いなのは野菜。特に生野菜。キュウリは食べるとか。
*カラスは好みのものだけ漁り、食いたくないものをポイッと投げ捨てるだけ。
カラス自身に「散らかす」意図があるわけではない。
*カラスは注視されるのが好きではない。カラスは弱気な鳥。子供を守るのには必死。
*正面攻撃はしない。後から頭を蹴飛ばす程度の反撃をすることはある。
*カラスは繁殖のために、その都度樹上の高い所に巣作りをする。3月~4月。
直径50cmくらいの巣を作る。巣は卵と雛だけのためのもの。巣は使い捨て。
卵を抱くのに20日。雛が巣立つまでに30日少々。合計2ヶ月弱。
*カラスは晩成性のタイプ。最初雛に羽はない。雛は目が青い。
*生態系の中で、カラスは種子散布の役割を果たしている。糞と一緒に種子を落とす。
*カラスは「見えたものが全て」という現実的な態度を貫く。
*烏の黒色は羽毛に含まれるメラニン顆粒。その艶は羽毛表面のケラチン層の層構造に
基づいている。
このような要点が第5章でさらに広がる形で展開され、かなり具体的にわかりやすく説明されていく。その語りを気楽に楽しく読めるところが、実に良い。
私自身はカラスを好きになれるとは思わないが、カラスについて具体的な事実を知れたことに読み甲斐を感じている。勿論それ以外の鳥類についても一歩踏み込んで知ることができて楽しかった。「ヨーロッパで繁殖するスゲヨシキリはアフリカまでの約4000キロを4,5日で飛ぶ。ニューギニアから日本まで、4500キロ以上を一直線に飛んだシギもいる」(p95)、鳥は現代に生き残った恐竜なんて話も出てくるから驚き、かつおもしろい。
「『ヘー、鳥ちょっと面白いじゃん』で十分である」(p3)と、著者は「脳内がカラスなもので」の末尾近くに記している。この点は、間違いなくクリアできている。
最後に印象に残る箇所を引用しておこう。
*人間は動物に対してイメージを投射し、そのイメージに従って行動を類推する。もちろん学者だって行動を類推するし、私もカラスの行動を擬人化して説明もする。だが、動物学者はその類推の不確かさもちゃんとわかっている。実際の生物の行動は、人間のイメージを超えたものであることも少なくない。そこが生物学の奥行であり、面白さである。 p169
ご一読ありがとうございます。
補遺
カラスの飼育は可能なの?法律と保護・飼育の注意点 :「EPARK くらしのレスキュー」
カラス :ウィキペディア
日本のカラスの種類、7種全ての特徴をご紹介! :「ADVAN CORPORATION」
実は、街のカラスは2種類いるんです。ハシブトガラスとハシボソガラス:「BIOME」
カラスのことをもっと知ろう :「豊中市」
世界のカラスの仲間 :「HPHP (Hosaka Personal Home Page)」
カラスの図鑑 日本に生息する5種のァラスを紹介! :「北海道情報大学」
考える人 ホームページ
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)
第5章中の見出し「カラスは飼えるか」の節の冒頭で、カラスの研究者である著者は「基本、飼えない。以上」(p194)と記す。その節の末尾では「だから、うっかりカラスを飼ってはいけないのである」(p201)と結ぶ。この8ページの節中に、きっちり理由が説明されている。ナルホド!である。
本書は、2020年3月に単行本が刊行された。単行本と同じ表紙で2023年3月に文庫化されている。
読了してから、少しインターネットで検索してみたら、結構カラス情報もインターネットに溢れていることを知った。カラスの飼育関連情報もかなりあるものだ。インターネットってやはりおもしろい。勿論、情報のフィルタリング、選択は必要だけれど・・・・・。いくつか、補遺として抽出情報を列挙してみた。
カラスに興味を持つ人には、本書の末尾の10ページにわたる「付録-カラス情報」が有益だろう。◎カラスが見られる場所と◎カラス本が列挙されている。
前者には、カラスのねぐらの一例、カラスの「聖地」、日本のカラスゆかりの神社、各種のカラスの見られる場所(日本とアジア)に触れている。
後者には、< 1 実用書(でもないか)篇、2 物語篇、3 専門誌もあるのだった、4 映画にも結構登場するのであった、5 歌詞にカラスが登場する歌はこちら > と、各々について列挙されている。カラスも奥が深い・・・・と思った次第。
とはいえ、この本、カラスに特化した本ではない。「はじめに」に代えて「脳内がカラスなもので」という見出しでの冒頭文も著者がおことわりとして「本書の内容は鳥類を主とする生き物について」(p3)なのだ記す。カラスを主軸にして幅広く語ったエッセイ集である。軽い語り口調で体験談を広く織り交ぜたエッセイだった、鳥類についての本は初めてだったが、けっこう楽しみながら読み進めることができた。肩の凝らない読み物に仕上がっている。だが、研究者視点での裏付けはきっちり押さえられている。その道の研究者たちのエピソードにも触れられていておもしろい。
本書の内容は、最初、ウエブ「考える人」に24回の連載として発表されたそうだ。その時のタイトルは『カラスの悪だくみ』だったとか。これもいわば、反語的タイトルづけだ。「私のスタンスは『カラスは悪だくみなんかしねえよ』であった」(p202)と本書に著者は本心を書いている。
本書の構成をご紹介しておこう。ちょっと付記する。
1章 フィールド武者修行 著者の武者修行は屋久島でのサル調査だとか
2章 カラスは食えるか ニワトリとカラスを対比。カラス:食えるがまずい
3章 人気の鳥の取扱説明書 カラス、ワシ、ハヤブサ、タカ、インコ、オウム、アオサギ、ハチドリ等々
4章 そこにいる鳥、いない鳥 カササギ、恐竜、ドードー、ウミツバメ等が登場
5章 やっぱりカラスでしょ!
カラス以外にもいろんな鳥が登場する。著者の体験談(失敗談を含む)や様々な事例が紹介されていて楽しく読み進めることができる。なかば雑学書でもある。そこがおもしろい。
著者は子供の頃に「カラスって面白い」と思ったという。大学時代にカラスにハマり、「とうとうカラスで学位を取得したが、残念ながらカラスでは食えない。というかカラスでなくても、動物行動学は食えない」(p210)と記す。「普段は(付記:東京大学総合研究)博物館に勤め、その傍でカラスの観察、という生活を送っている」(p210)そうである。だが、子供の頃の興味を、そのまま仕事で実現しているのはある意味で羨ましいと思う。
本書でカラスの生態の一部は理解できた。
カラスについて、本書で学んだ事項の一部だが、要点を覚書にしておきたい。
*世界にカラスは約40種。日本には7種が記録されている。
*普通に「カラス」と呼んでいるのは2種:ハシボソガラスとハシブトガラス
*雑食性。自然界の掃除屋(スカベンジャー)。死骸を食べる。人間の食べ残しはごちそ
うの山。嫌いなのは野菜。特に生野菜。キュウリは食べるとか。
*カラスは好みのものだけ漁り、食いたくないものをポイッと投げ捨てるだけ。
カラス自身に「散らかす」意図があるわけではない。
*カラスは注視されるのが好きではない。カラスは弱気な鳥。子供を守るのには必死。
*正面攻撃はしない。後から頭を蹴飛ばす程度の反撃をすることはある。
*カラスは繁殖のために、その都度樹上の高い所に巣作りをする。3月~4月。
直径50cmくらいの巣を作る。巣は卵と雛だけのためのもの。巣は使い捨て。
卵を抱くのに20日。雛が巣立つまでに30日少々。合計2ヶ月弱。
*カラスは晩成性のタイプ。最初雛に羽はない。雛は目が青い。
*生態系の中で、カラスは種子散布の役割を果たしている。糞と一緒に種子を落とす。
*カラスは「見えたものが全て」という現実的な態度を貫く。
*烏の黒色は羽毛に含まれるメラニン顆粒。その艶は羽毛表面のケラチン層の層構造に
基づいている。
このような要点が第5章でさらに広がる形で展開され、かなり具体的にわかりやすく説明されていく。その語りを気楽に楽しく読めるところが、実に良い。
私自身はカラスを好きになれるとは思わないが、カラスについて具体的な事実を知れたことに読み甲斐を感じている。勿論それ以外の鳥類についても一歩踏み込んで知ることができて楽しかった。「ヨーロッパで繁殖するスゲヨシキリはアフリカまでの約4000キロを4,5日で飛ぶ。ニューギニアから日本まで、4500キロ以上を一直線に飛んだシギもいる」(p95)、鳥は現代に生き残った恐竜なんて話も出てくるから驚き、かつおもしろい。
「『ヘー、鳥ちょっと面白いじゃん』で十分である」(p3)と、著者は「脳内がカラスなもので」の末尾近くに記している。この点は、間違いなくクリアできている。
最後に印象に残る箇所を引用しておこう。
*人間は動物に対してイメージを投射し、そのイメージに従って行動を類推する。もちろん学者だって行動を類推するし、私もカラスの行動を擬人化して説明もする。だが、動物学者はその類推の不確かさもちゃんとわかっている。実際の生物の行動は、人間のイメージを超えたものであることも少なくない。そこが生物学の奥行であり、面白さである。 p169
ご一読ありがとうございます。
補遺
カラスの飼育は可能なの?法律と保護・飼育の注意点 :「EPARK くらしのレスキュー」
カラス :ウィキペディア
日本のカラスの種類、7種全ての特徴をご紹介! :「ADVAN CORPORATION」
実は、街のカラスは2種類いるんです。ハシブトガラスとハシボソガラス:「BIOME」
カラスのことをもっと知ろう :「豊中市」
世界のカラスの仲間 :「HPHP (Hosaka Personal Home Page)」
カラスの図鑑 日本に生息する5種のァラスを紹介! :「北海道情報大学」
考える人 ホームページ
インターネットに有益な情報を掲載してくださった皆様に感謝します。
(情報提供サイトへのリンクのアクセスがネット事情でいつか途切れるかもしれません。
その節には、直接に検索してアクセスしてみてください。掲載時点の後のフォローは致しません。
その点、ご寛恕ください。)