有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
有馬山に近い猪名の笹原に風が吹くと、笹の葉がそよそよと音をたてる。さあそのことですよ、お忘れになったのはあなたの方、私はどうしてあなたのことを忘れるでしょうか。
有馬山 摂津国有馬郡(兵庫県)、現在の神戸市北区有馬町あたりの山。
猪名の笹原 猪名野ともいわれる。摂津国猪名川に沿った平地。万葉の昔から「有馬山」と「猪名」は一緒に詠みこまれることが多かった。
風吹けば 四段動詞「吹く」の已然形に、接続助詞「ば」がついて、確定条件を示す。風が吹くと笹原がそよぐことから、この句までが下の「そよ」を引き出すための序詞となる。
いでそよ 「いで」は勧誘・決意などの意の副詞。「そよ」は、笹がそよぐ葉音を表すとともに、それよ、の意を表す掛詞。「そ」は指示代名詞で、詞書から「おぼつかなく」と言った相手の言葉を指す。この部分は、上の序詞からの景からは笹の葉音を表すものとして働き、下の叙述へは相手への気持ちとして続く。
人を忘れやはする 「人」は相手の男。「やは」は反語の係助詞。サ変動詞「す」の連体形「する」で結ぶ。
だいにのさんみ (999~?)
紫式部の娘。藤原賢子(ふじわらのかたこ)のこと。一条天皇の中宮彰子に仕え、後に後冷泉天皇の乳母となる。
有馬山に近い猪名の笹原に風が吹くと、笹の葉がそよそよと音をたてる。さあそのことですよ、お忘れになったのはあなたの方、私はどうしてあなたのことを忘れるでしょうか。
有馬山 摂津国有馬郡(兵庫県)、現在の神戸市北区有馬町あたりの山。
猪名の笹原 猪名野ともいわれる。摂津国猪名川に沿った平地。万葉の昔から「有馬山」と「猪名」は一緒に詠みこまれることが多かった。
風吹けば 四段動詞「吹く」の已然形に、接続助詞「ば」がついて、確定条件を示す。風が吹くと笹原がそよぐことから、この句までが下の「そよ」を引き出すための序詞となる。
いでそよ 「いで」は勧誘・決意などの意の副詞。「そよ」は、笹がそよぐ葉音を表すとともに、それよ、の意を表す掛詞。「そ」は指示代名詞で、詞書から「おぼつかなく」と言った相手の言葉を指す。この部分は、上の序詞からの景からは笹の葉音を表すものとして働き、下の叙述へは相手への気持ちとして続く。
人を忘れやはする 「人」は相手の男。「やは」は反語の係助詞。サ変動詞「す」の連体形「する」で結ぶ。
だいにのさんみ (999~?)
紫式部の娘。藤原賢子(ふじわらのかたこ)のこと。一条天皇の中宮彰子に仕え、後に後冷泉天皇の乳母となる。