「北の山・じろう」日記

内容は主に時事問題。時々株式投資関係の記事も交じります。

(ロシア)ワグネル問題の特殊性と今後<2023年6月

2023-06-27 18:27:55 | ロシアと周辺国

武装蜂起事件をきっかけにワグネルの性質を考えてみると、理解に苦しむ部分があります。

ウクライナ領に宿営していたワグネルの部隊が、国境を越えてロシア領に移動しました。ロストフ州のロシアの軍関係施設を占拠しました。同時にモスクワに向かって行進を始めました。モスクワの200km手前まで行進しました。

中止しました。訳の分からない妥協の末にワグネルのボスのプリゴジン氏は、ベラルーシに移動しワグネルは、元の宿営地に戻りました。

ロシア国内には、ワグネルに抵抗する地元の治安組織や軍勢力は、いませんでした。単にワグネルの行動を傍観していただけでした。

なぜ、そうしたのか?
ワグネルと戦えば、壊滅するからです。中央政府の命令を一応発動し、実際には何もしませんでした。

何故、そうなのかを考えてみると?
地方軍閥と言う言葉に行き当たります。ロシアの特殊な政治風土が、ワグネルと言う地方軍閥を生み出したのだと思います。プーチン氏が許可すれば、ロシアでは全部OK!です。ワグネルがウクライナ戦線で戦果を挙げている限り、ワグネルはOK!でした。プーチン氏が、OK!だからワグネルは戦闘員を増やし続けました。大分、バフムトの激戦で数が減りましたが、今でも数万人規模の大部隊です。

プーチン氏の人治政治が、ワグネルと言う地方軍閥を育ててしまったことになります。一つの部隊としては巨大になりすぎ、それをロシア軍の中に取り込もうとしました。

ここにロシアの形式的官僚主義の弊害があります。命令を出せば、それは実行されると思い込んでいます。普通は、逆らう人はいません。逆らえば、逮捕・投獄か暗殺です。

ところが地方軍閥は、そう簡単にはコントロールできません。軍閥のボスが反抗すれば、自分の軍隊を持っているのですから、それを制圧する軍隊がなければコントロール出来ません。

だから、今回のワグネル事件にしても一応、治まったように見えますが、全然解決していないことが分かります。

宿営地に戻ったワグネルの部隊を武装解除して、ばらばらにしなければ、解決したことにはなりません。

現状では、単に宿営地に戻っただけです。再度、ボスの命令が出れば、かなりの数の戦闘員が命令に従うと思います。つまり、地方軍閥類似の組織を作った方が強いという事実です。

プリゴジン氏がワグネルの部隊の中にいれば、ロシアの警察は逮捕する事すら出来ません。逮捕しようと思えば、ワグネルの戦闘員より多いロシア軍に護衛してもらわなければ、出来ません。

しかもワグネルが宿営している場所は、ドンパチの真っ最中のウクライナ領の前線のすぐ後ろです。軍隊を動員して逮捕するなど無理でしょう。

ロシア政府には非常に困ると思いますが、ウクライナ領の宿営地に帰ったワグネルの部隊をどうにかしようと思ってもワグネルの戦闘員が、自主的に協力してくれないと出来ません。

もし、もう1回ロシア軍がワグネルの部隊を攻撃すれば、今度は本当にワグネルとロシア軍の戦闘が始まるでしょう。それを避けるためにモスクワへの行進をして示威運動をしたわけです。

ロシア軍がワグネルの部隊を攻撃して脅しをかけたら、逆にワグネルから脅しをかけられたのが、実際のところのようです。くいっぱぐれたら、またロストフ州に行って食料の補給をするでしょうしね?

つまり、地方軍閥とはこのようなものです。プーチン氏も、まさかこんなことになるとは思わなかったのでしょうね?

まあ?問題のプリゴジン氏がどこにいるか?

☆これを放置しておくとどうなるか?
ベルゴロド州を越境攻撃しているパルチザンが勢い付くでしょう。その他、反プーチン勢力が活動を活発化させると思います。

プリゴジン氏が死なずにワグネルが部隊を維持すれば、武装蜂起の実績を作りましたから、ロシア国内外から支援があると思います。事実アメリカ政府はワグネルへの経済制裁の発動を停止しました。プリゴジン氏の資金を断つのを避けました。敵の敵は味方の論理です。

☆更に不都合な真実があります。
それは、ロシア兵がほとんどゴロツキ集団だと言うことです。ウクライナ領でも散々犯罪行為をしましたが、ロシア国内でも同じなんですね?

つまり、プーチン氏は散々ロシア軍を美化し祖国防衛戦争を煽りまくっています。しかし、そのロシア兵はロシア国内にいてもごろつき集団であるとしたら?

ロシア兵、自国国境地帯の民家を略奪か 住民が訴え
2023.06.16 Fri posted at 16:30 JST
https://www.cnn.co.jp/world/35205347.html

この記事に関しては、興味深い事があります。
CNNは、リンクを切らず記事を掲載しています。
ところがこのニュースを転載したヤフーニュースはリンクを切って記事を隠しました。その理由は?

☆ワグネルの今後
ワグネル創設者、政権転覆の意図否定 反乱は「抗議」のため
2023年6月27日 3:28 発信地:モスクワ/ロシア [ ロシア ウクライナ ベラルーシ ロシア・CIS ]
https://www.afpbb.com/articles/-/3469880?cx_part=top_topstory&cx_position=1

その後、プリゴジン氏は初めてコメントを出しました。
「モスクワ進軍中止を仲介したベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領が、ワグネルの活動続行を可能にする方法を提供したと説明した。」

ワグネルには、人脈的に二つあります。
ウクライナ戦争前から、プリゴジン氏の配下だったグループと戦争後の募集によりワグネルに参加したグループです。

当然、元からプリゴジン氏の配下だったグループはプリゴジン氏への忠誠心の強いプロの兵士です。ワグネルのコアな部分です。

おそらくプリゴジン氏とワグネルのコアな部分は、ベラルーシに移動するのであろうと思います。それが妥協の大きな理由だったのであろうと思います。つまりプリゴジン氏は勢力を持ち続けると言う事になります。当然、ベラルーシ政府からワグネルへの支援があると言う事でしょうね。雇い主がプーチン氏からルカシェンコ大統領に変更になると言うのが妥協内容のようです。

プリゴジン氏の考えを推測するなら?
ロシア軍の負け戦はすでに認識していると思います。ワグネルの部隊はバフムトの激戦を戦う事で大きな実績を作りました。バフムト市街制圧の勝利宣言を出して、バフムトから撤退しました。しかし、ウクライナ紛争に関わっていれば結局ワグネルの部隊は壊滅します。自分の部隊を温存するために、ウクライナ戦線から離脱したと言うことでしょうね。傭兵家業は、そのようなものです。利益があるから雇い主のために働くのであって、利益がなくなったり全滅の可能性があれば、当然契約を打ち切って撤退します。ロシア政府にしてもワグネルは、シリアやアフリカで活動しています。これをロシア政府が統括することは出来ません。当面、海外のワグネルの業務はプリゴジン氏が統括するしか方法がありません。本当の妥協の産物です。

ベラルーシの民主化勢力には不都合ですが、独裁者であるルカシェンコ大統領にとっては、用心棒が増えるのは安心なことです。

どこまで行っても小汚い話ではあります。

ワールド
2023年6月27日4:54 午前Updated 35分前
プーチン氏、流血回避でワグネル傭兵に謝意 ベラルーシ移住確約
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-putin-idJPKBN2YC1IJ

ワグネルの部隊が、もう一度武装蜂起すればプーチン政権は確実に崩壊すると思います。今回の妥協の内容を表明しました。ロシアが政治的に急に崩壊することは誰も望んでいないと思います。核兵器のリスクが現実化するからです。しかし、ワグネルと妥協したことでプーチン政権は弱体化すると思います。



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