有美と言う1人の若い独身女性。
今電車を降りて家路を急ぐ。
今日はついてなかった。仕事では些細なミスが連発し上司にしかられ私生活では服を前半にセールで買いすぎたため小遣いがピンチだから寄り道も出来ない。
有美はひとつため息をついた。
ふと顔をあげると神社が目に入った。毎日通っているのに今まで気がつかなかった。
ちょっと神頼みでもしてみるか・・・と有美はお賽銭をあげ
「何かいい事がおこりますように」と願いを心の中で言った。
神社を出て歩いているとちょっとした段差でつまづいてこけてしまった。
「いたーーい!」と周りを見渡すが誰もいなかった・・・ほっとする。
転んだ拍子に何か手につかんでいた。
一本の鉛筆だった。
何だこんなものと捨てようとした時に目の前で子供達がなんだかわいわいと話していた。
ふとその中の1人が有美と目が合う。
「お姉さん、その持っている鉛筆ちょと貸してよ」とその子が言った。
「いいわよ。よかったらあげるし」と有美が答えると
「ありがとう!ゲームをしてたんだけど点数が皆覚えられなくて書くのが欲しかったんだ」
もう1人別の子が言った。
「そうだ、お姉さん、鉛筆もらったからこれ代わりにあげるよ」
差し出されたのは1個の飴だった。
「ありがとう」
有美はそう言って立ち去った。
こんなものもらってもね・・・と思いながら歩いていると、目の前で一組の親子が歩いていた。
お母さんと小さい女の子だ。
「もう歩けないよ~!」と女の子はしゃがみこんで泣いている。
「もうちょっとだから頑張りなさい」お母さんが一生懸命なだめている。
有美は近づいて言った。
「ねえ、これ元気が出る飴だよ。あげるから頑張って歩いて!」
さっきの子供からもらった飴だ。
女の子は泣きやんだ。そして有美から飴を受け取るとにっこり笑った。
その子のお母さんが言った。
「ありがとうございます。助かりました。よかったらこれ・・・」
と差し出したのは福引の券だった。
「すぐそこの商店街でしているみたいですよ」と。
親子とは手を振りながら別れた。
有美はそういえば小遣いも底をついて来ているし福引で何か当たったらいいなと・・・その商店街にあるいていった。
福引所で福引券を出すと
「すいませんね、これ5枚で一回なんですよ」と言われてしまった。
「なあんだ」と有美は言い丁度後ろに並んでいた年配の女性に「よかったらこれ」と言って渡した。
「あら、うれしいわ。4枚の半端があったのよ。当たったらあなたにもおすそ分けするから見て行きなさいよ」とその女性は言った。
ガラガラ・・・ポトン。青の玉が転がった。
「3等賞!大あたり~!スポーツ飲料一ケース!」
福引所のお兄さんが鐘を鳴らした。
「あら当たったわ!あなたにも一本あげるわね」とその女性は言った。
有美はスポーツ飲料を一本貰うと家に向かって歩き始めた。
何かの話しに似てるな・・・。わらしべ長者だ。
最後には大金持ちになるんだったな。わらしべ一本から。
私の場合、最初の鉛筆がスポーツ飲料になった。でもあんまり期待出来そうにないな・・・と思う。帰るまでに長者になるなんて到底無理だわ。
そう思いクスッと笑ったときに前をたくさんの荷物を持って歩いていた男性が急にしゃがみこんだ。
「大丈夫ですか?!」と声をかける。
「急に歩いているとクラクラして・・・」とその男性は言った。
午前中は雨が降っていた。そのあとやんで一気にいいお天気になった。
すごく蒸し暑く、アスファルトから湯気がでているようだ。
「これ、よかったら飲んでください」
有美はさっき貰ったスポーツ飲料を差し出した。
男性はごくごく飲んだ。すると顔色もよくなってきた。
「ありがとうございます。得意先からの帰り道ずっと水も飲まないで歩いていたものですから・・・。そうだ、これお礼としたら変なんですが、不良品として返って来た服なんです。染ムラがちょっとあるだけで裁縫はちゃんとしてますので良かったらどうぞ」
男性が差し出したのは新品のT シャツだった。でも男性用だった。
男性と別れまた有美は歩き始める。家が見えてきた。
今度はTシャツになったか・・・でも男性用だから家ででも着ようかな・・・それともお父さんか弟にでもあげようか・・・。
その時、目の前を大きな車が通った。
バシャン!大きな水がはねる音がした。少し前の水溜りにタイヤが入り大きな水しぶきがあがった。
「冷たい!」
同時に前で大きな声がした。
見ると背の高い若い男性が水浸しになっている。
はあ・・・こういう事か・・・次は何に化けるんだろう。有美はそう思うと持っていたTシャツを差し出した。
「良かったらこれ」と。
男性は
「ありがとうございます。助かります。これから他所のお宅にお邪魔するところだったので。新しく買って返しますので良ければご連絡先をお聞かせいただけませんか?」
と言った。
なあんだ、今度は何にもならないのかと思って顔をあげるとびっくりするぐらい有美の理想の男性の顔がそこにあった。
「良かったらうち近くなのでそこで着換えをされたらいかがでしょうか?弟のズボンなんかもありますので」
有美の口からこんな言葉が出た。
有美が最後に得た物は・・・『恋』だった。
わらしべ長者にはなれなかったが・・・いやもしかすると。
↑
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今電車を降りて家路を急ぐ。
今日はついてなかった。仕事では些細なミスが連発し上司にしかられ私生活では服を前半にセールで買いすぎたため小遣いがピンチだから寄り道も出来ない。
有美はひとつため息をついた。
ふと顔をあげると神社が目に入った。毎日通っているのに今まで気がつかなかった。
ちょっと神頼みでもしてみるか・・・と有美はお賽銭をあげ
「何かいい事がおこりますように」と願いを心の中で言った。
神社を出て歩いているとちょっとした段差でつまづいてこけてしまった。
「いたーーい!」と周りを見渡すが誰もいなかった・・・ほっとする。
転んだ拍子に何か手につかんでいた。
一本の鉛筆だった。
何だこんなものと捨てようとした時に目の前で子供達がなんだかわいわいと話していた。
ふとその中の1人が有美と目が合う。
「お姉さん、その持っている鉛筆ちょと貸してよ」とその子が言った。
「いいわよ。よかったらあげるし」と有美が答えると
「ありがとう!ゲームをしてたんだけど点数が皆覚えられなくて書くのが欲しかったんだ」
もう1人別の子が言った。
「そうだ、お姉さん、鉛筆もらったからこれ代わりにあげるよ」
差し出されたのは1個の飴だった。
「ありがとう」
有美はそう言って立ち去った。
こんなものもらってもね・・・と思いながら歩いていると、目の前で一組の親子が歩いていた。
お母さんと小さい女の子だ。
「もう歩けないよ~!」と女の子はしゃがみこんで泣いている。
「もうちょっとだから頑張りなさい」お母さんが一生懸命なだめている。
有美は近づいて言った。
「ねえ、これ元気が出る飴だよ。あげるから頑張って歩いて!」
さっきの子供からもらった飴だ。
女の子は泣きやんだ。そして有美から飴を受け取るとにっこり笑った。
その子のお母さんが言った。
「ありがとうございます。助かりました。よかったらこれ・・・」
と差し出したのは福引の券だった。
「すぐそこの商店街でしているみたいですよ」と。
親子とは手を振りながら別れた。
有美はそういえば小遣いも底をついて来ているし福引で何か当たったらいいなと・・・その商店街にあるいていった。
福引所で福引券を出すと
「すいませんね、これ5枚で一回なんですよ」と言われてしまった。
「なあんだ」と有美は言い丁度後ろに並んでいた年配の女性に「よかったらこれ」と言って渡した。
「あら、うれしいわ。4枚の半端があったのよ。当たったらあなたにもおすそ分けするから見て行きなさいよ」とその女性は言った。
ガラガラ・・・ポトン。青の玉が転がった。
「3等賞!大あたり~!スポーツ飲料一ケース!」
福引所のお兄さんが鐘を鳴らした。
「あら当たったわ!あなたにも一本あげるわね」とその女性は言った。
有美はスポーツ飲料を一本貰うと家に向かって歩き始めた。
何かの話しに似てるな・・・。わらしべ長者だ。
最後には大金持ちになるんだったな。わらしべ一本から。
私の場合、最初の鉛筆がスポーツ飲料になった。でもあんまり期待出来そうにないな・・・と思う。帰るまでに長者になるなんて到底無理だわ。
そう思いクスッと笑ったときに前をたくさんの荷物を持って歩いていた男性が急にしゃがみこんだ。
「大丈夫ですか?!」と声をかける。
「急に歩いているとクラクラして・・・」とその男性は言った。
午前中は雨が降っていた。そのあとやんで一気にいいお天気になった。
すごく蒸し暑く、アスファルトから湯気がでているようだ。
「これ、よかったら飲んでください」
有美はさっき貰ったスポーツ飲料を差し出した。
男性はごくごく飲んだ。すると顔色もよくなってきた。
「ありがとうございます。得意先からの帰り道ずっと水も飲まないで歩いていたものですから・・・。そうだ、これお礼としたら変なんですが、不良品として返って来た服なんです。染ムラがちょっとあるだけで裁縫はちゃんとしてますので良かったらどうぞ」
男性が差し出したのは新品のT シャツだった。でも男性用だった。
男性と別れまた有美は歩き始める。家が見えてきた。
今度はTシャツになったか・・・でも男性用だから家ででも着ようかな・・・それともお父さんか弟にでもあげようか・・・。
その時、目の前を大きな車が通った。
バシャン!大きな水がはねる音がした。少し前の水溜りにタイヤが入り大きな水しぶきがあがった。
「冷たい!」
同時に前で大きな声がした。
見ると背の高い若い男性が水浸しになっている。
はあ・・・こういう事か・・・次は何に化けるんだろう。有美はそう思うと持っていたTシャツを差し出した。
「良かったらこれ」と。
男性は
「ありがとうございます。助かります。これから他所のお宅にお邪魔するところだったので。新しく買って返しますので良ければご連絡先をお聞かせいただけませんか?」
と言った。
なあんだ、今度は何にもならないのかと思って顔をあげるとびっくりするぐらい有美の理想の男性の顔がそこにあった。
「良かったらうち近くなのでそこで着換えをされたらいかがでしょうか?弟のズボンなんかもありますので」
有美の口からこんな言葉が出た。
有美が最後に得た物は・・・『恋』だった。
わらしべ長者にはなれなかったが・・・いやもしかすると。
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