有名な「トンネルを抜けたら雪国だった」という本の
書き出しだけはよく聞くが、その先はどうなっているのかと思い、読んでみた。
ノーベル文学賞を取った人の本だし、
さぞかし美しい文章で感動するだろうと思ったら、特に何ともなかった。
何でだろう。こちらの感性が鈍いのか。
そういえば、今まで文体の美しさで感動した本はあっただろうか。
昔リングの映画かドラマか忘れたが、
問題のビデオを見ていて、数秒おきに暗くなるのはまばたきだからだ
(すなわち念写だ!撮影機材を使わずに!?
ってことはこの世のものではない!なんと!)、
という発見があったところで「おおぉ~!!」となったが、
そういうのはたぶん違うのだろう。
推理じみた整合性は、クイズの答え合わせが当たっていたにすぎない。
「Walking People 」は感動したし、「百年の家」も良かったね、と思ったけど、
結末や思考回路が望みに合っていたというだけで、
文体そのものに感動したわけではなかった。
むしろ、小さい時に読んで、自分の中で大興奮の
「バーバパパ」と「マフィンおばさんのパンや」の方が、
なぜかわからないけど、無性に好きという点では近い気がする。
どちらも家の断面図と、柔らかいモチのようなものが出てくる。
結末も知っているのに何回も読んでしまう。
ロマンを感じる、ということだろうか。
好きな歌のようなものか。
文学、向いてないんじゃないのか?
などと早々に切り捨てて殺人トリックの世界に戻っていく前に、
また小さい頃の気持ちを思い出してみる。
少なくとも、自分にはバーバパパと赤い本棚があった。
