蒲田耕二の発言

コメントは実名で願います。

ピエール・ブーレーズ没

2016-02-07 | 音楽
一昨日の朝日デジタルに載っていた藤倉大氏の追悼記事は面白かった。ナマの姿を知っている人の証言は具体性に富んで、観念的な評論家の文章よりやっぱり説得力が大きい。

でも中で、ちょっと気になったのが次の一節。引っかかるってほどじゃないが、ちょっと違うんじゃないかなあ。

「ブーレーズのインタビューを読むと、インタビューをする人が、質問の最後まで言えているものが少ないことに気づく。それは、信じられないほど頭の 回転が速く……質問や文章の冒頭の時点で即座に答えてしまうから」

あのうフランス人て、特にパリの住民て、みんなそんな風なんだよね。ブーレーズみたいな有名人に限らず、タクシーの運ちゃんもホテルのコンシエルジュもレストランのおばはんも。それは、頭の回転が速いからというより、彼らの自己主張癖が強いからだとワタシは思うんですけど。

彼らは早い者勝ち主義だから、とにかく一方的にしゃべりまくる。いきおい相手の方も、黙って聞いていると言いなりになってしまうから、失地回復のために大急ぎで、より大声で、より早口で自分の考えをしゃべりまくる。

そういう習慣を子供の時から続けているから、相手の言い分を聞かないことが当たり前になっていて、礼儀に反するとも思わない。

サルトルは親切だ。私のフランス語があまり上手ではないのに配慮して、質問を最後まで言わせず答えてくれる……みたいなことを昔、掘田善衛がどこかに書いていたが、これも親切とは違うんじゃないかと思うよ。

フィリップ・トゥルシエが日本代表の監督をやっていたころ、遠慮ない多弁でサッカー協会の役員を閉口させた故事が思い出されますなあ。

ところで、ブーレーズは60年代の末だったか、「オペラは死んだ」と宣言して物議をかもした人である。しかし藤倉さんの記事によれば、その後もオペラの指揮をしていたらしい。言うこととすることが違うのもフランス人ではしょっちゅうだ。

あと、彼がIRCAMの教壇に立つときは、まず教室内に美少年がいないかジロジロ見渡してから授業を始めると現地在住の知人が言っていたが、ホントかね。
コメント
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