付属看護学校の研修生が、ベテランの看護士の下で研修を受けていた。まさにOJT(オンザジョブトレーニング)である。ノリが良く効いた制服はどの研修生もよく似合う。服装で研修生とわかることは良いことと思われる。看護士になると一見ラフと思える制服を着用している。4~5種類あるようで、昔ながらの白色の服装もあるが、Tシャツにズボンという制服は行動的である。見慣れないうちは違和感があったが、多種類の作業を、てきぱきとこなしている姿を拝見すると、行動的な制服を必要とすることがわかる。見かけではなく、仕事の内容によって制服が変わることは意味のあることと思われる。
今回の感想は、OJTの一シーンである。入院中の患者は車いすに座り、点滴を行っていた。指導する看護士は、車いすの操作と、点滴棒を持ちながら移動中である。1名の研修生が付き添っていた。つまり、片手で車いすのハンドルを操作し、点滴棒をもう一方の手でつかんで移動している。車いすについては通常両手でハンドルを持って移動する。片手で操作することは安全上めったにないが、今回は点滴棒を一緒に移動させることが加わるため、慣れないと難しい操作となる。
待合の椅子に座っていた小生の前で、看護士から研修生へバトンタッチが行われた。緊張してそれを行っていた研修生を、傍で見ていると大変すがすがしい。それは、ベテラン看護士にとってはたやすいことであっても、研修生にとってはおそらく初めての経験であったようである。仕事に対して全身全霊を傾けている姿だったからである。看護学校を併設している病院は教育訓練の現場でもある。教室での知識の詰込みだけでは仕事にならないことは山ほどある。技術・技能は教室だけでは研修生の習得に限界もある。実際にやってみてできなければ、研修の意味をなさない。技能は何度か繰り返して行うことによって、身に付くものである。つまり、研修の望ましい形である現場の実物教育が行われていた。
自分も専門は異なるが、長年、職業訓練の場に身を投じていたため、このシーンを見て感動を覚えたわけである。現場での人材育成はどのような職種でもついて回るが、指導者不足や、教育の場をないがしろにする経営者が多い昨今、極めて大切な業務であることは間違いない。
ついでに、車いすの操作は、だれしも習得すべき技能である。看護士だけというわけではない。階段の上り下りなどは大変難しいし、スロープの下り方も、車いすをバックさせながら降りることなど、知っておかなければならないことも多い。万民に対し、研修の機会を持つべきと思われる。若い方でも車いすを使う場面は必ずあるので、公的機関等において、その実施を検討されたい。