参道を上り詰めると右側に山門があり、そこから下に向かう石段が正規の参道だったらしいが、いま誰も利用していない様子。左手さらに急な石段を上り詰めると昭和58年に屋根の修復がなされ、彩色された「木鼻」のある本堂があった。重要文化財として木造薬師如来坐像・木造地蔵菩薩坐像・木造毘沙門天立像・木造吉祥天女立像があるらしいが、訪れたときは誰もいず本堂には鍵がかかっており拝観することは出来なかった。
この矢田寺は庭園に紫陽花に埋もれるように佇む小さなお地蔵さんもあちこちに多くあり、紫陽花とお地蔵さんの寺である。話は変わるがアジサイ繋がりでこことは別に、奈良県橿原市には多宝塔を取り囲むよいうに咲く紫陽花の寺「久米寺」がある。この久米寺のいわれが面白い。その昔「久米の仙人」が吉野川で衣を洗っていた若い娘のふくらはぎに見とれて、神通力を失って空から地面に落ちてしまったという。そのとん馬な「久米の仙人」が開いたお寺という話があるそうな。
広い境内には大ぶり小ぶり、赤系、青系とさまざまな紫陽花と、ひっそりとたたずむ地蔵さんと共に起伏にとんだ庭園に咲き乱れる。観光バスの出発時間を気にしないで、足元に佇む小さなお地蔵さんにも目を向け、もっとゆっくりと散策をしていただきたいものだ。
6月から7月にかけての観光パンフレットには必ず載る紫陽花寺で有名な金剛山寺(こんごうせんじ)。通称矢田寺や矢田の地蔵さんと親しまれて矢田丘陵の中腹にある。建立当初は十一面観音が本尊であったが平安時代に地蔵菩薩を本尊として以降、地蔵信仰の一大道場として栄えた。画像は境内に佇む味噌なめ地蔵(名前の由来については省略)