「サンダルバイバイのうた🍉」
サンダルバイバイを聞いた時に、はるか昔の思い出がよみがえった。
それは小学校高学年の夏休みのことだった。
友だち三人で当時「大川」と呼んでいた川幅の広い川に魚釣りに出かけた。
川の中州にいい釣りポイントがあった。
しかし、そこに行くには流れの速いところを渡らなければならない。
三人はバケツと釣竿をもって一足一足確かめながら渡り始めた。
エサの入った空き缶はバケツの中だ。
膝くらいの深さがあった。
足の下の石は砂利ではなく、急流でも流されないくらいの大き目の石が転がっていた。
そこを踏み外さないように、しかもヌルヌルした表面ですべらないように、のろのろと一歩一歩足元を確かめながら歩いていた。
今で言うところの体幹が必要だった。
「あっ!」
振り向くと、後ろにいた一人が倒れて、両手をついていた。
そして、前のめりになったまま、ズルズルと川の流れに押されていった。
残った二人は助けるすべもなく、自分自身が流されるのを必死に耐えるのが精いっぱいだった。
流される友だちを気にしながら、慎重に瀬を渡り切り、流されていく友だちを追いかけた。
友だちは仰向けになっていた。
足で踏ん張って流れに逆らっていた。
ワレワレ二人は叫んだ。
「離せ!」
「バケツを離せ!」
水圧をバケツがもろに受けているように見えた。
さすがに釣り竿の方はとうの昔に手放していたようだ。
「バケツ! バケツ!」
「バケツを離せ!」
なぜだか知らないけれど、友だちはバケツを手放さなかった。
やがて友だちは流れのゆっくりとした、つまり、川の深い方へと流れて行った。
「ああ・・・」
心の中でそんな声が漏れていたかもしれない。
しかし、友だちはそこから奇跡(?)の生還を果たした。
片手にバケツを持ったまま、もう一方の手で水をかき、足は平泳ぎの要領で、ゆっくりと岸に近づいてきた。
しばらくすると、足の立つところまでたどり着き、バケツの水を落として、川原の方へ上がって来た。
なんということばをかけたかは思い出せない。
その後、釣りをしたかも覚えていない。
覚えているのは友だちはなんで呼びかけに応じずにバケツを手放さなかったかということだ。
それをずっと考えていた。
60年近くたった今も考えている。
友だちはなんでバケツを手放さなかったのだろうか?
その後、友だちは理系の大学に進み、富士通に就職した。
大学生の頃に一度、再会したことがある。
就職してからは一度も会っていない。
もし会えたら、今度こそ「バケツを手放さなかった」理由を尋ねてみたい。
「サンダルバイバイ」はいい歌だ。
ほんと、バイバイした方がいいよ!
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