昨日は、何年に1回もないような一日だったよなあ。イチローの4000本に藤圭子の飛び降り。
五木寛之が言ってるとおり、藤の恨み節はショッキングだった。あんなに荒んだ、出刃を逆手に握って迫ってくるような歌は他にあんまり聴いたことがなかった。アマーリア・ロドリゲスの「暗いはしけ」を初めて聴いたときも仰天したが、それは暗さに驚くというより、歌のうまさに驚いたのだった。
ンなわけで驚くには驚いたが、藤圭子を聴き続けたいとは思わなかったねえ。取り立てて、うまい歌手じゃなかったし。なんせ当時は、ちあきなおみに青江三奈、超絶うまい歌手の全盛期だ。藤は何度か聴くと、猛々しさがハナについた。なんかワザとらしい。
彼女のプロデューサーだかマネジャーだかが「放っとくと、どんどん明るくなってしまう」とこぼした、とかいう話をどこかで読んで、決定的に冷めてしまった。でもまあ、一世を風靡したことは事実だし、一時代を画した歌手であることは間違いないと思うよ。
彼女が活躍した1970年前後といえば、全共闘へのシンパシーが次第に冷めつつある時代だった。新左翼への幻想は極左だけじゃなく、一般市民も共有していたのだ。それが内ゲバの頻発その他で、次々裏切られていった。
その失望感(五木じゃないから、ルサンチマンなんて実感の湧かない言葉は使いません)を藤圭子が掬い取っていたのもまた、間違いないだろう。だから、あさま山荘事件というトドメ以後、彼女はほとんど聴かれなくなった。
それにしても、なんで飛び降りなんかを。
代わって、こちらは健全そのもの、イチローの4000本。世界で3人しか達成していないってんだから、すごい。元同僚の田口壮が、天文学的数字と言っていたけどね。
悔しいことに報道ステーションのコメンテーターに先に言われてしまったが、イチローの本当のすごさはしかし安打数よりも、石のように硬いボールを打ったり捕ったりするゲームで22年間、大した怪我をしなかったことだろう。きわめて厳格な体調管理を自らに課していることは、あの体脂肪率の低さからも想像できる。
でもイチローがここまで成績を残すことができたのは、意識の上で日の丸を背負ってないからじゃないかな。オリックス時代、彼は日本のスポーツ・ジャーナリズムを毛嫌いしていた。メジャーに移ってからも松井と違って無愛想を貫いた。で散々バッシングされ、スポーツ紙しか読まないアホがいまもケチな嫌味をネットに書き込んでいる。
低俗レポーターの視点は一つだけだ。“日本人”が外国にどれだけアピールしてるか、どれだけ受けてるか。そんなのに一々付き合っていたら、個を潰されてしまう。それをイチローは、はっきり知っている。国民栄誉賞の辞退も、多分それが理由だろう。
イチローといえば、目に焼きついてる光景がある。メジャー初年度のオフ、彼は地元シアトルの小学校を訪問した。歓声を上げる子供たちの中に入っていき、床に腰を下ろした。すると、一人の小学生が座席を跳び出してイチローの首っ玉にかじりついた。イチローは笑ってその子を抱きかかえた。先鞭をつけた勇敢な子はすぐ席に戻ったが、他の子供たちがわれもわれもとイチローにすがりついた。
あの子たちも、いまではいっぱしのビジネスマン、一家の主になっているかも知れない。彼らの胸の中には、いまもイチローに触れた思い出が生きていることだろう。民間外交のお手本。
あれ以上見事に日本のイメージアップをやった外交官て、いるかね。少なくとも、戦後の日本に。
あっ、こういう見方が一番いかんのか。
野球関連でもう一つ、個人的慶事を言わせてもらうと、7月中“逆転のロッテ”から“逆転負けのロッテ”へと化していたチームが、ここんとこ6カード連続勝ち越し。ついには18得点のサンドバグ打撃をやってのけた。今日からの楽天との3連戦で首位奪還も不可能じゃない。
昨日はホント、特別な一日でした。フクシマの汚染水300トン漏れ発覚に比べれば、ものの数にも入らないが。
五木寛之が言ってるとおり、藤の恨み節はショッキングだった。あんなに荒んだ、出刃を逆手に握って迫ってくるような歌は他にあんまり聴いたことがなかった。アマーリア・ロドリゲスの「暗いはしけ」を初めて聴いたときも仰天したが、それは暗さに驚くというより、歌のうまさに驚いたのだった。
ンなわけで驚くには驚いたが、藤圭子を聴き続けたいとは思わなかったねえ。取り立てて、うまい歌手じゃなかったし。なんせ当時は、ちあきなおみに青江三奈、超絶うまい歌手の全盛期だ。藤は何度か聴くと、猛々しさがハナについた。なんかワザとらしい。
彼女のプロデューサーだかマネジャーだかが「放っとくと、どんどん明るくなってしまう」とこぼした、とかいう話をどこかで読んで、決定的に冷めてしまった。でもまあ、一世を風靡したことは事実だし、一時代を画した歌手であることは間違いないと思うよ。
彼女が活躍した1970年前後といえば、全共闘へのシンパシーが次第に冷めつつある時代だった。新左翼への幻想は極左だけじゃなく、一般市民も共有していたのだ。それが内ゲバの頻発その他で、次々裏切られていった。
その失望感(五木じゃないから、ルサンチマンなんて実感の湧かない言葉は使いません)を藤圭子が掬い取っていたのもまた、間違いないだろう。だから、あさま山荘事件というトドメ以後、彼女はほとんど聴かれなくなった。
それにしても、なんで飛び降りなんかを。
代わって、こちらは健全そのもの、イチローの4000本。世界で3人しか達成していないってんだから、すごい。元同僚の田口壮が、天文学的数字と言っていたけどね。
悔しいことに報道ステーションのコメンテーターに先に言われてしまったが、イチローの本当のすごさはしかし安打数よりも、石のように硬いボールを打ったり捕ったりするゲームで22年間、大した怪我をしなかったことだろう。きわめて厳格な体調管理を自らに課していることは、あの体脂肪率の低さからも想像できる。
でもイチローがここまで成績を残すことができたのは、意識の上で日の丸を背負ってないからじゃないかな。オリックス時代、彼は日本のスポーツ・ジャーナリズムを毛嫌いしていた。メジャーに移ってからも松井と違って無愛想を貫いた。で散々バッシングされ、スポーツ紙しか読まないアホがいまもケチな嫌味をネットに書き込んでいる。
低俗レポーターの視点は一つだけだ。“日本人”が外国にどれだけアピールしてるか、どれだけ受けてるか。そんなのに一々付き合っていたら、個を潰されてしまう。それをイチローは、はっきり知っている。国民栄誉賞の辞退も、多分それが理由だろう。
イチローといえば、目に焼きついてる光景がある。メジャー初年度のオフ、彼は地元シアトルの小学校を訪問した。歓声を上げる子供たちの中に入っていき、床に腰を下ろした。すると、一人の小学生が座席を跳び出してイチローの首っ玉にかじりついた。イチローは笑ってその子を抱きかかえた。先鞭をつけた勇敢な子はすぐ席に戻ったが、他の子供たちがわれもわれもとイチローにすがりついた。
あの子たちも、いまではいっぱしのビジネスマン、一家の主になっているかも知れない。彼らの胸の中には、いまもイチローに触れた思い出が生きていることだろう。民間外交のお手本。
あれ以上見事に日本のイメージアップをやった外交官て、いるかね。少なくとも、戦後の日本に。
あっ、こういう見方が一番いかんのか。
野球関連でもう一つ、個人的慶事を言わせてもらうと、7月中“逆転のロッテ”から“逆転負けのロッテ”へと化していたチームが、ここんとこ6カード連続勝ち越し。ついには18得点のサンドバグ打撃をやってのけた。今日からの楽天との3連戦で首位奪還も不可能じゃない。
昨日はホント、特別な一日でした。フクシマの汚染水300トン漏れ発覚に比べれば、ものの数にも入らないが。