うさぎとかえるの里

鳥獣戯画をこよなく愛する自分の日本文化や日常に関する想いをつづります。

多作者論。

2010-04-30 01:56:59 | 読書
「源氏物語とその作者たち」

西村亨さんの本は、昔「知られざる源氏物語」を読んで衝撃を受けて以来。

それから、源氏物語研究本を読むようになったきっかけの先生です。

単なる物語として読んでも素晴らしいけど、書かれた背景が知りたくなってしまうのも
古典と歴史好きならではなのか…あれだけのものがあの時代にどうして書かれ、
今日まで好まれ、伝わっているのか、興味は尽きぬものです。

そしてその「伝えていく」っていうところがポイントのようです。
平安の時代ですから、伝えるにはひたすら手で書き写して写本を作るしかない…

その書き写す過程で、書き手が勝手にエピソードを追加していったのが、
今の恐るべき長さの源氏物語らしいです。

今までの「源氏物語多作者論」をより具体的にしてくれたのが、今回の本でした。

いろいろ納得しました(^^)

いろんな人の手が入るから、つじつまが合わなかったり、
読んでいてなんか違和感を感じたり、だから源氏物語が「難解」と言われるんだなぁ…。

確かにバランスも悪い。
やけに長い巻があったり。
ひとつの巻の中でふたつのエピソードが語られていたり。

たとえば、「帚木」の巻。
有名な「雨夜の品定め」があるところですが、そこが頭でっかちに長い。
学生時代から帚木にぶつかるたびに、「ああ~長い」とか憂鬱になった気がします。
内容的には面白いんだけど、この「雨夜の品定め」部分が終わったと思ったら出てくる
空蝉のエピソードがね…(^^;)

「雨夜…」、後からいろいろな具体例が、どんどん追加されていった結果、あんな量に
なったそうです!
なるほどね~。

主題を為す巻(紫上系)は紫式部が書き、玉鬘系の巻は別の作者が書き…
(さらにそれらに誰かが加筆したりして…)

今のように体裁が整えられたのは、一体いつで誰なんだろう(^^;)

冒頭の「桐壷」でさえ、後付けもしくは紫式部以外の作者?とも言われているくらい。
さらに、光源氏と藤壺の最初の逢瀬の巻が実はあって、消失した…とも言われていますよね。
これは、瀬戸内寂聴さんが、オリジナルでこの巻を書かれましたが…。
そうすると、本当は五十四帖ではなくなるよね~。

こういう本って本当に読んでいてわくわくします(*^_^*)



コメント
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